表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

忘れられない約束

作者: 雪苺

「ねぇ、あなたは覚えていますか?」


「ずっと一緒にいようね」と言った。


あの日の約束を・・・。



私は、藤崎(ふじさき)優里(ゆり)

親の転勤の為

8歳の頃この町に引っ越してきました。


引っ込み思案で、恥ずかしがりやの私は、転校先の学校で

なかなか馴染めず、友達も出来なくて、辛い毎日を過ごしていました。


そんなある日、休み時間に

私に話しかけてくれた女の子がいました。


言葉が聞き取りにくかったので

「何て言ってるの?」と

聞き返したら、ゆっくりと話してくれて、「一緒に遊ぼう」と言われたことがわかりました。


その女の子は、橋田ミナちゃんと言います。


ミナちゃんは、生まれつき難聴であることと

普通に喋られると聞き取りにくいから

ゆっくり喋ってくれると

聞き取りやすいと教えてくれました。


ミナちゃんと一緒に遊んでいると

同じクラスの女の子から

「ミナちゃんと遊ぶのやめた方がいいよ。だってその子、耳が難聴で何喋ってるのかわからないし、私が言うことも聞き取ってくれないから、みんな迷惑してるんだよ」と言いました。


私は、何でそんなことを言うのか理解出来なくて「何でそんなに、酷いこと言うの?ミナちゃん何も悪くないのに。何言ってるか、わからないなら、わかるまで何度も聞いたらいいし、ゆっくり喋ってと伝えたらいいじゃない。ミナちゃんが、聞こえにくそうだったら、声を大きめにして、ゆっくり喋ったらちゃんとミナちゃんに伝わるよ。何でわからないの?」と言って悲しくなり泣きました。


悪口言ってた子が

「私、悪くないもん、みんなが思ってること言っただけよ」と言って離れていきました。


私は悲しくて、家に帰って

今日あったことを母に話し

ミナちゃんが、なぜ虐められるのか聞きました。


「どうしてみんなは、難聴のミナちゃんのことを虐めるの?普通の子と違うから虐めるの?そんなのミナちゃんが悪い訳じゃないのに可哀想だよ。」


それを聞いた母は

「そうね、確かに普通の人と違う、障害を持ってるだけで虐められている人は多いと思うわ。でもね、虐めをやめてとお願いしても無理な事があるの。じゃあどうすれば良いかってなるんだけど、優里(ゆり)がミナちゃんを虐めから守ってあげたいと思うのなら、そばにいて支えてあげたらどうかな?喜んでくれると思うわよ」と答えてくれました。


そうか、私がミナちゃんの、そばにいたら良いんだ。

「お母さんありがとう」


その後、ミナちゃんと仲良くなり友達になって、たくさんの日々を共に過ごし、小学校卒業前に


「これからも、ずっと一緒にいようね」と約束しました。


中学に入学してから、3年間別のクラスだったこともあり

ミナちゃんの虐めは、なくなることなく続いていました。


先生に何度も「虐められているので、やめさせて下さい」と訴えましたが、虐められる方にも問題があるのだろうと言われました。


問題って何?問題なんて何もない!

ミナちゃんは、生まれつき難聴ってだけで

みんなに虐められているんだよ。


虐めがある事を、みんな知っているのに、誰も何もしてくれない。

見て見ぬふりの人もいる。


私は、人間不信になりそうでした・・・。


中学を卒業し

高校は違う高校だったので、高校の友達といる事が自然と多くなり

ミナちゃんと、ほとんど会わなくなっていきました。



高校3年のある日

テレビで何気なく、夕方のニュースを見ていたら


〇〇高校の修学旅行先のホテルで火災があり女子生徒、橋田ミナさんが死亡と放送されました。


私は、頭が真っ白になり

同姓同名でありますようにと祈っていました。

ミナちゃんの家に電話をかけても繋がらず、安否がわからない状態で不安でたまりませんでした。


ですが、翌日の新聞に、顔写真が掲載されていて

ミナちゃん本人だと知り、号泣しました。


通夜もお葬式も親近者で済ませると言われて、最後に顔を見ることも、お別れすることも叶いませんでした・・・。


後で知った事ですが

高校でも入学してからずっと酷い虐めにあっていたそうです。


私がミナちゃんと同じ高校に行かなかったから、そばにいなかった私が悪いんだと自分を責めて後悔しました。


ミナちゃん一緒にいれなくてごめんね、一人にしてごめんね。



あれから20年が経ち、私は今でも

「ずっと一緒にいようね」と

あの日した約束が忘れられません。


いいえ、きっと一生忘れないことでしょう。


あの日、あなたと交わした約束を・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【ランキングに参加しています】
投票よろしくお願いします⬇
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ