10話ー2 Sランク同士の勝負!? Sランク2位VS Sランク15位2
放課後──闘技場
「ーーって話で今からやるのですね」
放課後。俺、海野流星は星宮叶と荒野優夜を連れて、闘技場へ向かっていた。
「北坂の能力は厄介だが、今の荒野と星宮なら、普通に勝てるだろ」
俺がそう判断したのは、北坂乃亜の戦闘をある程度把握しているからだ。奴の戦闘は厄介な上に面倒なため、並の能力者ではどうにもならない。
だが、星宮が北坂と戦闘したら間違いなく勝てる。それほどに彼女は成長している。
「そうだね。僕は特に問題ないと思ってる。でも星宮は、初めて海野と戦った頃と比べると……別人レベルで成長してる。」
「正直、油断したら普通に負けるよ。ま、警戒するくらいしか脳がないけど」
荒野がさらりと煽るように言った。
星宮に対して悪意はない。あるとしたら、圧倒的な自信からくる“余裕”か。
……いや、むしろ俺の方が煽ってる気がしてならない。
「ナチュラルに煽ってくるわね……でも、頑張ったのよ。私なりに。とはいえSランクの全員に勝てるかって聞かれたら、自信はないよ。だって、トップ2の実力、全然見えてこないもの」
「規格外だからね〜今村とは一つ壁向かうな存在だと思うよ」
星宮が微笑む。でもその目は、過去の彼女にはなかった鋭さと覚悟を宿している。
「否定はしないよ。俺だって、あの二人の本気はまだ見たことがない」
彼女の変化を感じながら、俺は思う。
みんな、強くなってる。だがそれ以上に──
この試合で、何かが変わる気がしていた。
「ってことがあればいいね」
「ねえよ」
何、ナレーションみたいに語ったんだこいつ。
⸻
闘技場──観客席
『さて始まりました!! 本日の特別試合は、なんとSランク同士の戦い!! Sランク2位・風間鹿都 VS Sランク15位・北坂乃亜!! 皆さん、刮目せよ!!』
アナウンスが響き渡る。
だが、俺の目を引いたのは試合前から異様な光景だった。
「……多いな」
北坂が連れてきたのは、数十人の生徒たち。彼女がこれまで倒し、**“支配”**してきた者たちだ。
「部下を連れてでの戦闘は……アリなのか?小娘」
冷ややかに告げる風間の声には、感情の揺らぎが一切ない。
北坂は不敵に微笑む。その微笑みは恐怖を相手に与える恐ろしいオーラが籠っていた。
「あら?喧嘩売っているのかしら。アリよ、ルール的にはね。Sランクの人たちはやらないだけで、私、こう見えて規則は守るタイプなの」
見た目は背が低く、制服にムチを携えたロリ体型。だがその微笑みの奥には冷徹な戦略家の眼が光る。
──刺さる人には刺さりそうだが、聞きたくはない。
一方の風間。身長は高く、改造制服に身を包み、二本の短剣を構える姿は、静かな殺気すら漂わせている。学園内でも異彩を放つ存在だ。
風間雄一──Sランク2位。
冷静沈着で、感情を表に出さない。
だが、見下す者には一切容赦しない。
⸻
戦闘開始
『レディー……ゴーッ!!』
「行きなさい!!」
北坂の合図とともに、支配下の生徒たちが一斉に動き出す。
近距離、遠距離、能力攻撃の嵐が風間へと殺到する。
「集団戦か。……まあ、いい」
風間はそう呟き、二本の短剣を翻す。
刹那──
一人目の攻撃を避け、腹部へ正確な一撃。
次の瞬間には三人を同時に斬り伏せていた。
「は、速すぎる……!」
観客のざわめきが止まらない。だが風間は無言のまま、静かに、確実に敵を排除していく。
──わずか10秒で、数十人が倒れていた。
その冷静さと戦闘効率の高さ。まさに“無感情の処刑人”とでも言うべき存在。
「これでSランクのつもりか? 笑わせるなよ」
口調は静かだが、内心では──
(この程度では弱過ぎて遊びにすらならん。)
そう語っていた。
「ふふ……終わりだと思った?」
立ち上がる“倒されたはず”の生徒たち。
「回復か?……不死身?」
風間が眉をひそめる。
だが、違う。これは北坂の力と配下たちの力。
「違うわ。私の能力は『支配』。支配した相手を、私の思うように動かせる。回復もその一環よ。彼らの中に回復系がいるの。あとね──私、自分の力を人に渡せるの」
「……支配と力の共有、か」
風間の目が鋭くなる。
(バフ付きゾンビを、何度も何度も蘇らせる……無限リサイクル。長期戦は完全に不利。ならば──)
「支配の力を上回る攻撃は通じない。気絶させても蘇る。……なるほど。だから、海野と天野、大正寺谷の三人を“能力ありきの怪物”と呼ぶわけか」
「正しい評価よ。彼ら三人、能力なしでもAランクは倒せる。……私が認める数少ない“本物”」
北坂の声に、敬意が含まれている。
その目はどこか──羨望すら含んでいた。
「ただ、私の力で学年トップは無理。1位の紅谷、3位の今村、4位の海野……この三人に潰される未来しか見えないもの」
それでも戦っている。それでも、前に出る。
「だから、まずはあなたを倒すわ」
それが──北坂乃亜という人間なのだ。
_____
北坂サイド
(風間鹿都。Sランク2位。短剣使いの二刀流。だが、情報が少なすぎる)
私は心の中で静かに考える。対戦相手の情報は、可能な限り集めておいた。それでも風間の戦闘記録は少なく、戦績もほとんど存在しない。
(……未知数。それが一番怖い)
「行きなさい!!」
号令と共に、支配下の部下たちが一斉に動き出す。
遠距離と近距離の混合戦術。私が仕込んだ完璧な隊列。だが──。
「面白い」
風間はわずかに呟くと、静かに構えを取った。
その姿勢に、私の背筋が一瞬、ぞくりと粟立つ。
⸻
風間サイド
(来る……)
俺は深く息を吐き、短剣を握り直す。
全員を視界に捉えたまま、呼吸を一つ。静かに、落ち着いて──一歩踏み出す。
次の瞬間、俺の身体は加速する。
駆ける。切る。かわす。倒す。
遠距離攻撃が放たれるたび、紙一重で回避。
部下たちの動きにはパターンがある。俺の目は既に、彼女の戦術の綻びを捉えていた。
──30秒。
部下たちは全滅した。
(この程度……)
「これでSランクの実力者とは、笑わせんなよ」
_____
北坂サイド
(早い……速すぎる)
まさかここまでとは──正直、思っていなかった。あの動きは、並のSランクでは不可能。
だが私は引かない。これは想定済み。
「まだ彼らは動けるわよ?」
私は冷たく告げた。
倒れた部下たちが、再び立ち上がる。
(そう。私の能力《支配》は彼らを回復させ、再度行動させられる)
「私の能力は『支配』。支配した対象を私が望むように操れる。そして『力を渡す』で、私の能力の一部を彼らに貸せるの」
風間の表情がわずかに動く。
「無限リサイクルだな」
そう。これが私の戦術の本質──ゾンビのように蘇る部下達、支配下の回復能力者の存在、そして自らのバフを乗せての強化。
「支配の力を上回る攻撃は通用しない。気絶させても復活する……なるほど。忠告の意味が分かったよ」
彼の目が、冷静に真実へとたどり着く。
その意味を理解して悪魔のような目が北坂を睨む。
(……怖い)
私は思わず、唇を噛んだ。
本能が警告している──「この男は危険」だと。
⸻
風間サイド
風間は今、確かに思っていた。
(こいつ……戦い方を熟知している)
見た目に反して、無駄がなく、敵の強さも正確に分析している。
身体能力も、支配された生徒たちと共鳴して上昇している。
(能力を戦略として使いこなしている……まるで軍師だな)
自分と似ている、と風間は感じた。
冷静で、無駄を嫌い、勝つために最善を尽くす。
だが──それでも。
(……だからこそ、俺が叩き潰す)
風間の両目が鋭く細まる。
「もう遊びは終わりだ。次の一撃で決める」
冷静に、静かに。そして確実に。
風間は北坂へ、真の“殺意”を解き放つ準備を始めた。
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