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月夜の代行者  作者: うた
第三章
172/330

168 力封じの石

ブックマーク・評価・感想、ありがとうございます!

 竜杏とタエが、渡辺家に行っていた頃。



「晴明殿」

「あれか」

 鬼門付近に群がる妖怪を倒し、ハナ、晴明、煉と精霊妖怪達は力封じの術の石の前にいた。不自然に四角い石が瘴気を纏っている。

「あれを割れば! 龍爪!」

 ハナが爪を強化して石を割ろうとすると、纏う瘴気が人の形を成し、ハナに襲い掛かる。

「瘴気は実体がないぞ。ハナ殿」

「瘴気全てを呑み込めば。龍登滝!」

 ハナの水龍が瘴気を喰らう。術が籠められた石はボロボロと崩れ、案外あっさりと消し去る事が出来た。石に辿り着くまでに妖怪と戦った方が疲れたくらいだ。

「やけに簡単だな」

 晴明も訝しんでいる。それはハナも同じだった。

「とにかく石は壊した。力は戻ってる?」

 ハナが問う。晴明は札を出して念じてみた。

「……だめだ。式を呼べん」

 石を破壊しても、まだ力が戻らない。

「じゃあ、京を囲ってる術の石を、全部破壊しねぇとダメって事か?」

 煉が眉を寄せながら言った。晴明も顎に手を当て、考えている。

「それもあり得る。しかし、石が簡単に割れるなど不可解だ。道満の事だから、さらに強い妖怪でも仕込んでいると思ったのだが……」

 ハナも頷いた。

「瘴気だけだもんね。まだ何かありそう」

 晴明は、懐から一枚の紙を取り出した。平安京とその周辺の地図だ。

「石を砕いて、わずかだが力が戻っている。占いはまだ出来んが、術の気配を地図から探る事は、出来るかもしれん」

 言いながら、地図の上に手をかざし、ゆっくりと上下左右に動かしていく。

「術の気配は裏鬼門も強い。あとは、東西南北。今まで都の外側を捜索していたが、違う。四神の結界まで揺るがすつもりか」

 京は、青龍、白虎、朱雀、玄武の四つの神様を東西南北に配し、都を守護している。晴明は集中し、地図に手をかざし続けている。

四神相応しじんそうおう。彼らが守護している場所ではない。道満は、そこへは近付かなかったらしい。都の外側の通りのようだ」

「四神……。嫌な予感しかしない」

 ハナの眉間に皺が寄った。全員が同意する。

「危険因子は全て排除する。裏鬼門と四方へ向かおう」

 次の目標が決まった。晴明が指示を出していく。

「裏鬼門の方は、ここと同じだろう。精霊達に頼みたいのだが、出来るか?」

 木霊と榊の精霊は顔を見合わせ頷き合った。

「分かりました。散った仲間を集めて、すぐに向かいます」

「あいつらだけじゃ心配だ。俺も行く」

 声を上げてくれたのは、妖狐だった。彼は煉と同じく炎を使い、幻術も得意で、よく人間を惑わせていた。

「頼もしい。よろしく頼む」

 妖狐と木霊がさっと消えた。それを見届け、晴明は地図を指さした。

「西は煉、頼めるか? 火の属性は、今そなただけだが」

「任せとけ。属性を考えれば、万が一の場合、俺が適任だな」

「ああ、そうだ。次にハナ殿」

 ハナを見た晴明。

「そなたは南を頼みたい」

「了解」

 そして、一緒にいる妖怪の顔を見回した。

「土の属性の者はおるか?」

「私よ」

「おらも」

砂壺すなつぼ野槌のづちか」

 砂壺は、砂が入った壺を持つ女性の妖怪だ。銀杏いちょう色の着物を着て、腰までの黒髪を揺らしている。吊り上がった目は、とても気が強そうだ。もっと年を取ると、後に“砂かけ婆”と呼ばれるようになる。

 野槌は砂色の肌をした大蛇だった。山道を歩いていると足元に転がって来て、噛み付く妖怪だ。鎌首をもたげれば、白千と並ぶほどの大きさ。

「そなた達は、北だ。大内裏だいだいりの裏で、帝がおられる所。警備も強化している。妖怪だからと誤解を受けるやもしれん。その時は、この札を見せ、私の指示で動いていると言えば良い」

 二人に晴明の札を手渡した。真ん中に五芒星が描かれており、一目で晴明の物だと分かる。

「分かったわ」

 砂壺が頷いた。

「他の妖怪の者も、共に行ってくれると助かる」

 晴明の言葉に、側にいた妖怪三匹が同意してくれた。彼らにも札を渡す。精霊妖怪、全員の分担が終わる。

「じゃあ、残った東は――」

 ハナが晴明を見ると、彼は携えていた刀を持った。

「私が行こう」



 皆が指示された場所へ向かう。京を守る力を取り戻すための戦いが、始まった。


読んでいただき、ありがとうございました!

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