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月夜の代行者  作者: うた
第三章
146/330

143 魂魄解離術

ブックマーク・評価・感想、ありがとうございます!

 夜。


「じゃあ、行ってきます!」

「気を付けて」

「しっかりね、お姉ちゃん」

「はーい!」

 元気いっぱいに返事をして、タエが今夜も月明りの中へ飛び出して行った。竜杏とハナは、顔を見合わせる。

「じゃあ、話そうか」

「ああ」



「これが、魂魄解離術の術式が込められてる札よ。中に入ってる」

 竜杏の部屋で向かい合って座ると、ハナが彼の前に小さな巾着袋を差し出した。手の平に置いても小さい。それを受け取り、中を見れば、小さな紙きれが一枚あるだけだ。

「これが?」

「そう。術を発動させる前に、その札を飲み込むの」

「え、これを飲むの!?」

 竜杏は驚きを隠せなかった。

「この術は、竜杏だけじゃ成立しない。お姉ちゃんの協力も必要よ」

「タエの協力……?」

 頷いたハナは、少し言いにくそうだった。

「竜杏の魂を切り離したら、その切り取った魂を入れておく器が必要でしょ?」

 そこまで聞いた竜杏がはっとなる。

「その器が、タエ?」

 こくり、と頷くハナ。

「自分の中に持っておくことは出来ないの? タエに俺の魂を持っててもらうって、危険じゃないの?」

「竜杏の中にあれば、また一つに戻ってしまう。一つの器の中に、魂が二つ入ってても平気なのは、女だからなの」

 竜杏は、首を傾げた。


「竜杏の魂を入れておく場所は、子宮よ」


「え……しきゅう?」

 さすがの竜杏も、ハナの言葉の意味が分からなかったようで、何度も反復する。

「しきゅう……しき……。え、子宮!?」

「そう」

「ま、待ってよ。タエの子宮に俺の魂を入れるの!? 子宮って、赤子が宿る所でしょ!?」

 医療知識は一通りあるので、正真正銘、焦っている。

「女が魂を二つ以上その身に持てるのは、お腹の中に赤ちゃんの魂も宿せるから」

 ハナが分かりやすく説明する。

「だから、この術には、お姉ちゃんが欠かせないの。二人の気持ちが一つにならないと、この術は完成しない。無事成功したら、そのまま竜杏の魂は、お姉ちゃんの中にあるまま未来に行って、高様に復元術を施してもらう事になるわ」

「……」

 竜杏は、開いた口が塞がらない。それでもなんとか声を絞り出す。

「じゃ、じゃあ……、この術、どうやって発動させるか、聞いていい……?」

 聞きたくないような、聞いてはいけないような。竜杏の心臓はどくどくと脈打っていた。心音が耳の側で聞こえる。

「もう分かってるんじゃない?」

 吹っ切れたハナは笑顔だ。その笑顔が眩しすぎる。



「契りを結ぶしかない」



 ぱさり。


 竜杏の手に乗っていた巾着袋が、落ちた。


読んでいただき、ありがとうございました!

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