1ー1 初任務
この小説を読んでいただきありがとうございます。楽しんでいただけると幸いです。
緑生い茂るジャングル、その奥地にある紫の湖。開けた場所にある紫の湖は、沸騰するかのようにコポコポと音を立てている。その畔で大蛇と4人の男女が睨み合っていた。
2メートル程の3つ首の大蛇。青肌と紫のまだら模様、真っ赤な舌がチロチロと顔を出す。大蛇は一際大きな男に狙いを付けると飛びかかった。
「世界樹のいたずら!!」
大男が十字架のような大剣を空に掲げる。はめ込まれた緑色の宝石が輝き、地面から太い木の根が生える。それはグングン伸びていき、大蛇へと絡みついた。接触面はジュウジュウと音と煙をあげ、焦げ始めた。
「長くは持たんぞ。ローズ、鑑定だ!!」
「もうやってます!」
女性の左目にかけられた片眼鏡が空色の光を放つ。
「シュラララ」
大蛇は、身を捻りながら木の根を引きちぎり、再び男へと躍り掛かった。
「種族:幻獣種、type:大蛇、属性:水・毒、内包魔力量約3万!すみません隊長、読めたのはここまでです!」
「よくやった!!」
隊長と呼ばれた大男は、迫り来る大蛇を大剣の腹ではじき飛ばす。
「ローズは距離を取り魔核露出の察知、同時に解毒・回復魔法展開準備。フェイは偽装魔法準備、タイミングは任せる。アイクは光剣状態で待機。俺が核を露出させる。
毒の強さが異常だ。解毒に時間がかかるかも知れん。絶対に攻撃を貰うなよ!」
「「「了解!」」」
大声で指示を飛ばし、大蛇と向き合う隊長。
「今度はこっちの番だ。ったく大森林に物騒な水たまり作りやがって。いくぞ、巨人の庭園!」
隊長が十字大剣を地面に突き刺す。宝玉が光り、背後に光の渦が発生する。そこから何本もの太い木の根が大蛇に襲いかかった。
「1つ!」
滑るように木の根を伝い、一瞬にして蛇の首を切り落とす。そして直ぐさま離脱する。ドロリと首が落ち、同時に新しい首が生え始める。
「感触はほぼゼリーだな。斬撃の効果は薄そうだが、再生に魔力を使ってるだろう。問題はこっちか。」
そういって剣を見る隊長。蛇と接触した刃の部分には紫の血。ジュウジュウと煙を上げて、溶け始めている。
「時間かけてると剣がいっちまう。一気に行くぞ。」
そういって再度肉薄すると、今度は3つの首を全て切り落とした。3つ目の首が地面に落ちる瞬間、再生した1つ目の首が隊長の左肩へ食らいついた。
「ぐああああああ!」
「「隊長!」」
長く鋭い牙が肩に刺さり、隊長の体にドクドクと紫の液体が注されていく。
「残念、それは偽物です。本物の贋作!!」
フェイが両手を交差させると、隊長の体がドロリと溶けた。
「フフフ、蛇だけにお目々が節穴のようですね、フフフ。」
「ナイスタイミングだ、フェイ。ったく剣ばっかり溶かしやがって。」
剣をについた血を振り払いつつ、木の陰から団長が現れる。
そしてローズが好機を知らせる。
「隊長、魔力量1万を切りました。魔核、出現します!」
大蛇の腹部が赤黒く光り、丸い球体が露出する。
「さあ、新入り。デビュー戦だ。こっちでお膳立ては完璧にしてやる。派手に決めろ!行くぞ精霊の監獄!!」
隊長は空へ飛び上がると十字大剣を真ん中の首に突き刺した。地面に縫いつけられる大蛇。剣から無数の蔓が発生し、のたうち回る大蛇に絡みついていく。そして隊長は剣を手放し離脱する。
「ありがとうございます。」
そしてその場を引き継ぐ童顔の男性。
右肩に掲げられた白銀の直剣に貯まり続ける魔力。剣の纏う白光と甲高い金属音が次第に大きくなる。巻き起こった風は、男の黒い髪をたなびかせた。視線と剣先の向かう先はたった1つ、大蛇の魔核だ。
「対象停止、誘導不要、威力増強、充填100%。」
「決めて下さい!」
「外すなよ、新入り!」
「よろしくな、アイク。」
隊長は胸ポケットから煙草を取り出すと火を付けた。
「行きます!鎧袖一触!神喰らいの光剣!!」
ひと筋の光が魔核を貫き、訪れる静寂。
パキ、パキと次第にひびが入る魔核。そして砕け散った。
格好いい技に、格好いい名前つけてあげたい気持ちはある。でも考えすぎた結果、ダサくなっちゃうこと、あるよね~。