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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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33/58

告発

「アディス!

貴様、何を考えておるのだ!!」

 

上皇の怒号が飛んだ。


広間にいる家臣は恐れおののいた。

 

民への結婚宣言から一週間。


幸せムードを感じる間もなく、

日々は慌ただしく過ぎている。

 

私もアディスの公務に同席することになり、

覚える事が毎日山の様にある。


公務以外にも、

王族としての知識がまだまだ不足している私は

勉強の時間が増えた。

 

ハビエルからも今後の為に

できる限り今のうちに学んでおいたほうがいいと言われ

「世界一忙しい花嫁だ」と笑われた。


しかし、

公務だけは全く慣れない。

 

特に上皇とレニがいる場では、

二人があからさまに私を無視したり

嫌味を言ってくるのがストレスだ。


嫌われ者であることは承知の上だし、

受け流してはいるが。

 

問題は、アディスがとんでもなく不機嫌になること。

 

私に対して上皇たちが無礼な態度を取るたびに、

アディスは容赦なく彼らに嚙みついた。


ギスギスした空気の中、行われる公務は

家臣たちも気の毒でしかない。

 

常に緊張感に晒されている家臣たちは、

不機嫌な国王に八つ当たりされ

突然斬られるのではないかとおびえている。


公務が終わっても

イライラしているアディスの

ご機嫌取りはかなりめんどくさい。


(ほんと勘弁してよね……)

 

今日もため息を押し殺し、

聞いてるふりをしてやりすごすつもりだったのだけど。


ハビエルが今日はこちらから吹っ掛けると言っていた。


(何やるつもりなんだろう……)


「父上。大きな声を出さずとも聞こえております」

 

アディスが静かに、冷たく答えた。


「お前、気でも狂ったか!?

ティファン国の王女を処刑するなど

何たる愚行!

ティファン国王は大変憤っておられるぞ!

この始末、どうつけるつもりだ!?」


「いかようにでもなりましょう。

私は、毒殺を謀った罪人を

シュメシュの法に則り処刑したまで。

王としての役目を全うしただけでございます。

ただその暗殺者が、

父上が目をかけておられるティファン国の王女だった……

ただそれだけのことです」


「ふざけるな!!

たかだか、お前のおもちゃを殺そうとしただけで……

許嫁を斬るなど……

そして勝手に民衆へ結婚宣言など…許せん」


「なにかおっしゃいましたか?

民への結婚宣言は、王である私の一存で決定すべきことです。

まさに良い機会でしたのでね。

善は急げと言うではないですか。

お言葉ですが、

父上に判断を仰ぐことではなかったと存じています」

 

「お前……いい加減に!」

 

「…そういえば父上。

おもしろいものが見つかっているんですよ。

ファトウマがマリナに盛っていた毒薬ですが、

ファトウマが身につけていた装飾…

小瓶の形になっている首飾りでした。

その中に上手く隠されていたんです」


「それがどうした?」


上皇の怒りは収まらない。

 

隣でレニがなだめるように上皇の腕をさすり続けている。

 

「その小瓶に、

レニ殿のご実家の紋章が刻まれていたそうです」


「な、なんですって!?」

 

「アディス!

ば……馬鹿げた事を!何が言いたい!?」

 

「言葉どおりです。

レニ殿のご実家の紋章がある装飾品から、

毒が出てきた」


「わたくしが、

そこにいる娘を殺そうとしたと言いたいの!?

ア……アルフォス様!

これは、わたくしに対する冒涜ですわ!」

 

「……アディス。

自身の発言の重大さを分かっているのだろうな」

 

さきほどまで怒りで真っ赤になっていた上皇だが、

一気に顔面蒼白になっている。


「父上。レニ殿。

真実をお話しいただきたい。

…………あなた方はファトウマ嬢を利用し、

マリナ暗殺を企てた。

間違いないな!?」


「ふざけるな!!」


レニは微動だにせず、うつむいたままだ。

 

アディスは上皇にかまわず、まくし立てる。

 

「シュメシュ王国第27代国王として

今ここに上皇アルフォスならびに皇后レニを

メリト・ネスウト暗殺の首謀者として告発する!!!」


震えながら事の成り行きを見守っていた

家臣たちがざわめく。


「ど…………どうせお前がでっち上げた証拠に違いない。

何がレニの実家の紋章だ!?」

 

「お二人はメーレより追放処分とさせていただく。

これよりシュメシュ最北の地セトメにて幽閉処分とする。

国王としての命令です。

従っていただきます」


アディスの合図とともに

統率が取れた憲兵がわらわらと出てきた。

 

怒鳴り続ける上皇を無視して

憲兵が上皇とレニを引きずり、広間から連れ出した。


レニは最後まで涙も見せず

威厳高く凛とした表情で広間を出ていった。


上皇の怒号は彼らが王宮を後にするまで

響いていた。

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