1-2 仲間
「それでは、アイク君の初任務成功を祝して、乾杯!!」
「「「「かんぱーい!!!」」」」
丸テーブルを囲む黒騎士団の5人。卓上には美味しそうな料理が沢山並んでる。
「隊長、どうでした、彼。なかなか良いでしょう?」
ビールを一口飲み、グラスを置く可愛らしい女性。誇らしげに橙色のボブヘアーが揺れる。
彼女の名前はヒマリ。幼い顔立ちに小柄な体格、それでいて女性らしい体つき。その顔に、ぱっと満面の笑みが咲き誇る。周りの人まで明るくする向日葵のような存在だ。
「そうだな、ヒマリの調査通り、素晴らしい隊員だ。」
そう答えたのが黒騎士団団長のクラウス。大柄の体格に引き締まった筋肉、顔には大きな傷跡がある。清潔感ある髪型に深緑色の眼。その眼差しはとても優しく、全てを包み込んでれる世界樹のような存在だ。
「へへへ。この部隊の支援担当ですからね。勧誘、事前調査、情報処理、備品管理なんでもおまかせあれですよ。よーし、頑張った新人君に、よしよししちゃうぞ~!」
ヒマリはグラスを置いて席を立ち、アイクを体で包み込むように撫でた。
「えっ、あっ。ちょっとヒマリさん、勘弁してください。」
恥ずかしそうに頬を染め俯くアイク。細身ながらも鍛えられた体幹、黒い髪に青い目、どこか庇護欲をそそられるような可愛らしい顔の男性だ。珍しい光魔法の使い手でもある。
「ちょっと、ヒマリ。彼が困ってるじゃない。大人しく座ってなさい。」
彼女はローズ。サラサラの青い長髪に白い肌。細身の体型にスラリと伸びる手足。冷たそうな表情も冷静沈着な彼女に相応しい。もし青い薔薇が擬人化したらこうなるだろう、そういう美しさを持つ人だ。
「もー、姉さんはそんなんだからいつまで経っても結婚できないんじゃない?ほら、良いことをしたら褒める、悪いことをしたら叱る。当然のことじゃない。薔薇の花言葉に相応しく、愛情を持って接しないと!ほら、よしよし!」
「そう。なら私は有能な隊員を発見した張本人を褒めてあげようかしら。」
ローズはガッとヒマリの頭を掴み、力を込め始めた。
「ちょ、姉さん?!割れる割れる!脳みそ飛び出ちゃうって!!」
「あら、あなたに飛び出るほどの中身が詰まってたなんて驚きだわ。ほら、出してみなさい。」
「ごめんなさい、ごめんなさいいいいい!!もう結婚出来ないなんて言いませんからあああ!!」
「フフフ、本当に仲が良いですね。仲が良いのは素晴らしいことです。思わず嫉妬してしまいました。まあ、もう座ってるんですけどね。」
彼はフェイ。白黒のまん丸い仮面に灰色のローブ。声は男性だが、中身は不明。そして使い手が彼のみと言われる変化魔法を使い、戦闘をサポートする。
「みなさんお気づきになられましたか、嫉妬と座る!我ながら面白い!フフフフ、ハハハハ、ハーッハッハッハッハ!!」
「「うるさいっ!」」
ローズとヒマリがドンとテーブルと叩き、フェイを睨み付ける。
「ヒエッ」
情けない声を上げ、思わず両手で顔を護るフェイ。
「はっはっは、どうだこの部隊は、面白いだろう。」
隊長がグラス片手にアイクに問いかける。
「はい、とても楽しいです。」
笑いながら答えるアイク。
「やっていけそうか?」
優しい声で問いかける隊長。アイクは少しだけお酒を口にすると、そっとグラスを置いた。その様子に皆が注目する。
「実は、配属が決まってからずっと不安との戦いでした。
黒騎士団は特殊です。任務も不定期で、内容も伏せられている事が多い。何でも屋・色物集団・税金泥棒と馬鹿にする人がいることも確かです。それでいて実力は一級品。
所属して本当にやっていけるのか、役に立てるのか。そういったことがぐるぐると頭の中を回っていました。
そしてそんな気持ちの中、今日を迎えました。皆さんの素晴らしい連携と実力。それを目の当たりして1つだけ分かった事があります。
『自分に出来る全力でぶつかって行けば良い』と言うことです。
実力や経験、信頼と連携。当然ですが僕には何も足りていません。ですが、いつか安心して背中を預けてもらえるような存在に・・・そうなれた時に初めて、本当の意味でのこの団の団員になれるんじゃないか・・・いつかきっとそうなりたいなと思いました。」
全員は静かに頷きながら話を聞く。そしてアイクはすっと立ち上がると頭を下げた。
「これから、ご迷惑をお掛けすることもあると思います。ですが、一生懸命頑張ります。よろしくお願いします!!!」
アイクの頭を見つめる皆の眼差しは、どこまでも優しく彼を包み込んでいった。
◇
「もーたひちょう、のんでるんですかぁ?」
顔を真っ赤にしたローズが隊長に近づき寄りかかる。
「ちょっと姉さんもう酔ったの?!」
ヒマリは驚いて思わず立ち上がる。
「たひちょう、私、結婚できないんですって。どうしますもらっちゃいますかぁ?」
猫なで声で隊長にすり寄るローズ。
「いや、俺、既婚者なんだが・・・。」
余計なことは言うまいと、ただただ冷や汗を掻く隊長だった。
流れの中でどんな人物が書きたい。けど難しい。小説って奥が深い。