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真、写真に話しかける

 若い。

 ふたりを見ていると、それがよくわかる。

 かつては、私もそうだったように。

 生きることに飽きてくると、彼らが眩しく見えるのだ。

 何かに打ち込める熱意は、年齢とともに薄くなっていった。

 おっと、ふたりは私の言葉を待っているようだ。

 そんなものは認められない、と感情をぶつけるのは簡単だ。だが、それで良いのだろうか。

 今日、初めて会った彼の人となりはまだわからないが、少なくとも今は、娘を見捨てはしまい。

 親に殴られて、そして怒られにうちに来たわけだ。逃げたかったろうなぁ。

 私が学生の頃、これができたろうか。

 無理だったろうなぁ。

 私は、仏壇の妻の写真に顔を向けた。

 孫の顔を見ることは叶わなかった、叶えてあげられなかった。

 子は、授かりものだ。望んでも迎え入れられない環境だって、ある。

「なかなか子供に恵まれなくってねぇ。授かるまでに、苦労したんだ」

 私の口から、ぽろりぽろり、言葉が零れていく。

 着ずれの音。ふたりが居住まいを正したのがわかる。

「運よく授かって、嬉しかったのを覚えているよ」

 妊娠検査薬で反応が出た時の妻の顔は、忘れられない。

「ま、その後が大変だったな」

 はは、と苦笑いだ。

 当然だが、お互い子育てなんて初めてで。ふたりとも親元を離れていて、寄る辺もなかった。

「今ほど情報もなく、知り合いに話を聞いてはいろいろ試したもんだったなぁ」

 辛さもあったが、同じかそれ以上、楽しかったな。

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