3話ー1 Sランクの教室
Sランクという最高ランクが表示した。
俺は目標である生徒会長を目指すにはかなり近いランク。
1年以内に終わるのかは分からないが3年あればできるかもしれない。
最高ランクか…なるほどね、だから叔父さんは「大丈夫」だって言ったのか。
それにしても、これは面白そうな水晶だな。Sランク、か。
実力を決める水晶なんてなかなかお目にかかることはない。だから、珍しく、興味を抱く。
今後、触る機会はあるのか?いや、ないかもしれないな。
どう言う原理なのかについては能力か魔法で作られたって予想できるからなんとなく分かる。
話を戻して…いまいち実感がわかないけど、ランクの中では最上位ってことなんだろう。
でも、何を基準にしてSランクって決めてるんだ?
過去のSランクの人たちの強さが基準なのか?
……うーん、考えてもよく分からないな。
強さの基準は過去の能力者の強さの平均的な感じにデータから判断しているってところか。
作られた水晶にデータを保存する技術があるのかは分からないが多分できるかもな。
詳しい仕組みは分からないが俺が予想している内容と同じなんだろう。そんな自信が俺にはあった。
その後、俺は試験官からS組の教室を教えてもらった。
中に入ると、すでに何人かが来ていたが、どうやら俺はかなり早いみたいだ。
まあ、あいうえお順で早い方だから早く来るのは当たり前か。
「俺より前に来ている人はいるんだな」
まあ、この教室にいない他の生徒も、これから順番に来るんだろう。
俺は教室の後ろの席に静かに腰を下ろした。
「8時か……」
家に出る準備をしたのは7時を過ぎていたはずだ。
結構、家から近いんだなこの学園。
寮生活なんて選択せずに家から通えば良かったかも…
つぶやいて時計を見ていると
「また1人来たようだな」
とふいに声をかけられた。
知り合いでもなく、知らない人。俺と同じくこの学園の入学生なんだろう。
武道家か・・・・・・?いや、それよりも、ただ単純に身体を鍛えてるって感じではなさそうだな。
声の方へ顔を向けると、そこには俺よりも背が高く、がっしりした体格の男が立っていた。180は超えているだろう長身な背丈を持つ。
高校生にしては背が高いがこの男は誰だ?
「お前もこのクラスになったのか?」
突然の問いかけに少し戸惑ったが、ここにいるってことは当然同じクラスなんだろう。
いちいちツッコむのも面倒だったので、素直に答えた。
この教室にいるってことは同じSランクの実力者。体格が恵まれているのも強さの判定の一つとなれば納得できる。
「そうだ。最高ランクってすごいらしいが正直あまり実感はないがな。お前も俺と同じなんだろう?これからよろしく」
「ああ、よろしく」
強さの基準が曖昧すぎて、Sランクだと言われてもピンとこないのは俺と同じか。
俺が何かを上回っているという証なのか、それとも偶然か。考えれば考えるほど分からない。考えないほうがいいかもな。
「最高ランクSランクから始まったわけだがあと、数人来たらいいところだな」
「そんなに少ないのか?」
「ああ、Sランクは少ないんだよ。他のランクと比べたら人数は半分以下。SランクはAランク以下と比べて基準がかなり高いんだよ」
確か、Sランクは少数だって話はどこかで聞いた気がする。
それにしてもこの人、やけに詳しいな。
俺のように親族に学園関係者でもいるのだろうか?そんなわけがないか、Sランクの学生が必ずしも学園関係者の親を持つとは限らない。
ただ、一般的にはほとんど情報が公開されていない能力学園の内情報を知っているのはなんとも不思議だ。
というか、名前も知らない相手と話してたら、いつの間にか会話が弾んでいるじゃないか。
「名前は?俺は海野流星。よろしくな。」
名乗らずに話し続けるのも落ち着かない。
だから、先に自己紹介をしておいた。
「天野和音。よろしくな、流星。」
天野和音――。どこかで聞いたことのある名前だ。
そうだ、父が話していたっけ。
確か、両親の高校時代の先輩に“天野”って人がいたと。
1ヶ月ほど前だけど、俺の両親もこの能力学園の卒業生だったらしい、
初めて聞いたときは本当に驚いた。
その時に両親の先輩の名前を聞いた。
正直、母が昔の先輩の名前なんて覚えていたことにも驚いたがまさかその人の息子がいるとはな。
ついでに、叔父もこの学園出身だと聞いたとき、アルバムを見せてもらった。
その中に、やけに印象に残る顔があって――今、目の前にいる天野と似ていた。
父親が両親の先輩の天野って人なんだろうと予想して聞くとしよう。
思い切って聞いてみた。知りたいからな。突然聞いたら驚くだろう。驚く顔を拝見するとしようか。
「天野って、父親がこの学園の卒業生だったりする?」
一瞬、天野が驚いたような顔を見せた。そりゃそうか。
初対面の相手にいきなり親のことを聞かれたら驚くわな。
警戒して今の位置から少し離れた。
「……なんで俺の父のことを知ってるんだ?」
声が少し硬くなる。何かして来た時のために少し離れたのか分からないが俺をギロリと睨む。
変な誤解をされる前に、ちゃんと説明しておこう。
「俺の両親もこの学園の卒業生なんだ。アルバムを見せてもらったときに、お前に似てる人が写ってたからさ。」
それを聞いた天野は、少し安心したように表情を緩めた。俺の親が天野の親と同じ出身校であることを聞いたからか警戒心を解いた。
あっさりと信じたのは予想外だ。
俺の親のことを知っているのか?
そうじゃないと警戒心を解くとは思えない。父さんと母さんは学園で有名人だったりするのだろうか?
「確かに、父はこの学園の出身だ。海野……海野か。父の同級生にそんな名前はいなかったな。先輩か後輩か?」
「確か聞いたことがあるような…」
「1年下の後輩らしいよ。」
俺が教えると何か気づいた顔をして俺を見る。
「そうか……!海野、ああ! もしかしてあの有名な!」
「有名?」
やはり、有名人なのか俺の両親。
「後輩でトップの成績だった海野玲と、Sランクの甲智。父の話によると、彼らは2年生になってすぐ生徒会長になったり、大きな事件を解決したらしいがまさかその2人の息子か!」
……ああ、気づいたか。教えないほうが良かったのか?
ん?待て待て、大きな事件を解決した?何をしていたんだあの人たち…まさか本当に有名人だとは…ってか、生徒会に入っていた過去があるのかよ!?
「何をしたんだよあの人たち」
「日本で長年頭を悩ませた組織を滅ぼしたり、悪魔を倒したりとか聞いたぞ」
意味が分からん。何をしていたんだよ
悪魔を倒した?何をしたら悪魔と戦闘するんだよ。
意味が分からなすぎるわ。
両親の異常は学生時代から異常だったのがよく分かる内容だが、意味が分からん。なんで悪魔と遭遇するんだよ。
「あれ?甲って、学園長と同じ苗字じゃないか。甲智には弟がいるって言ってたような……」
あー、気づいたか。
悪魔のことをめっちゃ気になるが考えても無駄だし、天野が言っていることを教えるか。
「甲智って、確かに学園長と同じ苗字だよな?弟がいるって話だったけど・・・・・・」
「その学園長は、俺の母の弟。つまり、俺の叔父さん。」
「! そうなのか……君、すごいな。」
何故俺?俺まですごい人認定されているが両親達と比べば俺はすごくないわ。
やっていることがやべえ人達と比べるのも烏滸がましい。
悪魔を倒したとかとんでもないことをしている親と比べたら象とアリのレベルで差があるわ。
「いやいや、俺は何もすごくないぞ。すごいのは叔父さんたちで、俺はただの甥ってだけだから。」
親族だからと言う理由なだけで俺自身がすごいとかないからな。
「いや、関係あると思うけどな。」
「ねえよ。」
正直、変に期待されるのは困る。
俺は俺で叔父は叔父と全然違う。
すると、天野が少し笑って、話題を変えた。
「まあ、そんなことを言っても時間の無駄だ。さてと…海野はこの学園のルールって、どうなってるんか知っているか?」
どうやら、彼も学園の詳細は知らないらしい。
親が卒業生なら色々と教えてもらっていそうなものだけど、案外そうでもないのか。
まあ、かなり情報規制しているようだし、親から教えられることが制限されていたからよく分かっていないのも無理があるかもな。
「俺もそんなに聞いてないけど……“暇な能力者を集めた学園”って感じ?」
「いや、それは違うだろ。能力者しか入れないのに暇な能力者とか関係ないだろ。ただ、外部に公開する情報がかなり厳しい」
「日本だけではないかもしれないが闇が深い学園かもな。」
学園については、外部への情報がほとんどないらしい。
実力主義で、場合によっては命のやりとりもあるとか。
それを知ってたら、普通の親なら入学なんてさせないだろう。
闇が深いというのは間違いないな。
――つまり、情報統制されてるってことだ。
政府がどうしてそれを許してるのかは謎だけど、
……情報公開制度?そんなもの、この学園には存在しないらしい。
恐ろしい学園だ。改めてとんでもない学園に入学したな
政府が法律などの決まり事無視していいのか?理解できないな全く…
「学園が何を考えているのか分からないがこれから体験するからすぐに分かるんじゃねえか?」
「さあな。それは俺でも分からない…」
「だが、この学園は俺たちが想像しているような甘い学園ではないことは確かだな」
天野は俺を見て不気味な微笑みをした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
面白かったと感じていただけた方は、ぜひ評価(☆☆☆☆☆)やブックマークをしていただけると嬉しいです。
感想もお待ちしています!
皆さまの応援が励みになります。次回もお楽しみに!