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月夜の代行者  作者: うた
第三章
166/330

162 動揺

ブックマーク・評価・感想、ありがとうございます!

「タエ、大丈夫?」


 縁側で、ぼーっと庭を見ていたタエを見つけ、声をかけた。藤虎と話し合った後だ。彼女の側にはハナと煉がいて、心配している。

「あ、竜杏……」

 首を動かし、タエは竜杏を見た。焦点を合わせて、ようやく彼の顔がはっきり見える。

「竜杏、タエが――」

「うん。分かってる」

 煉が声を上げた。竜杏もしっかり頷く。タエの隣に座り、その小さな手を握った。ひんやりと、冷たかった。

「さすがのタエも、衝撃だったみたいだね」

 今までにないくらい、動揺が目に見えていた。視線を足元に落としたタエ。ぽそりと呟く。

「予知夢もあるから、いつかは、と思ってた。けど……こんなに早く来るとは、思わなくて……」

 竜杏は、握った手に力を籠めた。

「夢の通りにならないように、今、頑張ってくれてるんだろ?」

「っ……」

 タエが竜杏を見てくれた。竜杏は、ふっと微笑む。

「今、出来る事をやろう。タエとハナ殿は、俺の生き方を変えてくれた。きっと、皆で頑張れば、運命だって変えられると思う。今夜も、呪符を探しに行くんでしょ」

「うん」

「俺は最後まで諦めない。だから、タエも諦めないで欲しい。笑顔でいてよ。下を向くより、真っ直ぐ前を見てるタエが好きだから」

 タエの手が、ぐっと竜杏の手を握り返す。

「諦めるわけ、ないじゃない!」

 眉を吊り上げ、竜杏をしっかり見た。

「私も絶対に諦めないよ。ハナさんも、煉も、皆諦めない! 絶対に竜杏を守ってみせるんだから!」

 声を出したら、一緒に涙も出てきた。タエは流れる前に拭う。

(泣かない。泣いたら負けだ。戦に、運命に負ける気がする!)

「呪符を全部見つけて、ビリビリに破いて、灰にしてやるっ」

「うん。そうしよう」

 ぎゅっと抱きしめた。タエは泣きそうになるのを、必死に堪える。竜杏も、そんなタエの様子を全て分かっていた。愛おしさが溢れてくる。

「ハナ殿、煉も」


 竜杏の長い腕が、三人をまとめてぎゅっとする。とても、温かかった。


読んでいただき、ありがとうございました!

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