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月夜の代行者  作者: うた
第二章
60/330

60 朝

 神社に戻って来たタエとハナは、子供と子犬姿になっているので、高龗神はじめ式神達から可愛がられた。もちろん、釋を救った事も褒められた。代行者が消滅の危機を回避できた初めての出来事は、全国の代行者を持つ神社へと知らされる。高龗神は今回の件で、代行者の管轄や一人で仕事をする事は変わらないが、近隣の代行者と協力体制を取る事が、これから増えてくるかもしれないと言っていた。

 基本、管轄外への干渉はしない事が暗黙の了解。実際、隣の県の代行者がどんな人物かを知らない者は多い。これから困難な敵は、部下の命を守る為にも、あらかじめ周りと連携を取るべきだと、神社の神は考えを改めるきっかけとなった。


 そうして、魂が欠けてしまったタエとハナは、高龗神の魂復元術をかけてもらい、ようやく元の姿に戻る事ができた。補った魂は、二人の魂で相違なく、力も記憶も二人のものだ。眷属であれば、神と魂が繋がっているので、神の記憶領域の中にタエとハナの魂のバックアップを自動で取っておけると言う。消滅してしまうと、バックアップも自動消滅してしまうが、存在している限り、魂が多少欠けてしまっても元に戻る。神様の力は、本当にすごい。




「ふぁ……」

 朝、あくびをしながらパンを食べ、テレビを眺める。ニュースでは、昨晩、関西の上空で、火の玉が出現し住民が騒然となったという話だった。


「これって……」


 タエは口があんぐりと開いている。視聴者が撮影した映像が流れる。かなり上空を飛んでいたので、バレないと思っていたのだろうが、間違いなかった。強すぎる神様の力は、隠したくても隠せないのだろうか。

「ばっちり写ってますやん。あの火の玉、大きかったもんなぁ」

 ぼそり、呟く。釋は世の中にも精通しているようだった。このニュースを見たら、大激怒だろう。一刻も早く、部下の無事を確認したかった気持ちも分かるのだが、髪の毛を逆立てて、上司に説教する姿が目に浮かんだ。

 おかしくなって一人で笑ってしまった。

「どうしたの? 面白いニュースあった?」

 母が自分の朝食を持って来た。トーストにコーヒーだ。父はもう仕事に行った。学校に行くまでに、まだ時間はある。

「ううん。あの火の玉」

「ああ、あれね。知ってるん?」

「うん。あれ、大阪の愛宕神社の神様」

「えぇ!?」

 母はトーストを落としてしまった。

「お母さんの予想が当たったよ。三重の神社で御神体が盗まれた事件、覚えてる?」

「うん」

「あれ、妖刀やったの。一人で神社から逃げて暴れてたのを、京都、大阪、和歌山の代行者皆で戦って浄化しました」

「ぶふっ!」

 飲んでいたコーヒーを吹き出す母。魂が欠けた話は心配するので言わなかったが、「なかなか強かった」と話をすると、母は目を白黒させていた。


「ただいまぁ!」

「ハナさん」

「ハナちゃんっ」

 ハナがリビングに飛び込んできた。母の所へ行き、頭を撫でてもらうと尻尾を緩やかに振る。ハナは神社の仕事が忙しくない時は、花村家に行く事を許してもらっていた。母と世間話をしたり、母と一緒に日向ぼっこをする事が何よりの楽しみらしい。

「ハナちゃんも、妖刀と戦ったの?」

「話したんやね。私は援護くらいだった。最後はお姉ちゃんと、大阪の代行者が頑張ってくれたよ」

 お気に入りのソファに寝そべり、まったりしだす。

「無事なら良いけどね」

 母はタエとハナを見て、ふぅ、と息を吐いた。タエは笑顔を見せると、鞄を持った。

「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

 母とハナが見送ってくれた。涼香と待ち合わせ、一緒に学校へ向かう。空を見上げれば、暑い夏の青空だ。セミが鳴き始めている。

「平和だねぇ」

「どしたのタエ。今日は数学の小テストでしょ。復習した?」

「あ゛あ゛!!」



 今日も良い日になるのやら。


読んでいただき、ありがとうございました!

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