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砂漠の紅華  作者: 馬来田れえな


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13/58

そして王宮へ

反省部屋からシャバに出る事を許された私は、

三日ぶりに外の新鮮な空気を思い切り吸い込んだ。


まず一番にライリカへ改めて謝罪に行ったが、

ライリカは「もう済んだことだ。怒鳴って悪かった」と

いつもの聖母のようなまなざしで私を抱きしめた。

 

三日も仕事をさぼったのだ。


みんなにも迷惑をかけてしまった。

 

ナダに言われたことも響いていた。


「私には仕えるものとしての意識が低い」


アディスが最低な王様であっても、

私は侍女だ。


働く以上、義務は全うしたい。


気合いを入れなければ。

 

そういえばなにか様子がおかしい。


嫌な空気ではないが

通り過ぎる侍女たち皆、興味深そうに好奇に満ちた目で私を見つめてくる。

 

なんなんだろう。


「マリナ!おかえり!」

 

ナダがニコニコして駆け寄ってきた。


「ナダ。差し入れ毎日ありがとね」


「ただの貸し。

私が閉じ込められたときはパンよろしく」

 

反省部屋に行くこと前提なのか。


「みんなの様子が変だけどなにかあった?」 


「だから言った。

マリナが生きてるって噂になってる」


「まあ確かに

アディス”様”に虐殺されずに済んだけど」


「みんなアディス様が大好き。

お近づきになりたいって

身分不相応なことを考えている者もいる。

だからマリナがうらやましい」


「は?アディスに首絞められたいの?」


「アディス”様”だよ」

 

あきれてため息が出た。


――

その日は風が強く、

離れの中庭まで砂漠の砂が舞い上がった。

 

警備が大声でみんなに呼びかける。


「アディス様のお越しだ!」 

 

みんな手をとめ、王を迎え入れる準備を一斉に始めた。

 

私は一気に最悪の気分になったが仕方ない。

 

アディスと顔を合わせるのは首絞め事件以来だ。 

 

またひどい目に遭うんだろうか。

 

もう反省部屋はこりごりだ。

 

今回は逆らわないように自制しなければいけないと

気を引き締めて

地面に頭をこすりつけ、王を迎える姿勢をとった。


「皆のもの、調子はどうだ」


アディスの声が響き渡る。


ライリカが決まり文句であいさつを返す。

 

アディスはライリカに愛想よく話した。

「今日はちょっと用事があって来た次第だ。

…おい。マリナ。こっちへ来い」


は?

今なんと?

 

微動だにしない私にアディスは続ける。


「なんだ。震えているのか?マリナ、こっちへ来るんだ」


震えるわけないだろ。


私はあんたなんて怖くないんだから。

 

でもだめ。体がうまく動かせない。


「マリナ。侍女長として命令です。

アディス様のもとへ」


ライリカまで煽ってくる。

 

行かなきゃいけない。


私は目線を下げたまま立ち上がり

馬にまたがるアディスのもとへ歩み寄った。

 

その瞬間アディスは私を担ぎ上げた。


「うわ!!!」

 

同時にハビエルが朗々と語る。


「皆のもの。面を挙げよ。

 これより王付きの侍女マリナは

正式にアディス様のもとでメリト・ネスウトとして仕える事となった」


アディスに抱えられた状態のまま

「助けて」とみんなの方へ顔を向けた。

 

だめ。


声が出せない。

 

みんな泣いていたのだ。

 

ライリカは「アディス様おめでとうございます」

と繰り返し泣いている。

 

侍女たちもそれに倣う。


ハビエルはライリカに

「マリナの指導ご苦労であった」と感謝を述べた。


ライリカは

「もったいなきお言葉にございます」とまた泣いた。


共に日々を過ごした侍女たちも

涙を流している。


そこに悲しみはなかった。

 

友の旅立ち、希望に向けた感動の涙だった。

 

「助けてくれ」なんて言えない。

 

ナダは「ほらね」と口パクで私に言った。

 

 

アディスは口角をすこし上げて笑ったように見えた。

 

何も言わず私を抱えたまま馬を走らせ離れを後にした。

 

まるで誘拐の様にアディスに連れていかれたから、

みんなにお別れも言えなかった。

 

こうして私は大嫌いなアディスが暮らす、

王宮内で仕える事となったのだ。

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