162 動揺
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「タエ、大丈夫?」
縁側で、ぼーっと庭を見ていたタエを見つけ、声をかけた。藤虎と話し合った後だ。彼女の側にはハナと煉がいて、心配している。
「あ、竜杏……」
首を動かし、タエは竜杏を見た。焦点を合わせて、ようやく彼の顔がはっきり見える。
「竜杏、タエが――」
「うん。分かってる」
煉が声を上げた。竜杏もしっかり頷く。タエの隣に座り、その小さな手を握った。ひんやりと、冷たかった。
「さすがのタエも、衝撃だったみたいだね」
今までにないくらい、動揺が目に見えていた。視線を足元に落としたタエ。ぽそりと呟く。
「予知夢もあるから、いつかは、と思ってた。けど……こんなに早く来るとは、思わなくて……」
竜杏は、握った手に力を籠めた。
「夢の通りにならないように、今、頑張ってくれてるんだろ?」
「っ……」
タエが竜杏を見てくれた。竜杏は、ふっと微笑む。
「今、出来る事をやろう。タエとハナ殿は、俺の生き方を変えてくれた。きっと、皆で頑張れば、運命だって変えられると思う。今夜も、呪符を探しに行くんでしょ」
「うん」
「俺は最後まで諦めない。だから、タエも諦めないで欲しい。笑顔でいてよ。下を向くより、真っ直ぐ前を見てるタエが好きだから」
タエの手が、ぐっと竜杏の手を握り返す。
「諦めるわけ、ないじゃない!」
眉を吊り上げ、竜杏をしっかり見た。
「私も絶対に諦めないよ。ハナさんも、煉も、皆諦めない! 絶対に竜杏を守ってみせるんだから!」
声を出したら、一緒に涙も出てきた。タエは流れる前に拭う。
(泣かない。泣いたら負けだ。戦に、運命に負ける気がする!)
「呪符を全部見つけて、ビリビリに破いて、灰にしてやるっ」
「うん。そうしよう」
ぎゅっと抱きしめた。タエは泣きそうになるのを、必死に堪える。竜杏も、そんなタエの様子を全て分かっていた。愛おしさが溢れてくる。
「ハナ殿、煉も」
竜杏の長い腕が、三人をまとめてぎゅっとする。とても、温かかった。
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