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仮設風向計/詩集その3

キュートアグレッション/Lost

作者: 浅黄 悠

キュートアグレッション



潤んだ瞳 一重の瞼

下膨れの顔 

桜色のリップが似合う唇に君は指を当てて

「ねえ、どうしてそんなに見つめるの?」

返事が分かっているから聞くんだ

「君が可愛いからだよ」


艶やかなナチュラルネイルも

袖が膨らんだお洋服も

君はほんとに可愛いものが似合う女の子

つつきたくなるような柔らかい肌を晒して

シュークリームを一つ頬張ってる

君は自分を輝かせる場所を知ってる女の子


僕は君の笑顔を

君は僕の平凡な顔を

じっと眺めている

愛してるとか言ってしまったらもう

言えないよそんなことは


ふわふわのショートボブ

桃色の耳たぶの上でピアスがきらり

紙ナプキンの上の指が震えるから

さりげなく目を瞑る


いや……そんなはずはない

認めなよ

いや……違うんだ

そういうんじゃなくてさ

でも可愛いんだろ?

それはそれだけどこれはこれじゃないか


頭一つ分の上目遣いで首をかしげて

肘をつきながら君は笑う

危ない距離じゃないのに

下唇の縦線は華やかに

愛してるとか言ってしまったら





Lost


掴みかけたと思ったらまた消えて

ふとした瞬間また僕の目の前に現れるのだけれど


プールの水面の揺らぎ

英文法の構造

臆病さ以下の感情

そんなものが剝がれては消えていった

思っていたよりも緩やかに

ドラマティックさなど何処にもない


すれ違ったと思ったらまた通り過ぎていった

カードを混ぜてはうんざりしながら立て直す


日々が走り

複雑だったものがどんどん単純になっていく

あの人もこの人もみな同じだったんだ

君なんか嫌い、嫌い、嫌いに決まってる……


決別したはずの傷が癒えていない、笑えない

それでも決別する以外にできることがない

もし僕が君を追いかけるのを止めても

君は僕を追いかけることなんてしないだろうから

今宵もまた日記を破り取るしかない


日々が走る

それはもうあくまでドラマティックに

貴方たちの見る未来はなんて理想的で

貴方たちの見る過去はなんて切ないのでしょう

こんな世で君は何を思っているのでしょう

もううんざりだ 嫌気が差したなんてものじゃない

幻想を追いかけ続ける僕は僕と相容れない

きっと年々この亀裂は拗れていく


腹を開けばどこまでも絶望しかなかったのに

ふとした瞬間近づいてくる影に息が止まりそう


季節がまた廻り梅の蕾の如く

全ての出会いに色がつく

返上したくてもできない時の囁きは蘇生か止めか

そして変わらず透明な流水


いつも見覚えのある何かを感じているんだ

そこにいなくても僕が君を映し出している

次に来るのは誰だろう


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