13:准一
数時間で静岡駅着。次に乗るバスの時間迄、5時間待ち…こんな早朝ではカフェも開いていない。
漫喫ならやっている。久々に入ってみるが地方都市の漫喫なだけ有り、衛生管理や顧客管理が甘かった。危うくレイプされる所だった。相手と話をつけ、利用料は相手の支払いとなる。前科つくより安いものだろう。
2時間程バスに揺られ、病院に着いた。かなり立派で綺麗な病院だ。病院内は入り組んでおり、南海トラフ等の災害発生時は逃げるのが難しい様に思えた。
ナースステーションで声掛けし、訪問者名簿に記入。病室に着く。深呼吸をする。落ち着かせてから、病室に入る。
6人大部屋だが、3人利用だった。
「准一くん」
声をかける。橋本さんのまぶたが微かに動いた。裂希に突き飛ばされた。仕方無い。
「准一くん…」
手を握り、頬に当てる。あたたかい。脈も落ち着いていつもの速度。生きてる。目を開ける。
「あれ…どうしているの?」
ぼんやりした、か細い声。
「もう…馬鹿、馬鹿」
「なんで泣いてるの?」
「知らない、泣かせたのは准一くんだ、馬鹿、馬鹿」
「あぁ…ゆきの別の子だね。泣いてくれるんだ」
「うるさい、准一くんは私のだ。私以外が壊したら駄目なんだ。易々と壊されてるんじゃない、この愚か者が」
「そうは言われてもねぇ…」
ぼんやりした顔で笑みを浮かべて応じる。
橋本さんは気付いていた様だ。
今回の子細を聞く。しかしなかなか口を割らない。
裂希が苛々し出す。直ぐ壊そうとする裂希にしてはまだ温厚な態度だ。
重傷者にこれ以上の負担はよくないと判断。
丁度、担当医師の巡回もあり詳細確認した。緊急手術も成功しており、後は回復を待つだけなので問題は無いそうだが…。本人はゴールポストにぶつけたというが、フットサルのゴールポストにぶつけた様なものではない。准一本人が否定してはいるが自衛隊内での嫌がらせの末の暴行ではないか…と危惧していた。
裂希の様子がおかしくなっていく。だが、こらえさせた。
入退院窓口で手続き。洗濯等は病院着で済ますので不要…後日清算でいいと言われる。東京から来ているので頻繁に病院訪問が出来ない事や診断書作成についても確認した。
病室に戻り、手続きをやった事と、帰宅することを伝える。自衛隊の対応の事も話しあい、帰宅する事にした。
「ちゃんとゆっくり養生しろ。これ以上、私に心配かけさせるな。でないと准一くんの好物のローストビーフはもう作らないからな」
「それは困る。夢で見て今すぐ食べたい位なのに。ゆっくりするよ」
「当たり前だ、愚か者めが」
3時間に1本のバスの時間が近づいている。
病室を出てナースステーションへ。本当に入り組んでいる…入院棟とはこんな作りだったか?
苛々しながら、出口に向かい、バス停へ。もうバスは来ていた。
慌てて乗り込む。
自衛隊内でのいじめ…いじめとは生易しい表現だ。傷害事件だ。しかし今後も橋本さんが自衛隊に勤めるなら泣き寝入りしかないだろう。
末端の人間がやった事とはいえ、隠蔽体質の組織でもある。脅迫された可能性もある。
橋本さん本人が否定しているのだから何もできない。
何も、出来ないのだ。




