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【Restart】

♣♣♣


 二三時……まもなく一〇分前。次が今日最後のグチです。

 みんな眠くなってない? 僕は絶好調だぜ!

 なんせ世界救ってるからね? もう擦りまくるよ? 垢が出なくなっても擦り続けるよ? いいよね? 僕英雄だし……うるさかっただけ? ちょっとちょっとぉ、それしか言えないの? 最近僕への当たり柔らかくない? もっと前のような刺激的パンチおくれよぉ~!

 ひょっとして、本当に僕のこと英雄視してるんじゃない? マジなこと言うと、もっと英雄視してほしい人は他にたくさんいるよ? 実際命を懸けてバトった人たちがいるわけで、リスナーのみんなにも知り合いがいるかも!?

 そんじゃガマぐっさん! 次のグチを……うちの公式キャラ大丈夫? 新宿破壊しまくってたけど過激派左翼運動のマスコットになったりしない?

 気にしても仕方ないか! んじゃガマ口から次のハガキを〜……これだ!

 ラジオネーム【ママ一年生】さん! ラストに相応しいの期待してるよー?


「グッディさんこんばんは」


 はい、こんばんわー!


「突然ですが、私はグッディさんのこと嫌いです」


 ぐはっ!

 いきなりジャブからきたねぇ〜。


「いつもいつも綺麗な言葉ばかり使って、でもボランティアに参加してるって話とかは全然聞かなくて、口だけの詐欺野郎! ……って思ってました」


 ぐあぁーーー!

 僕のHPに二億ダメージ! 残り体力【1】だよ! だれか回復魔法ーーー!

 きゅぴーん! 回復魔法【文末に注目】! あっ! みんな聞いてた!? 末尾が過去形になってる!


「でも……いつしか綺麗な言葉が本当に綺麗に感じるようになりました。切っ掛けは息子ができたことだと思います」


 だから【ママ一年生】なのねー。

 おめでとう! 息子くんもよろしくねー!


「それまでは自分のことでいっぱいいっぱいで、他の誰かのこと……周りのこと考えることなんてなかった。どんな綺麗なものも受け止められなくて、景色に色が無くて、ただ毎日が過ぎていくだけだった。

 でも息子が出来て、私一人じゃどうしようもなくて……それなのにどんどんいろんなトラブルも舞い込んでくるし、本当に大変で……でも、気付いたら私の周りにはたくさんの人がいたんです。

 みんな私を助けてくれた。手を貸してくれた。きっとそれってすごいことじゃない。周りから見たら普通のことだったのかもしれない。

 でも私にとっては奇跡のようで、私の世界は彩りを手にした。これまでの自暴自棄な私が嘘みたいに、世界が明るく、温かくなって……私は生まれ変わった。

 星を見れば綺麗だって言える。風が気持ちよく感じる。水面が反射する光が、夏祭りの花火が……嫌いだったあなたの言葉も、今は素直に受け止めることができる。

 嫌いだったけど聞いてきた言葉が私の中に残っています。いつも私を励ましてくれた……これからも力になってくれる……。

 今なら言えます。あなたのラジオを聞いてきてよかった……。

 本当に、ありがとう」


 ……聞いた? 聞いた聞いた!? ぜん・かい・ふく!!

 やばくな~い!? こんな褒められたことないんだけど~! 捏造なんかしてないよ! こんな素晴らしいハガキは初めてだ! マジでありがとうね!

 ……なに? グチじゃないって? ファンレター? ……確かに。混ざっちゃったのかな?

 まぁいいじゃない、たまにはさ! もう放送時間無いし。番組の趣旨と違うけどさ、前向きな言葉だけで終わるのもいいじゃん? むしろそうあってほしいよ!


 言葉って受け取り方次第でどんな方向にも気持ちが動くよね?

 発した本人の意思は関係ない。受け取った人が方向を決めるんだ。

 自分を擁護するつもりはないけど、実際僕の発した言葉を【ママ一年生】さんは「綺麗ごとだ」「嘘っぱちだ」って思ってた。感情の大海原で、航海士の僕の指示を聞いたのに、船長である君は逆に舵を切ったんだ。

 僕だって本音で語ってる。真意をそのまま受け取ってほしい。伝え方にミスがあったかな? 別の言葉を使えばよかったかな? 放送後にSNSを見ると嫌でも思っちゃうよ。

 僕らは同じ人間だけど、違う生き物だ。違う生活をしてきた。違う心を持ってる。会話のスタート地点が同じでもゴール地点が同じってことはほとんどないんだ。

 でも似た考えを持った人はいるよね? 完全一致じゃないけどさ、僕の航海計画と似た構想があって、話をしたら賛同してくれて、僕と一緒に船長に説明しに行ってくれるんだ。

 もちろんそこでもどう受け取るかは船長次第。なにも変わらないかもしれない。でも、僕以外の誰かの言葉なら……それが君にとっての大事な人なら……変わるものもあるかもしれない。

 彼らは管制塔……灯台……僕や君に道を示してくれる。乱立する灯りはいろんな方向を示すけど、僕らが納得できる港を教えてくれるんだ。

 もちろん君が選ぶ方角が悪いわけじゃない。でも自分の決めた方角に少しでも不安があったら、灯台を頼ってね?

 【ママ一年生】さんは灯台を見つけた。それもたくさんのね! リスナーのみんなも見つけようね!

 光が見えない? 本当に? 探してみて! きっと笑っちゃうくらい近くに灯台は建ってるよ!


 いやぁ今日もクサいこと言ったなぁ……! ……もうちょっと時間あるね。

 突然だけど、みんなは生まれ変わりって信じる? 話半分でいいから聞いておくれ!

 僕、実はねー前世は女性だったんだ。六〇歳過ぎまで生きたかなー? 孫だっていたんだぜ!? めちゃめちゃおばあちゃん子だったんだ! そりゃあもうかわいがったよ! 泣き虫な子でさ、いつだって僕を頼ってくれたんだ……。

 記憶もばっちり覚えてる。前世を思い出して思ったのは、やっぱり僕は僕なんだなってことだね。自分の意志や言葉が、生まれ変わっても変わってなかった。誇りに思うよ。

 同時に怖さも感じたね。人や想い、生活、景色……昨日のことのように思い出したたくさんの宝物たちが、この世界にはもう無いんだって。

 ……でもね、そんな怖さはすぐ消えてしまったんだ。隣を見たら苦楽を共にした仕事仲間たち、思い出を振り返ったら心を許したたくさんの友達や家族がいた。新しい僕が築き、受け取った、たくさんの宝物たちがいたんだよ。

 そして驚いたのは、失ったと思っていた過去はこの世界でも生き続けていたってこと。僕だけじゃない。きっとみんなの中にも気付いている人がいるはずさ。

 これは僕のかけがえのない人がくれた、大事な大事な贈り物だと思ってる。本当にありがとう……いつかまた、会える日を楽しみにしているよ!


 辛い時下を向いていたら、前を向けとか上を向こうって励ましがあるけど、本当に見るべきは横だよ。気付いてないだけで、きっと誰かが隣にいるんだ。手を繋いだら、少しは背負っていたものが軽くならないかな?

 軽くなったら、今度は後ろを振り返ろう。同じように挫けそうな人が下を向いてるかもしれない。一歩下がって、隣に立ってあげて、項垂れた手を拾い上げてほしい。

 重たい荷物を一緒に持ってあげたら、そこで初めて前を向こう! さっき隣にいてくれた誰かが、きっと手を差し伸べてくれているはずさ!

 綺麗ごとかもしれない。信じられないかもしれない。それでも僕は、世界はそうあると思ってる。

 そして、その世界が続くために願っていることが一つ!

 明日も、明後日も、生まれ変わったとしても、君たちと、君たちの大切な人たちが世界の中にいますように!

 さぁ、今日最後の曲だ! みんな、また明日ね!


【能古ひより/テラ】。


♣♣♣

これで完結となります。

ここまでお付き合いいただけた方、お疲れ様です!

ありがとうございました!!

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