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5話 初戦闘

今回は短いです

星宮叶side


(負けない――絶対に)


剣を構えたその瞬間から、星宮叶の胸に宿っていたのは、確かな「覚悟」だった。


相手は海野流星。

冷静で、無駄がなくて、普段は飄々としていて……でも、戦えば誰よりも強い。


自分が勝てるような相手ではないとすぐに理解てしまった。あまりにも実力に差があり、そこには壁があった。


それでも、叶は退かなかった。

退く理由なんて、どこにもなかった。


(私は……本気でやる。全力で、ぶつかる!)


剣先に魔力を纏わせ、地を蹴る。

疾風のように駆ける身体が、彼に迫る。視界に入ったのは、微動だにしない“壁”のような男。


叶の一撃一撃を簡単に避けられ、片腕だけで防がれてしまう。


(来て――!)


空を裂く一撃。全体重を乗せた水平斬り。


だが、軽く弾かれる。


「……っ!」


間髪入れず、連撃を仕掛ける。足捌きと剣の軌道を組み合わせた連続技。まるで舞うように、優雅に、鋭く。


だが彼は――動かない。


その場から一歩も動かず、全てを“受け流す”。


(見切られてる……? いや、それだけじゃない――)


流星の瞳が、一瞬だけこちらを見た。

無感情に、冷ややかに――「何も期待していない」目だった。


(……舐めないで……!)


叫びと共に、叶の魔力が炸裂する。

神聖属性のエネルギーが剣に集中し、輝きを放つ。


「《聖剣・光閃――っ!!》」


全力の奥義。学院でも数人しか扱えない技。


彼が初めて、剣を抜いた。


静かに、ゆっくりと。


(間に合って――っ!)


放たれた光の斬撃と、彼の踏み込みが交差する。


瞬間――視界が、揺れた。


身体が空中に投げ出され、地面が遠ざかる。


(え――?)


意識が追いつく前に、背中が地面を打つ。


呼吸が、止まる。音が、消える。


目の前に、佇む彼がいた。


その剣には、血も傷もなく。表情も変わらず。


まるで――最初から「勝敗」は決まっていたと告げるかのように。


(……そんな、こと……)


声は出なかった。身体も動かない。


けれど、確かに感じた。


その一撃の中にあったのは、“殺気”。


まるで処刑台の前に立ったかのような、絶望的な死の気配。


それに抗う間もなく、叶の意識は――


「……あ……」


崩れ落ちていった。

_____


気絶した星宮叶を残し、俺――海野流星は闘技場をゆっくりと後にする。


観客の歓声はまだ鳴り止まない。

彼らが見ていたのは、ただの勝敗ではない。

AクラスとSクラスの、決定的な「差」


(挑戦するなら、覚悟を持って来い。それが、Sランクに立ち向かうということだ)


静かに出口へと向かう足音が、闘技場に響く。

だが、その背後に、場違いな足音が追いついてくるのを感じた。


「流星!」


声の主は、同じSクラスの同級生――天野和音だった。

乱れた前髪の奥からこちらを見つめるその目は、どこか面白がるような、けれど真剣な光を帯びていた。


「また派手にやったな。……星宮叶、倒したのはお前が初じゃないか?」


あいつ、他の生徒に挑んでいたのか?


「……そうか、始めて知ったわ。」


「ああ、そうだ。」


「普通さ、あそこまで力の差を見せつけたら、少しくらい満足そうな顔するもんじゃないのか?やり切ったみたいな顔をしてもいいんだぜ?」


「別に。俺はただ、来た相手に応えただけだ」


そう言って俺は、観客席の一番奥に目をやる。

そこに、ほんの少しだけ気配を残していた奴がいた。


(見てたんだろ? 紅谷。……あんたらがいつまで隠れてる気かは知らないけどさ)


学園最強と呼ばれるSランク上位――1位・紅谷、2位・風間。

奴らは姿を見せず、何かを企んでいる。だが、こちらの力も、黙って見過ごすつもりはない。


いつか越えるべき壁として衝突するだろう。その時まで力を蓄える必要がある。


「おい和音、星宮は大丈夫か?」


少しやりすぎたがトラウマになったりしていないのだろうか?


「ああ、気絶しただけだ。殺気に晒されすぎたせい。戦闘不能判定で医務室行き。あいつ、お前との戦いでかなりの成長するかもな?」


「……そうだといいけどな」


妙に星宮のことを興味を持っているのは何故か知らないがまあ、いい。


本気を出せなかったわけじゃない。


だが、俺は彼女に“見せておくべき壁”を見せたつもりだった。

越えられないと思わせるのではなく、越えなきゃ意味がないと思わせるような、“高すぎる現実”。


(星宮叶。次に戦う時、お前がどれだけ登ってくるか、楽しみにしてるぜ)


和音が俺の肩をぽんと叩いた。


「次は誰が挑戦してくるのかなぁ。北坂?それとも、俺?」


「お前はやらないだろ。お前なりに、戦う理由がないと燃えないタイプだ」


「ばれた?」


軽く笑う和音。だがその目は、どこか冴えていた。


そして、その頃――


_____


医務室。静かな空間に、かすかな吐息が漏れる。


「う……ん……」


星宮叶が、ゆっくりと目を開ける。

眩しい光が視界に入り、頭の中がまだぼんやりしている。


「……私……負けたの?」


記憶が徐々に戻る。

あの剣の雨。技を無効化され、最後に目の前に現れた、あの無慈悲な一閃。


(そうだ……海野流星に……完敗……したんだ…)


でも、不思議と悔し涙は出なかった。

ただ、身体の芯が燃えていた。


(あれが、Sランクの本当の実力……)


叶は、そっと拳を握る。

涙ではなく、闘志で濡れた瞳で、天井を見上げた。


「また、挑む。絶対に――今度こそ、彼を超えてみせる」


静かに、強く誓うように。


それが、星宮叶の中で芽生えた、真の“挑戦者”の心だった。


そして物語は、次なる戦いへと続いていく。



_____


観客席にとある金髪の男が2人の戦闘を観戦していた。


「……なるほどね。アレが…」


ニヤリと笑い、海野を見る。


「流石…と言ったところかな。本気どころか力を全然出していない。Aランク2位以下では話にならないね」


星宮の強さを見て星宮叶以下のAランクの実力者でも全く話にならないだろうと考えるも男は2人の戦闘を見ても笑うのを辞めない。


「さ〜て、挑んでみようかな。どこまで成長をしているのか気になるし…」


海野を見て男は大きく目を開く。


「君の実力。僕に見せてもらうよ」


立ち上がって闘技場の観客席から去った。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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