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火喰のアルカイヤ  作者: 根占桐守
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小話 ガヴィの純粋なる疑問②「年齢」

 アルカイヤは一見すると、十代前半くらいのあどけない少年少女に見える。

 しかし、アルカイヤの知識量は、十代前半の少女とは思えないほどに膨大だ。もしや、見た目こそは幼さを感じる少女だが、実年齢はもっと()()()()()のかもしれない。

 目の前でさまざまな資料に釘付けなアルカイヤを見て、そんな考えに思い立ったが吉日。ガヴィは何の躊躇もなく、前のめりの体勢になってアルカイヤに問いかけた。


「ここだけの話。アルカイヤ先生って、歳はおいくつなんです?」

「今年でちょうど、三十」

「なんだ、まだ三十か……さ、さんじゅ!?」


 ガヴィに目を向けることなく即答したアルカイヤ。一方ガヴィは、予想だにしなかったアルカイヤの答えに仰天したような大声を上げる。そして勢いのまま、その場に立ち上がってアルカイヤへとガヴィは問い詰めた。


「うそ! 絶っ対うそだ!! 十三歳の間違いだろ!?」

「やかましいな……ぼくはわざわざ、くだらない嘘は吐かない」

「いや確かに先生は冗談も嘘もない、面白味のない人ですけど! 流石にその見た目で三十歳は信じられませんって!」

「いい加減、蹴り倒されたいの?」


 ガヴィの散々な言い様に、いよいよアルカイヤが鋭い視線でガヴィを睨み上げる。近くでお茶を淹れていたラトーナは、そんな二人を見かねて小さく息を吐きながらガヴィに口を開いた。


「はあ……ほんっと思考が浅いのね、ガヴィは。アルカイヤは鳥人類(ちょうじんるい)の生き残りよ? 五百年は生きるあたしたち魔女と同じ異人類(いじんるい)なんだから、人間とは年齢感覚が全然違うの。確か鳥人類(ちょうじんるい)は二百年はゆうに生きると云われてたから……人間の年齢に換算すると、アルカイヤは十五歳くらいってわけ」


 アルカイヤにだけ花のお茶を出したラトーナの解説に、ガヴィはようやく得心がいったように大きく息を漏らして再び椅子に座り直す。


「ああ~! そっか、なるほど。なんだ、そういうことなら早く言ってくださいよ~アルカイヤ先生……あだっ」

「……」


 調子のいいガヴィの脛に、アルカイヤは黙ったまま小さく蹴りを入れる。そんな二人に小さく笑いを零すラトーナは、アルカイヤの代わりの反撃といったように、次はガヴィへと問いかけた。


「そういうガヴィ。あんたこそ歳はいくつなのよ?」

「ん、俺? それは——ヒ・ミ・ツ」

「はあ? なんでよ。いいじゃない、歳くらい。アルカイヤも答えたんだし」

「じゃあ、俺いくつに見える?」

「うわ、きた。一番面倒くさくて嫌な返し!」


 相変わらず軽薄な笑みを向けてくるガヴィに、ラトーナはあからさまに嫌そうな顔をしながらもまじまじとガヴィの無駄に端正な顔を覗き込んで、考える素振りをする。


「もう、そうね……人間で言うなら、三十代から四十代くらい?」

「おお! 良い線いってるね~、ラトーナ。アルカイヤ先生はどう思います?」


 ガヴィに話を振られたアルカイヤは、資料から目を離して視線だけでガヴィを一瞥すると、すぐさま資料に再び視線を戻して即答した。


「二十一歳」

「え」


 予想外過ぎるアルカイヤの回答に、ガヴィは引き攣ったような声を思いがけず上げる。ラトーナはというと、一瞬ポカンと軽く口を開けっ放しでいたが、すぐに噴き出すように笑い出した。


「ぷっ、ははははは! それはもう坊やじゃない、アルカイヤ! こんな髭面のだらしない男の顔して二十代は有り得ないわ! だって、あまりにも精気がなさすぎる!」

「ちょ、ひどいなラトーナ!? ……それにしても、二十代は初めて言われましたよ、アルカイヤ先生。俺、ちょっとびっくりしちゃった」


 そんな二人の反応に、アルカイヤは再び顔を上げて小さく首を傾げて見せる。


「そう? 髭を剃って、それなりに身だしなみを整えれば。それくらいの年齢に見えると思うけど」


 アルカイヤの言葉に、ガヴィは少しだけ沈黙を置いた。しかし、すぐにいつもの軽薄な声でアルカイヤの義手の手を取った。


「ええ……どうしよう。俺、すごく嬉しい。先生、結構俺の顔好きなんです?」

「いや、別に。そういうのどうでもいい」

「ぶはっ」


 アルカイヤの返しに、ガヴィは項垂れ、ラトーナはまた噴き出すように笑い声をあげる。

 かくして、謎の多いアルカイヤの謎の一つが解かれたが、一方で誰かの謎は深まるばかりであった。


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