班長なんて絶対に嫌
クラス会は、近くの居酒屋で行われるらしい。
その前に、皆で卒業した母校に集まって、ビデオ撮影することになっていた。
どうやって許可をとったのかは分からないが、2時間、体育館を借りれたらしい。
集合時間は、土曜日の16時だった。
私も仕事が休みなので、ゆっくり支度できた。
「久しぶりだな。卒業して何年経つんだっけ?」
「ああ、久しぶり。13年くらいじゃない?もう、俺ら25だろ。速水と橘の結婚式以来じゃね?」
そんな会話が聞こえてくる。
そういえば、風の噂で、クラス内で結婚したカップルがいたと聞いたことがあった。
全く私には関係のない話だが……。
そう、そこまでは、至って普通のクラス会の始まりだったのだ。
--突然事件は起こった。
初めは停電かと思ったくらいだ。
いきなり、体育館の電気が消えた。
「きゃー」
誰かは分からないが、聞いたことのある同級生の声が聞こえた。
その後、雷が落ちたかのような、電流が走った。
それも、一瞬の出来事で、私たちは気を失ってしまった。
覚えているのはそこまでだった。
気がつくと、回りには何もない空間に私たちは存在していた。
周りには何もない。
辺りを見回しても真っ白で何も見えない。
何もない空間に、私たちクラスメイト40人がいた。
そして、目の前には、熊のぬいぐるみが浮かんでいる異様な光景だった。
人間、驚きすぎると、何も喋れなくなるらしい。
しんと静まり返っていた。
「ここはどこなんだよ!」
しばらくして、誰かの声が聞こえた。
この声は、誰か、分かる。
クラス会に私を誘う電話をかけてきた田上だ。
それを皮切りにして、あちこちから、声が上がる。
「なに、ここどこなの?」
「さっきの雷なに?」
「静かにしてください」
熊のぬいぐるみには、似つかわしくない、低くどす黒い声が響いた。
喋るはずがない、熊のぬいぐるみが喋ったのだ。
驚かないはずはない。
また、一瞬にして静けさが返ってきた。
『あなた方、6年3組は、我々宇宙連邦の調査に選ばれました。集団調査としてサンプリングをとるべく、皆様には異世界に行っていただきます』
『異世界で皆様なりに生き抜いてください。
ルールは後程提示しますが、それぞれの方法を模索して生活して頂くことになります。我々は、若干のサポートはさせていただきますが、命運は皆様にかかっています。』
『そのために、まずは班分けを行います。
班は7班に別れていただきます。メンバーは好きな班に所属して頂いて構いません。ただし、7班の代表となる7名はこちらでランダムに選ばせていただきました。』
『その7名を発表します。名前を呼ばれなかった方は、どの班に所属するか選んでください。一人目の班長は……』
途中、色々な怒鳴り声、泣き声、パニックになる者、ぬいぐるみ相手に罵る者もいたが、私はある一言を聞いた途端、気を失いそうになってしまった。
『……7人目の班長は、望月 美桜 様です』