旅の始まり
何を言ってるの?
調査?
班長?
異世界?
あまりのことに、頭が追い付かない。
完全に頭の中が真っ白になってしまった。
私、あの雷で死んだの?
死に際にみる妄想。
それとも、クラス会が憂鬱すぎて、悪夢でもみてる?けど、夢にしてはリアルすぎる……。
じゃあ、仮想現実のカプセルに、寝てる間に入れられた?
誰に?
家には家族だっていたし、誰かが勝手に部屋に入って、そんなことが出来るはずはない。
現実逃避をしようと脳が働いて、違う理屈を必死に探そうとした。
けれど、この状況を説明するには、現実だと受け止めるしかなかった。
泣きたいし、発狂したい。
でも、ほんの少し残った理性が冷静になれと訴えていた。
私は涙目になりながら、宇宙連邦とやらの調査の説明を反芻してみる。
確か、班長に選ばれなかったメンバーは、好きな班に所属できるのよね?
でも班長は、好きな班を選ぶことはできない。
そして、私は第7班の班長。
私に班の選択権はない。
ただ、私の元に集まってくれる者を待つのみだ。
クラスで孤立していた私の班に、参加したいというクラスメイトなど誰もいないだろう。
きっと、私の元には誰も来ない。
ここまで考えて、やっと私は、少し冷静になった。
なんだ……小学校のあの時と同じじゃない。
私はぼっち。
一人ぼっちで班なんて、笑っちゃう。
調査だろうが何だろうが好きにすればいい。
ただし、私に迷惑さえかけなければ。
人を巻き込んで、調査をするという、宇宙連邦……の代弁者、熊のぬいぐるみを破壊してやりたくなった。
『班長には、小型の箱と、タブレットを支給します。タブレットには此方からの定期連絡を不定期に送ります。返信はできません。異世界で死亡して全滅した班や、捕虜となって自由な活動ができなくなった班の情報などもお送りします』
不謹慎なことを、熊はほざいている。
私は、怒りがふつふつと沸いて出るのを感じていた。
ただ、パニックに陥って恐慌状態になるよりかは、ましだったと思う。
怒りのお陰で、客観的に状況をとられることができた。
『箱の使い方は、異世界に降り立ってからタブレットでお伝えします。』
気がつくと、私の手には、箱とタブレットが乗せられていた。
『では、班長以外の方は、決まった方から目をつむって、どの班に参加したいか念じてください。もちろん、一人一班です。友達と話し合って決めて頂いても構いません。第1班から、第7班までの班長名はボードにも書かれていますし、先程の発表通りです。』
何もなかったはずの部屋に、ボードが出現していた。
私も確認してみる。確かに第7班の班長名には、私、望月美桜の名前が記載されていた。
そして、第一班の班長名は、田上航太、クラスの人気者の名前があった。
見てると、ボードに他のクラスメイトの名前が浮かび上がった。
どうやら、決まったメンバーから、次々と表示されるようだ。
もう、1班には5人もメンバーが集まっている。
メンバーは当然ながら当時、仲のよかったグループである。
そして、真っ白い空間の人数が減っていることにも気づく。
『尚、班が決まったメンバーから、別室に転移させていただきました。』
熊の口から、尚も説明は続く。
暫く騒然としたが、徐々に空間の人数も減っていき、最後は班長の7人のみになった。
その中には、私をいじめたイジメっ子のリーダーだった、大村もいる。
その大村率いる、第4班のメンバーは、いじめっこ集団だった。
『班長の皆様は最初に降り立つ町を決めていただきます。こちらが、名前リストです。町の名前が、一つずつ書かれています。50の町名から、ひとつ降り立つ町や村をお選びいただけます。参考として、一人ずつ、町についての質問ができます。他の方の質問は聞けません。質問は、1班の班長から始めます。』
『では、第2班以降の班長はヘッドホンをしてください。』
気づくと、頭にヘッドホンがつけられている。
暫くして、質問が終わり、降り立つ町を決めたのか、田上くんは、この空間から消えていった。
それが、6回続き……
私の順番がきた。
ボードには、自分以外、誰の名前もなかった。