平安 徒然小話④
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※ほのぼの話。本編とは、全く関係ありません。
「はい、どっち?」
「右」
貞光が右を指さした。目の前には綱と竜杏が並んで立っている。短い髪の毛をまとめて烏帽子をかぶった竜杏。着物も同じ柄。屋内にいるなら、竜杏の緑の瞳も暗くなり、綱の瞳の色とさほど変わらない。ぱっと見では全く見分けのつかない双子を前にして、“どっちが綱でしょうゲーム”をしているのだ。
晴明とハナ、煉もその場にいるが、彼らは気配で分かるので貞光の反応を見て楽しんでいる。藤虎は、タエと一緒に皆の食事の準備をしていた。
「残念でした。右は俺、竜杏です」
「っかぁ~! 間違えたぁ!!」
頭を抱えて悔しがる。晴明達は和やかに笑っている。
さささ、と入れ替わる綱と竜杏。まるで分身の術のようだ。素早く変わり、ぴたりと止まる。
「はい、どっち?」
「ううーん」
「失礼しまーす。竜杏、本家から文を預かったよ」
はい、これ。と、真っ直ぐ竜杏の前に立ち、手に持つ文を差し出したタエ。それに目を丸くしたのは竜杏本人と、綱、貞光だ。
「ありがとう」
素直に受け取る竜杏。綱はにやにや笑い、貞光は呆然としている。
「へーえ」
「綱……。気持ち悪い笑い方、やめなよ」
「タエちゃん、どっちがどっちか、ちゃんと分かってるんだな……」
「え? 分かりますけど、そういえば、何してたんです?」
タエの凄さを思い知る、貞光だった。
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