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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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32/58

王の宣言

ほどなく、

ファトウマの罪状と

刑が執行された旨が明るみとなった。


他国の姫という彼女の素性から

刑は晒されず、内々に行われた。


これがシュメシュからの

最大の恩情というところだろう。


宮殿の中では

尾ひれがついた噂がまかり通り、

メーレの都では一大スキャンダルだと

民衆は煽った。

 

ある意味で好機だと判断したハビエルは、

アディスに今こそ婚姻を公表するべきだと進言した。


結果的にその判断は正しかったというべきだろう。


その日は突然やってきた。

 

夜明け前から

ライリカが私を起こしに来て、

ナダとお付きの侍女たち全員が

私をこれまでにない位着飾った。


私はターコイズブルーのドレスに身を包み

同じ色のケープを頭に巻いた。

 

アクセサリーは全て黄金の特注品。


いつの間にこんなものを用意していたんだろう。


「今日は素敵な一日になりますよ」と潤んだ瞳で

ライリカは私に言った。

 

陽が昇ると、アディスが迎えに来た。


アディスも私と同じ

ターコイズブルーの衣装に身を包んでいる。


私を見て、少し驚いた顔をしたアディスは

「マリナ。なんて美しい……」と言って

私の手にキスをした。

 

侍女たちはアディスを唸らせたことに満足げだ。

  

ライリカは泣いている。


「アディス、今日は一体なにがあるの?」


「俺とそなたの婚約を、

正式に我が民に伝える」

 

「え?」


動揺する私に

ハビエルが説明する。


「マリナ様、先の事件で民衆は混乱しております。

今ここで、アディス様の伴侶が

メリト・ネスウトであるマリナ様だということを、

公に発表し民の心を安心させたいという狙いがあるのです。

マリナ様はご存知ないかもしれませんが、

民衆はマリナ様をお慕いしております。

一刻も早く、アディス様と結ばれてくれないか、

マリナ様のお顔を早く拝見したい、

私達のメリト・ネスウトを早く国母に、という声は

日に日に高まっているのですよ」


「そんな……私なにもしてないよ。

ただの無知な小娘だよ」


「いいえ。

あなたは素晴らしい行いをされています」


「ああ。命を張って、俺を助けた」


「シュメシュの民は、一度受けた恩を決して忘れない。

我らの王を命を懸けて守ってくださったメリト・ネスウトを、

お慕いしないはずがないのです。

さぁ。参りましょう」


従者たちに誘われ、私はアディスとともに

王宮の正門へ向かった。


そこには、驚くべき光景が広がっていた。

何千人集まったのだろうかと思うほどの人だかり。

 

通常、民に解放されていない王宮だが

今日は違う。

 

王の演説があるという事で、

一般民衆にも王宮の門は開かれている。


皆笑顔で、私達へ手を振る。

 

状況に圧倒され、固まっている私に

アディスがささやく。


「手を振り返してやれ。皆喜ぶぞ」


言われるがまま、ぎこちない笑顔で

手を振った。


その瞬間、歓声が飛んだ。


「我らのマリナ様!!」


「マリナ様万歳!」

 

民衆が口々に叫ぶ。


いつの間に私はこの国の人たちに

こんなにも愛され、

受け入れられるようになったのだろう。


私は何もできない、

ただ記憶をなくした女なのに。 


なぜかわからないけど、涙が出そうだ。

 

「皆の者!よく聞け!」


アディスが高らかに声を上げると

喧騒は一瞬で静まり返った。


皆が王の言葉に耳を傾ける。


「我は、メリト・ネスウトであるマリナを

王妃とすることをここに宣言する!

どのような声があろうとも、我が意思は揺るがぬ。

この婚姻は、国の繁栄と平和の象徴となるだろう。

シュメシュは永遠に栄え続けようぞ」


ワー――――――!!!!!!

 

民衆が一層どよめいた。

 

割れんばかりの拍手と歓声。

 

「アディス様!!」


「シュメシュよ永遠に!」


「アディス様!マリナ様!お幸せに!」


「お世継ぎのご予定は!?」


アディスは民の反応を満足そうに眺めてから

横にいる私をにやりと見た。


悪い事を考えている顔だ。

 

その瞬間、

アディスは私をお姫様抱っこで抱え上げた。

  

「うわ!アディス!?」


「我らの婚姻の儀は、一月後に執り行う!」

 

 ワー――――――――――――!!!!


 ますます、民衆が盛り上がった。


「やめてってば!アディス!恥ずかしい!

みんな見てるから!!!」


照れまくる私を意に介さず、

お姫様抱っこしたままアディスはその場を後にする。

 

従者たちを待たずに私たちは宮殿内へ戻った。


二人きりになるとアディスは言った。


「マリナ。これから共に歩んでくれ」


「う、うん」


「愛しているぞ。我が妃よ」

 

民衆の歓声は

日が暮れるまで止むことはなかった。

新年度で本業多忙のため、1日2話投稿をしばらく行ってまいります。

投稿時間 毎日11:20、21:50の2回です。

引き続き本作品をよろしくお願いいたします

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