1話ー1 海野流星
能力者が現れて数百年後──
これは、卒業を目前に控えた、とある中学生の物語。
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俺の名前は海野流星。
○○中学校に通う、中学3年生。
卒業まで、あと、1ヶ月。志望校には推薦で合格し、高校受験を乗り越えて今はのんびりとした毎日を過ごしている。
合格が決まったとき、家ではちょっとしたお祝い騒ぎになり、高級寿司店で寿司を堪能した。
すぐに日常に戻ったけど、あの時の嬉しさは今でも鮮明に覚えてる。
今ではいい思い出のひとつだ。
今は、受験勉強という地獄から解放されて、残りの少ない中学校生活を満喫中。
あの頃の俺からしたら、こんな自由な時間が来るなんて想像すらできなかっただろう。
受験勉強があまりのも地獄だったと思い出したくない記憶であるがゆえに少し誇らしくなる。
ただ、正直、高校受験をなめてた。
マジでしんどかった……と言えるくらいには大変でもう二度とやりたくないと鬱になってしまうほどに辛かった。
なのに「大学受験の方がキツい」なんて話を聞くたびに、今でも軽く鬱になる。
とにかく、今の目標は「中学校の思い出作り」。
学年末テストも受験前に終わったし、卒業式までのこの貴重な時間を、できるだけ楽しく過ごしたいと思ってる。
──これが、受験を終えた中学3年生の、平凡な日常ってやつだ。
今日も、特にやることはない。
「一人で帰るの、寂しくない?」「友達居ないの?」って?
いやいや、友達はちゃんといるからな!
今日はたまたま、それぞれ用事があるだけ。
俺がぼっちってわけじゃない。……断じて!
断じて一人ぼっちではない!
通学路には住宅や店が並んでいて、人通りも多い。
学生やサラリーマンが行き交う中、ときどき空を飛んでる人や、道端で火を出してる人なんかもいたりする。
……ん? あっ…あの人、普通に火出してるじゃん。
大丈夫か?と一瞬思ったけど、近くの誰かが注意してた。俺の出番じゃなかった。
出番が無くて良かったが火を出したら危ない。
気をつけてほしいものだ。
って、まあ、こんなのは日常茶飯事。
「日本でそんなことある?」って思う人もいるだろう。
けど、俺たちの世界ではよくあることだ。
うまく説明はできないけど……そういう世界なのさ。
──俺たちの世界には、“能力者”という存在がいる。
空を飛んだり、火を操ったり、身体能力を何倍にも強化したり。
常識じゃ考えられないような力を持った人たちのことを、俺たちは「能力者」と呼んでいる。
ちなみに、能力者じゃなくても、ある程度は"魔法"で似たようなことはできたりする。
能力者の誕生と同時に魔法が生まれたのかは自分でもよく分からないが古い文献では魔法は能力者の誕生以前から存在している。
能力と魔法は同時期に誕生したわけではないのだ。
『能力』と『魔法』の違いは権能の差があること。
能力と魔法では能力の方が強い。
能力は、魔法の上位互換のような存在だ。威力・スピード・権能の強さ──どれを取っても一線を画している。
ただし、魔法は応用力が高く、誰でもある程度は使える。
対して能力は“特化型”。一人ひとりが違う力を持っていて、その分だけ個性が際立つ。
そして──実は俺も、その能力者の一人だったりする。
能力の内容? それは今はナイショ。最初から全部バラすのも、つまらないだろ?
能力者が現れてから、社会は大きく変わった。
建設、スポーツ、警備、医療──あらゆる分野で能力者の力が使われている。
たとえば、普通なら半年以上かかるような建物も、能力者の手にかかれば数週間で完成する。
重機なんて使わずに、鉄骨を片手で運ぶなんて話も、別に珍しくない。
でも、どんなにすごい世界でも、「慣れ」は大事だ。
毎回驚いてたら、キリがないし、疲れるだけだ。
変化していく環境に適応してこそ生きていける。それが人間ってもんさ。
俺も最初は驚いてたけど、今じゃ「またか」って顔でスルーしてる。
──これが、俺たちの“日常”。
今日もそんな摩訶不思議のような世界で、俺はいつも通りに家へ歩いていく。
学校から徒歩で10分ほど。
近くてマジでありがたい。
学校が家の近くって、実はめちゃくちゃ恵まれてると思う。
恵まれていると感じるのは晴れの日以外の登校の道の環境が左右されて登校するだけでも大変と感じるのに差が生まれるってことだ。
恵まれていると感じるのは晴れの日以外の登校の道の環境が左右されて登校するだけでも大変と感じるのに差が生まれるってことだ。
さて、うちの学校の周りは住宅街になっていて、たくさんの一軒家が並んでいる。
その中に俺の家があるのだ。
──せっかくだし、俺の家族も紹介しておこうか。
俺の家は、父・母・姉・俺の4人家族。
姉は偏差値の高い大学を出て、今は都内の大企業で働いている。
父は警視庁に勤めていて、肩書きは「警部」らしい。
ただ、どこの部署でどんな仕事をしてるのかは教えてくれない。
「機密だから」って言って、いつもはぐらかされる。
「警部」らしいと曖昧なのは本当なのか分からないからだ。
母は専業主婦……というか、趣味で投資をしてる。
けっこう稼いでるっぽいけど、どれくらいなのかはやっぱり教えてくれない。
──うちの両親、どうにも隠し事が多い。
「子どもに話すことじゃない」って言われたら、まあ何も言えないけどさ。
でも、父の仕事とか母の収入とか、気になるのは普通だよな?
そんな、ちょっと不思議な家庭だけど──まあ、悪くはない。
ちょっと寂しい気もするけど、俺は今の家族が、けっこう好きだよ。……たぶん。
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