平安 徒然小話①
※ほのぼの話。本編とは、全く関係ありません。
「ハナ殿」
「何?」
御館様が、ハナに話しかけた。
「ハナ殿が生きてた時は、どんな一日を送ってたの?」
何となく気になって、聞いてみた。タエは、側でお茶を飲んでいる。
「普通の犬だったから、寝て、食べて、散歩して、遊んで一日終わってたなぁ」
懐かしい、と目を細める。
「お座り」
ぴっと条件反射なのか、御館様の言葉に、姿勢正しくお座りする。
「じゃあ、お手」
御館様が右手を出した。ハナはまた、ぴっと動く。
「……ん?」
首を捻る御館様。
「お手」
もう一度言うと、ハナも同じ動きをもう一度した。
「タエ……」
御館様がタエを見ると、タエはくくっと笑っていた。
「ハナさんは、ちゃんと”お手”を覚えなかったからね」
「これが楽だったんだもん」
「“お手”じゃなくて、“あご”だな」
御館様がふっと笑った。ハナは、お手と出された彼の手の上に、顎を乗せていたのだ。
「今はちゃんと分かってるから。ちゃんとお手、出来るから」
ハナが照れながら、右手を彼の手に乗せた。御館様は、ハナの頭をなでなでする。
「かわいい……」
ふさふさのしっぽを振って、御館様に撫でられ続けるハナだった。
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