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真、娘と会う

 娘から電話があってからの休日。娘が帰ってきた。見知らぬ人間が来たからか、ふたりの姿は見当たらない。

 湯呑にお茶を注ぎ、ちゃぶ台に置く。

 少し見ないうちに化粧がうまくなっていて、自分が時間の流れから取り残されてしまっているのでは、と感じてしまった。

「向こうで知り合った同じ大学の男の子と、その家賃を節約するために、一緒に住んでて」

 俯いたまま、娘が語り始めた。

 今は簡単に同棲をするのだろうか。私が若かったころは、そんなことは……そんな奴も、いた、かな。

 学生の身で結婚していたやつもいたなぁ。

「ひ、避妊は、してた、つもりなんだけど」

 娘の肩が小さく震えていた。言いにくいことを言わせてしまっているのだな。

 だが、親として、事の成り行きを聞かねばならない。

「彼には話をしてあって、向こうの両親に話をしてくるって。その」 

 そうか。相手も親に説明に言っているのか。誠実な男のようだな。

「せっかく宿った命だし、その、あたしを生むためにお母さんがスゴイ苦労したって聞いでで」

 娘の声が濁り始めた。

 そうか、知っていたのか。私の知らないところで、妻から聞いていたのだろうなぁ。

 結婚しても、私たちにコウノトリは来なかった。

 妻は子供を欲しがったが、なかなかできず、不妊治療の末に授かったのが娘だった。

 娘を抱いた妻の嬉しそうな顔は、今でも鮮明に思い出せる。

 そうか。そうか。

 妻の写真に目を向けた。

 穏やかにほほ笑む妻は、この話を聞いたらどう思っただろうか。

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