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6:ふたりめ

 母と継父と住んでいた祖父母宅は前述の様に、叔父が持って行ってしまった為、移転を余儀なくされた。

 母達は新築のマンションを購入して移転。

 私は駅から徒歩5分圏内の古いアパートへ入居した。

 新しい勤務先は個人会社でお給料も手取り12万円。家賃が5万円…かなり痛い出費だ。しかも後日知るのだが、プロパンガスは手数料と単価が高額なので光熱費が毎月1万円程かかった。

 この時、既に姉は結婚しており、姪も生まれていた。義兄から購入したパソコンが不要になったから処分したいと言われ、姉から8万円と言われたが、義兄から運搬も含めて5万円で引き取った。Windows95だ。趣味の創作も少し始めた。高校で気に入っていた一太郎とATOKを早速導入した。

 佐藤さんと別れて3年経った。

 私ではない私が別れを苦しみ悲しんでおり、閉じこもっていた。楽しいとも感じないし、嬉しいとも感じなかった。ずっと内側に閉じこもり黙っていた。

 違和感が強く、ルキにだけ打ち明けて聞いてもらっていた。



 引き取って直ぐパソコンケーブルが接続不良を起こした。隣駅の家電量販店へ訪問する。

 オフラインで楽しんでいたが、パソコンのネット環境もそろそろ必要かと思い店内を歩く。

 パソコン用品について、いまいち良く判らない。説明出来る店員さんがいないかと思い店内を見渡すと、そこに背の高い黒のポロシャツを着た男性がいた。

「いらっしゃいませぇ。いかが致しましたか?」

 少し特徴的な話し方をするが、瞳は誠実そうだ。

「恐れ入ります、この商品について質問をしたいのですが。ご存知の方はいらっしゃいませんか?」

「あ、私がご案内しますよ」

 趣味がパソコンだというこの男性。解りやすく商品説明をしてくれる。話を聞いていると私の家の状況では今後も必要になってくるだろう物も、説明と紹介をしてくれた。私が懸念していた部分を此方が伝える前に言ってくれたのが好感だった。

 なんだかんだで彼に2時間お世話になった。

「またご不明点が有りましたら、ご遠慮なく、お声掛けくださいね」

会計時にニカっと笑った。



 翌週、パソコンのスペックが判らなかった為に購入出来なかった商品を求めて、再度隣駅の家電量販店へ訪問。

 彼の方から私を見付てくれ、また対応をしてくれた…1時間程。

 この日に知る。彼はこの家電量販店の店員ではなく、委託業者…プロバイダーの人だと。

 私の購入品は彼の成績にはならず、会計時対応をしてくれた社員さんの成績に反映されるそう。

「ごめんなさい、そうとは知らずに長時間拘束してしまったわ。ごめんなさい」

「あぁ、大丈夫。彼がうちの店の売上げにかなり貢献してくれてるのを、彼の会社に金額を添えて報告しているから」

ピンクのポロシャツを着た男性が何故かニヤニヤしながら教えてくれる。

 しかし…言われるまで気付かなかった私は愚鈍だ。ここの社員はお店のカラー…ピンクのポロシャツを着ているのに。

「私もご案内するお客様を選んで接客していますから、お気になさらずに。今後も当○○○ヤを宜しくお願いします」

「ネット環境が欲しいとお伝えしてましたよね?私のアパートが御社対応可能物件なら、是非、お願いしたい」

 彼はここに来るまで一切、プロバイダーの営業はしなかった。

 彼は自社と他社の比較をするのは当たり前だが、これが両方共にキッチリバッサリ長所短所の説明をするのだ。

 理解・納得し、契約書を書く。

 退店時にまたわざわざエレベーターまで送ってくれた。

「2人目だな」

 ルキがつぶやく。

「橋本さんには何も無いけれど?」

「いや、確定してる。お前が判らずとも、俺が判る。それに…ま、後々わかってくるよ」

なんだかよく判らない言葉をルキが口にした。



 半年後、紆余曲折有、彼…橋本さんから告白される。

「初めて姿を見た時、君が光って見えた。放してはいけない運命の人だと思った。君が俺を説明要員として選んでくれたのが凄く嬉しかった。説明している時間が、真剣に聞いてる君が可愛くて、時間が経つのが早かった」

 私が光って見えると言う人はたくさんいるが、そういう風に彼は理解したのか。

 橋本さんには再考を求めた。光って見えたのは違う意味ではないか?私は遊びで男性と交際は出来ないと伝える。しかも橋本さんは見た目が30代なのに、4つ下で23歳だった。

 私はあの人とのであいを待っている。早くあの人にあいたい。直ぐにでもあいたいと願っている。

 ルキ曰く、そろそろ成人を迎えるだろうとの事だから橋本さんがあの人ではない事も確定している。…あの人がかなり年下なのも、痛い。

「成人しても、であうのはまだ先だ。場合によってはあえないかもしれない」

「それは何故?星が違う?それとも国が?立場が?」

「同じ国だよ。でも世界が違う…かもしれない」

「それは、どういう意味?」

「…まだ確定ではないから」

 世界が違うという意味が解らない。いくら聞いてもルキはそれ以上教えてくれない。

 あの人にあいたいと言う気持ちは大きくなってる。なのに何故こうも思う様にいかないのか、ままならないのか?

「この流れにそのまま任せるしかない。…多分、それがいちばん良いと思う」

 結論として、私は出会った翌年に橋本さんと結婚して、その次の年には彼の子をその身に宿していた。



 橋本さんと交際して直ぐ、私はある公共機関のコールセンターに転職していた。

 この無駄に大きく通る声を使って、人の役に立てるだろう仕事がしたいと願っていた私には、願ったり叶ったりだった。ここも本来の私の学歴では入社出来ない企業だ。

 当時は個人情報保護法なんて無かったから、履歴書に書かれた会社に過去本当に所属していたのか電話確認するのは当たり前だった。

 面接官であり、後に優しく厳しく可愛がって下さった上司から入社して8年後に当時の話を聞く。

「最初に勤めた会社に問い合わせした時にね、貴方の育成をしたという主任さんが対応してくれたの。[何も無い所でよくにコケたり。休暇中に持参した茶葉でお茶をよく飲んでいて、花粉症で悩む上司や来客に、今ではそこらで売ってるが当時は未だ貴重だったお茶を振る舞ったり。お客様のお帰りの際にお茶のメモとティパックをラップに包んで渡したり。同僚のミスを上司に責められ、逃げた本人に変わって直ぐ取引先に謝罪連絡とリカバリー手配したり。屋上でコッソリ泣いたのバレてるのに腫れた目で笑顔を作ったり。戻る時に階段から落ちそうになって上げた悲鳴が「ぅひょぇ~」と何か楽しそうで。退職時には取引先がこぞって餞別注文やお菓子を贈って頂いた、退職して5年以上経っても未だに社内や取引先から話題が出る程のオモロいドジっ子でした]と。こんな事を話してくれた主任さんも十分変わってる。何より貴方の行動理念が会社と自分の損得じゃなく、相手を思い慮る気持ちという所が、人材として欲しいと思った。それは学歴や職歴だけでは見えない貴重なスキルだから」

 在職中は主任には散々からかわれ遊ばれたが、根気強く教育して下さった事も感謝してる。しかし…細かい所まで見られていたのは恥ずかしい…。連絡する事はしないが、心の中でたくさんの感謝の気持ちを送った。

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