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月夜の代行者  作者: うた
第三章
168/330

164 心を一つに

ブックマーク・評価・感想、ありがとうございます!

「陰陽師の力を、封じた!?」

「美鬼さんや式神が消えたって……」


 晴明と貞光は、竜杏の屋敷に赴き、道満との会話を話した。タエ達全員、驚いている。

「封じられた時、何か感じなかったの?」

 竜杏は、素直な質問をした。晴明ほどの実力者ならば、すぐに察知しそうだからだ。

「悔しいが、何も。結界を張る時は、相手を逃がさぬよう一気に張る。壁がいきなり現れるのだ。見えなくとも、察知する事は簡単だ。だが、今回は薄い膜をゆっくり張られたようなのだ。陰陽寮でも、誰も異変に気付かなかった。式神ですら気付かせないとは、恐ろしい奴よ」

 憎らしいが、その実力は認めているらしい。

「術の発生源を破壊しない限り、私の力は戻らない」

「呪符?」

「それか、力が籠められた石、鏡、そういう類だ。鬼のように、発動条件を細かく設定する時は呪符を使うだろうが、時限装置としての結界なら単純だ。呪符以外にも籠める事は可能。発動しているから、見つければすぐに分かるはずだ」

 ふぅ、と晴明はため息をついた。

「私だけで探すのは時間が足りん。そこで、そなた達と仲が良い精霊や妖怪達に、協力を求めたいのだが」

「それは構わない。良いよね、タエ、ハナ殿?」

 二人は頷いた。

「すぐにでも取り掛からないと」

「私、皆を呼んできます!」

 タエが部屋を出て、庭に向かった。


 それを見送り、貞光が竜杏に話しかけた。

「今度の出陣の話、聞いた」

「はい」

「不吉な夢の事も聞いた」

「はい」

「俺も行く」

「はい?」

 竜杏が目を見開いた。

「誰が相手か知らんが、小隊で行くなんて無謀すぎる。俺も兵を集めて、一緒に行く。お前だけ危険な目に遭わせるわけにはいかねぇ!」

「それは有難いですが――」

「決めたからな!」

 貞光の決意の表情が、とても頼もしい。竜杏と藤虎は苦笑していたが、ハナと煉は顔を見合わせ笑顔だ。

「頼光様に、許可を取って下さいよ」

「おうよ!」


「失礼します」

 タエが戻って来た。榊の老人や、木霊、小鬼、狐や狸の妖怪達が揃う。晴明が訳を話し、力を貸して欲しいと頼むと、彼らは快く引き受けてくれた。

「ただ、相手は道満の術。危険だと思ったら、手を出さず、私に連絡してくれ。協力、感謝する」

「分かった」

 精霊、妖怪達が散らばって行く。彼らなら、すぐに見つけてくれそうだ。貞光が晴明に問うた。

「晴明も足で探すのか?」

「仕方あるまい。彼らだけ動かして、私が寝て待つわけにもいかんだろう」

 ちゃんと自分も動く。その姿勢は、彼らを軽んじている事もなく、とても好感が持てた。


「私も手伝う」


 ハナが名乗りを上げる。

「ハナ殿、良いのか?」

「ええ。昼間は時間があるし、力になりたい」

「有難い」

 晴明がハナに頭を垂れる。

「せ、晴明が頭を下げた!」

「初めて見た……」

 貞光と竜杏が度肝を抜かれている。晴明は帝も信頼する陰陽師。頭を下げるのは帝くらいだった。

「失礼な。私も感謝すれば、礼くらいするぞ」

 腕を組んで二人を見る。それでも、二人にとって先程の衝撃は、まだ冷めていない。

「いやいやいや、いつもふんぞり返ってるし」

「人を操って楽しんでるでしょ」

「そうそう。コロコロ手の平で」

「お前達なぁ……」


「ふっ」


 彼らの会話を聞いて、タエが吹き出した。全員がタエを見る。

「すいません。いつもの雰囲気に戻った感じがして」

 涙を拭っている。竜杏は、タエの笑顔を見て、ホッとした。

(いつもの笑顔、やっと見られた)

 戦への不安からか、笑顔もぎこちなかったのだ。


「あの、私もお手伝いします」

 タエが名乗りを上げたので、晴明は首を横に振った。

「いや、タエ殿は竜杏の側にいてやってくれ。戦の準備があるからな。そちらを手伝ってやって欲しい」

「そうだな。鎧と、馬具の準備もあるし。いろいろ行く所もある」

「分かりました」

 タエはしっかりと頷く。竜杏を見れば、目が合い、優しく笑ってくれた。


「問題がいくつもある。だが、いつもの我らを忘れずに、それらを全て片付け、勝利を掴もう」

「おう!」

 全員の心が一つになった。



 出陣まで、あと六日。


読んでいただき、ありがとうございました!

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