平安 徒然小話②
※ほのぼの話。本編とは、全く関係ありません。
「竜杏、ずっと気になってた事があるんだけどよ〜」
酒を飲みながら、貞光がおもむろに聞いてきた。
竜杏の屋敷で、竜杏、貞光、晴明、藤虎の四人が、酒とつまみを味わいながら、他愛もない話をしている。いわゆる、女子会ならぬ男子会だ。タエとハナは、自室で休んでいる。
「何ですか?」
竜杏が、ちらりと貞光を見る。
「ハナ様は“ ハナ殿”なのに、何でタエちゃんは“ タエ”って呼び捨てなんだ?」
「……」
「あ、それ、私も気になってました!」
動きが固まる竜杏。藤虎が目をキラキラさせて、貞光の援護射撃をした。
「私は殿を付けているぞ。神の使いを呼び捨てには出来んからな」
晴明はニヤニヤしながら、上等の酒を煽る。
「別に、特別な意味はないけど。貞光さんだって、ちゃん付けじゃないですか」
眉を寄せて、竜杏が言った。
「呼び捨てにはしてねぇぞ? ガチで神の使いだったから、やべぇ、って思ったけど。タエちゃん気にしてねぇみたいだったから、そのままだわ」
ははは、と笑っている。
「俺もそんな所ですよ。最初は変わった人間だったんで、こっちが上だと思わせる為に――ですかね。もうその呼び方で慣れたんで」
酒を飲む竜杏を見ながら貞光は、ふぅん、と頷くと、殊更ニカッと笑って言った。
「じゃあ、いつからタエちゃんに惚れたんだ?」
「ぶはっ! ゲホッ、ゲホッ!」
貞光のストレートな質問にむせた竜杏。酒が気管に入ったようだ。
「そんな照れるなよぉ♪」
「あんたが変な事言うからでしょう……。ゴホッ」
「えー? 友人として知りたいだけなんだよ」
「ただ、からかいたいだけでしょう」
「言う気ないの? いいもんね。こっちには全てを知る藤虎がいるもんねっ!」
貞光は、藤虎とがっちり肩を組んで離さない。
「なっ!」
初めて焦りの色を見せる竜杏。
「言うなよ、藤虎」
じろりと睨まれた藤虎は、苦笑した。
「主の命令ですので……」
「俺、藤虎の事かっこいいって言ってた女房、知ってるぞー」
「えっ!?」
藤虎の目つきが変わった。
「ならば、その者との相性を占ってやろう」
「本当ですか、晴明殿!?」
藤虎、陥落。
もう為す術もない竜杏。ワイワイと盛り上がる三人を横目に、酒を煽って顔が赤くなるのを誤魔化していた。
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