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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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陰謀の影

「アディス様!ハビエル様!

ナダにございます!」


「何事だ?

居室にナダが来るなどめずらしいな」

 

俺がそう言うのも待たず、

ハビエルはただ事ではないことを悟り彼女を部屋に入れた。


「マリナ様が!

……意識をなくされていて!すごい熱なんです!

お医者様を呼んでいただけますか!?」

 

半分泣いていた。

 

ナダの言葉を遮るように俺は命じていた。


「医師をマリナの部屋へ」

 

――


「お医者様、呼んできたよ!」


ナダと医師、ハビエルとともに

俺はマリナの元へ急いだ。

 

ベッドに横たわるマリナを見て、医師は動揺する。

 

「これは……いかん。ひどい熱だ……」


「マリナ様も、まさか例の……」


「なんだ?」


「……流行り病です。

近頃、原因不明の熱病が多くて」


「うそでしょ。

今、メーレで流行ってる高熱病のこと!?」


ナダが悲鳴に近い声を上げた。


「ナダ。静かになさい!」


「静かになんてできますか!?

民は皆おびえています!

信じられないくらいの熱が出て、特効薬もないって!!!

原因も分からないって!

お願いです!!!お医者様!

マリナ様を助けて!!!!!」


「分かっておる。

病人のそばで大きな声を出してはならん。

それに特効薬がないなどと、民のうわさ話にすぎん。

薬も治療法もちゃんとある。

とはいえ…熱が高すぎるな。

危険な状態であることは違わん」


医師は至って冷静だ。


マリナのことは任せてくれと、医師は俺に

告げた。


俺はなす術もなく、ただ頷く事しかできなかった。


――


「まぁ!マリナ様がご病気に!?」

 

マリナの容態は気になるが、

ティファンのお姫様をほったらかす訳にもいかない。

 

俺は昼夜マリナのそばにいたい想いを押し殺し、

王としての職務を務めていた。

 

歯がゆい。


「あぁ…。

熱がかれこれ三日も下がらない」


「なんてこと。

わたくしちっとも知らず、申し訳ございませんでした。

アディス様、わたくしマリナ様をお見舞いしとうございます。

よろしいかしら?」


「ファトウマ嬢、お心遣い感謝するが。

そなたに病気がうつっては大変だ」


「お忘れですか?

ティファンは医術に長けた国。

わたくしも少し医術をかじっております」

 

そうだ。

ティファンは医学の発展を国策として推し進めている。


「どう振舞うべきか心得ております。

それに……マリナ様のお辛い時に顔も見せぬなど、 

ファトウマはそのような恩知らずではございません」

 

まだ小娘だと思っていたが、

意見を主張してくる所は

やはり王家の血を引く女だということか。


「承知した。

それではマリナを見舞っていただけるかな?」


「ええ。参りましょう」

 

マリナのもとへ行くと、

ライリカとナダが相変わらず看病を続けている。

 

彼女たちもここ三日はほとんど休んでいない。

 

眠れていないのだろう。


二人の目の下には隈が広がっている。


「あ!アディス様、ファトウマ様!」


ライリカは俺たちの訪問に慌てだす。


「いいんだ。

ファトウマ嬢がマリナを見舞ってくれると……」

 

「まぁ……」


「マリナ様、眠っておられますね」


「熱は高いままですが。

先ほど医師がお薬をお飲みいただくようにと……」

 

「そう。お薬が効くといいわ」

 

そう言ってファトウマは、

花瓶はないかとあたりを見回す。

 

どこから調達してきたのか、

赤とオレンジを基調にした花束を活け始めた。

 

まるでマリナの美しい赤毛のようだ。


「マリナ様の御髪と同じですわ。

太陽の様に鮮やか」

 

ファトウマがそっとつぶやいた。


その日からファトウマは

マリナの見舞いに通っていると聞いたが、

少し顔を見てすぐに帰っていると

ライリカからの報告もあった。

 

俺もできることなら、

四六時中マリナのそばにいたい。

 

しかし、公務を投げ出すことはできない。

 

合間を見ては、

マリナの様子を確認し

仕事に戻ることを繰り返した。


「おい。ハビエル。

おかしいと思わないか?」


「ええ。これほど熱が下がらない事があるでしょうか。

それにマリナ様の様子は日に日に悪化しています」

 

ハビエルの言うとおりだ。

 

マリナに高熱の症状に加え、

身体中に発疹が現れ始めたという報告を見て

俺は苛立ちを抑えられなくなってきた。

 

「医師が焦っているのも伝わります。

本当に原因が分からぬ病なのではないかと」


バン!!!!!


「アディス様。落ち着いてください。

治らないと決まったわけではございません」

 

拳で机を殴った俺を、意に介さず

ハビエルは話を続ける。


「……マリナ様、お許しください。

状況が変わってしまいました」


「なんの話だ?」


ハビエルは深呼吸をしてから、告げた。


「私の勘が当たっていれば、マリナ様はお命を狙われています」

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