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班の仲間たち2

「ねえ、美桜ちゃんって呼んでいい?私のことも、美月って呼んで!!」


謎の美少女、美月ちゃんの言葉だ。


「いいよ。」


私はそっけなく答える。


「やったぁ。美桜ちゃんって、キレイな名前だよねー。初めて聞いたときから、そう思ってたんだ。」


純粋な笑顔で話しかけてくる。いや、身体年齢が若いから、そう思えるのだろうか?

あまりの無邪気さに、人見知りな私の心も、ほだれていく。


「ねぇ、美月ちゃん。私、美月ちゃんのこと記憶にないんだけど、同じクラスだったっけ?」


自然に聞くことができた。


「あっ……」

なぜか、中出くんが反応した。


「いっくん。私から言うね。私、小学校では、学校休みがちで、あまり行けてないんだ。それに、4年生の時に療養で転校しちゃったしね。1年から4年の間には同じクラスにはなったことはないよ。」


あっ!!!

思い出した。6年3組のクラスの記憶だけを、探っていたから、何も思い出せなかったんだ。

渡辺 美月ちゃん。確かに、同学年に病気がちの女の子がいたはずだ。

でも、転校したのもあって、すっかり記憶から抜け落ちていた。


どうして、転校した子が、この世界に来たのかは不明だが、もしかしたら、転校しなければ、6年3組になっていたからなのかもしれない。


そして、彼女を見つめ、

「忘れててごめん。今、思い出した。宜しくお願いするね。」

と笑顔で答えた。


「うん、よろしくー。楽しみー、ワクワクするね。」

と美月ちゃんも答えてくれる。


「うん、美月も、望月さんもよろしく。」

と中出くんも答えてくれた。


「で、さっきから、何か点滅してるよ。ってゆーか、この機械なーに?」

とタブレットを指差しながら美月ちゃん。


「タブレットだよ。パソコンの小型版みたいなもんか。望月さん、ちょっと貸してくれる?」

「いっくん、私にもみせて。」

「うん。3人でみよう。」


私は、中出くんにタブレットを渡した。


「えーと、何かメッセージが届いてるみたいだな。」

タブレットを操作しながら中出くんが言った。


正直、私も、(恐らく)美月ちゃんも機械系には、疎いのでやってくれるなら有り難くお願いすることにする。

『そうか、ぼっちじゃないって、こういうことなんだな』としみじみ思う。

私が機械系を苦手とするならば、得意な人がやればいいのだ。


「あっ、表示されたから読むぞ」

「ボックスの使い方について。この箱を介して1日1回物資の提供を受けることができます。現在の地球上にあるものだったら、何でも提供可能です。(生命体や、物ではないもの、抽象的なものは、対象外になります。)多くても少なくても、箱に入るものであれば可能です。」

「……」

「ん?」

私たちは顔を見合わせた。


えっ、これって、かなり重要じゃないのー!!


そう思ったのは私だけじゃなかったらしくーーーー


「お金だけはあるけど、他の物は何もなかっただろ?これは、ちゃんと話し合わないと……だな。」

「うん、いっくん、そうだね。だって、美月たち、家もないし、着替えもないんだから。」

「ああ、宿を探しに町に行かないとな。」

「あっちに町が見えるよ。」

話はとんとん拍子に進んでいく。


ここは、ちょうど、街道の途中のような場所で、遠くに町らしきものが見える。道といっても、塗装されたような立派なものではない。地面がむき出しになった、でこぼこ道である。道の両端は短い草花が生い茂っている。遠くには木々が繁っている。

野生動物なんかも、出てきそうな感じだ。

半分壊れた、看板らしき立て札もたっている。

立てられてから年月が経っているのか、かなり風化していて、木も腐っている。おそらく、道しるべ的なものだろうが、私たちには、その文字を読むことなど到底できっこない。


「よし、じゃあ行くか。」


「あ、ちょっと待って!!」

久しぶりに会話に入っていった。

自分の声の大きさに、自分自身がびっくりだ。慌てて発声したのでちょっと、うわずった声になったしまったのは、許してほしい。

私は、あの町がリガロである可能性が高いこと、この町をどのような経緯で選んだかを、詳しく説明した。


「そっか。なら、他の班長の選んだ町は分かるか?」

中出くんが、腕を組んで、確認してくる。


「ううん。それがヘッドホンで耳を塞がれてて、わからないの。」


それを聞いて、また中出くんは思慮ぶさげに考え込んでしまった。


「じゃあ、他の班と合流は難しいね」

と美月ちゃん。


「俺は、望月さんの選択は正しかったと思う。何も情報がないなかじゃ、少しでもこの世界の手がかりがほしい。そんな中で、貿易によって流通がある、色んな国がある可能性が高いということだ。」


中出くんは私の話を真剣な顔で聞いた後、意見を述べる。


「また、戦争や党争がない町を選んだのも大きい。逆を言えば、この世界には戦争や党争が存在するということだ。そんな町に転送させられたら、たまったもんじゃなかったぞ。平和な町を選んでくれた望月さんには、感謝してもしきれないな。……ありがとう。」

こちらを向いて中出くんは、真剣な表情でお礼を言ってくれた。


私は、またもや、びっくりしてしまう。

今日で何回びっくりしただろう。

心臓がいくつあっても足りないかもしれない。

まっすぐに目をみて、心からのありがとうと言われたのは初めてだった。

その恥ずかしさに耐えきれず、思わず下を向いてしまう。


「あ、美桜ちゃん、赤くなってるぅー。美月も戦争は嫌。だから、私からもありがとう!」


二人からお礼を言われ、ますます恥ずかしくなってしまった。




私たちは、町への道を歩きながら、今後のことを話すことにした。もう、日は沈みかけで、人通りは全くない。


「まず、生きる上で必要なのは衣食住だと思うんだ。」

中出くんは立ち止まり、その辺に落ちていた、木の枝で、地面に衣食住と書いた。

私も衣食住は知っている。衣は衣服、食は食料、住は住居のことだったと思う。


「全部、ないねぇ。」

と美月ちゃん。その割りに、切迫した様子もなく、むしろこの状況を楽しんでいるようだ。

その適応の早さにただただ羨ましくなってくる。


「ああ、そうだ。俺らはまだ何も持ってない。望月さんが言っていたように、リガロの住民に紛れるつもりなら、町に着く前に、あれを使うべきだと思う。」

中出くんは、意味深な視線を私の手元に向けた。

あれとは……もちろんボックスのことである。

ボックスの中には、3万エールのお金も入っていた。


「何を転送して貰うの?」

私は中出くんに聞いてみる。


「必要最低限のものは欲しいな。町に紛れるための服は絶対必要だ。それに、リュックも欲しい。」

そういえば、私たちは皆手ぶらだった。鞄は、こちらには転送されなかったらしい。着の身着のまま、この世界に来たという感じだ。

こういうときに、冷静に分析してくれると、本当に助かる。

私なんか、状況に対応できず、いっぱいいっぱいだ。

美月ちゃんとは違う、中出くんの適応力にも感嘆するしかない。

ほんと、二人はお似合いな気がした。


服(着替え)、水分のペットボトル、リュック、お菓子(笑)、私たちは必要なものを上げていく。

お菓子のような、要らないものは、中出くんに即、却下されていた。

食事は町で調達しようということになった。

「じゃあ、注文するぞ。」

中出くんが私たちに目配せした。

注文画面は、アプリのような、アイコンをクリックしたら出てくるようだ。

その前に箱の大きさについてだが、縦30㎝、横50㎝、、高さ30㎝ほどの立方体とでもいえば分かるだろうか。

ちょうど、カラーボックスの中にぴったり入るくらいの大きさである。



私たちは恐る恐るアイコンをクリックし、注文をすることにした。




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