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SS、短編集

幸運な雨

作者: 藍葉詩依

 小雨の日に傘をささなくなったのは、中学生の時。


 傘をささないことを変だという友達はもちろん居たけど、僕にとって小雨の日は涙を流しても許される日だ。

 

 別に、泣きたくて泣こうとしてるわけじゃないのに、小さな頃から泣きやすかった僕は、泣けばなんでも上手くいくと思っているんだろと親に言われ続けた。

 泣いてばかりいるのは弱いやつだとも言われて、僕はいつからか泣くことが怖くなっていた。

 泣いたら、怒られる。怒られたくない。

 そう思いながら必死で唇をかみしめて我慢する日々。だけど、そんな日は長くは続かなかった。


 バケツに入った雨がいっぱいになれば溢れてしまうように、我慢し続けた感情や悲しさは次第に溢れ出して、中学生の時、初めて外で泣いた。

 その時に頭をよぎったのはやっぱり怒られる。という思いだったけど怒る人は誰もいなくて。


 代わりに濡れてますよという優しい言葉をかけられた。

 その日からだ。たとえ雨が降ると知っても傘を持たなくなったのは。

 雨が僕の涙を、悲しみを隠してくれるのだと気づいたから。


 それから僕は雨の日だけ許された気分になった。 ずっと雨が降ればいいのにとも願った。


 そんな日々を変えてくれたのは黄色の傘だった。

 傘を僕に傾けて、僕が泣いていることに気づいてくれた彼女は、雨が降っていなくても泣いていいことを教えてくれた。


 泣くことは悪いことではないと、嬉しい時にも泣いていいのだと教えてくれた。

 だから僕は、今日も我慢をせずに泣く。

 

 あの傘と同じ黄色のカラードレスに身をまとった君と、幸福な涙を。

私の地域が雨だったので、2023年に書いた雨のお話を。お読みいただきありがとうございました❀.*・゜


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― 新着の感想 ―
感想失礼します! 作品読みました!! ほんのすぐに読める短いお話でありながら、語りになっている主人公の心情や感情の移り変わりがとても丁寧に描かれていると思いました。 人前で泣くのって・・・その、言葉…
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