1-8 会議室(2)/月兎の遊び場
女性の名前をサラに変更しました。
ロックス邸を後にする隊長とアイク。既に日は落ち街並みは夜の表情を表していた。2人が黒騎士団の会議室へ戻ると他の団員も揃っていた。
「隊長!見つけました!長髪の赤毛で月兎の遊び場で働く女性です。」
そういってヒマリが資料片手に隊長にかけよる。
「名前はサラ。家は月兎の遊び場の寮だそうです。裏町にあります。店に確認したところ、昨晩は休みで今日は出勤しているそうです。部屋に入る許可は既に取ってあります。どうしますか?」
皆の視線が隊長に集まる。
「フェイとアイクはサラの部屋へ、証拠がないか調べろ。俺とローズは店に向かう、サラとご対面だ。その前にヒマリ、被害者と子爵の調査はどうなった?」
ヒマリはすぐにタブレット端末を取り出して情報を確認し始める。
「えっと…。まず被害者ですが…彼には横領歴がありました。庭費を愛人に貢いでいたようです。一度子爵が訴えようとしましたがその後和解、訴えを取り下げています。約10年前です。
次に子爵です。子爵家自体は新しい家で30年程しかたってません。莫大な資金力で成り上がっています。特にここ10年、BR商会の医療分野は急成長しています。詳しい資料はこちらに。」
そう言ってヒマリは取り出した資料を隊長に渡した。
「10年前か。何かありそうだな。引き続き調査を続けてくれ。よしお前ら、行くぞ!」
「「「「了解!」」」」
全員は返事をし、部屋を後にした。
◇
明るい店内と大勢のお客さん、中央のステージには軽快な音楽に合わせて踊る踊り子たち。月兎を模した白と黄色の衣装はスポットライトを反射してキラキラと光っていた。
「いらっしゃいませ、月兎の遊び場へようこそ。お飲み物とご指名はどうなさいますか。」
スーツを着た男性が隊長とローズに近づき問いかける。
「俺はソーダ水、ライムを絞ってくれ。ローズはどうする?」
「では、私も同じ物で。」
隊長が煙草に火を付けるを見て、灰皿をそっと隊長の手元に置くローズ。
「指名はサラで。」
「かしこまりました。」
一礼して男性は下がっていった。
暫くしてソーダ水とサラがやって来る。赤毛の美しい女性、長い髪は編み込みの一つ結びになっている。ドレスからスラリと伸びる足が艶めかしい。
「初めまして…よね?指名ありがとう、サラよ。あら美人さんをお連れなのね。こうすれば両手に花ね。」
サラは、そう言って隊長の隣に座った。
「それでどなたかの紹介かしら?こんな素敵なおじ様と美人さん一回見たら忘れないのだけど。」
そういってサラは隊長の左腕に抱きつく。隊長は灰皿に灰を落とすと、すっとサラを見つめた。
「ベン・ロックスの紹介だ。」
そう言った瞬間、腕を抱いたサラの体が強ばる。
「そ、そう…。彼の紹介なのね。お仕事仲間かしら?」
サラはすっと隊長の左腕から離れ、机の上に置かれたお酒に手を伸ばす。その右手には包帯が巻かれていた。
「似たようなもんだ。その手、どうしたんだ?」
隊長はゆっくりと煙草を吸いながらサラを見る。
「ちょっと転んじゃって。」
乾いた笑いを浮かべながらお酒に口を付けるサラ。
その時、隊長の携帯が震える、フェイだ。
「失礼。」と謝罪して電話を取った。
「自宅から血まみれの衣類とナイフが見つかりました。刃渡り、形状共に凶器と一致します。」
「分かった。」
横目でサラを見ながら隊長は電話を切った。
ローズに合図を送り、ローズは店長に話を通しに席を立った。煙草の火を消し、ソーダを一口飲むと話を切り出した。
「最初に言っておく、俺は黒騎士団団長クラウス。少しでも怪しい動きを見せれば一瞬で拘束する。だが店に迷惑は掛けたくない。分かるだろ?」
そういって隊長はエンブレムを見せる。サラはグラスを片手に固まった後小さく頷いた。
「今お前の部屋で血まみれの衣類とナイフが見つかった。何があったか、話してくれるか。」
隊長が優しく問いかけ、サラはぽつりぽつりと真相を語り始めた。
ファンタジー世界のクラブって絶対楽しいよね