デュクシッ!!
思い付き作品故、短編にする予定ですwww
ドラゴンが最強に位置することは、どうやら異世界でも同じであるらしい。
あるらしい、と言うのは少年――エルエー・ラーディッヒが転生人であるからで、人生初となるドラゴンとの遭遇に彼は不幸にも見舞われていた。
これは言い換えれば宝くじに当たったようなものだ。それだけの低確率でありながらドラゴンと出遭ったことは間違いなく間違いなく不幸であって。それなのに笑みすらも浮かべているエルエーに、第三者からの怪訝な眼差しがこれでもかと突き刺される。
「ド、ドラゴン相手に笑ってるとか……やっぱり異常だ。魔術師エルエーは異常者だ」
「シッ! 声が大きいって! 聞かれてたら何をされるかわからないよ!!」
――しっかりと聞こえてるんだけどなぁ。
――まぁ確かに、他の人から見れば俺は確かに異常者だ。
――でも、あのドラゴンに初めて逢えたのだからこれを嬉しいと思えないわけがない。
――こっちはドラゴンも……幻想が存在しない世界の人間だ。
――だからこれぐらいは許してほしい。ドラゴンは男のあこがれなのだから。
エルエーがドラゴンとの邂逅を果たしたのは、本当に偶然だった。
たまたま旅の途中に立ち寄った村に、突然ドラゴンが襲撃してきて、その現場に居合わせたにすぎない。
だからこうして対峙していることも、これからエルエーが討伐することも、すべては成り行きでしかないのだ。人々が完全に遠くへ離れていったのを見届けて、さて。エルエーは改めてドラゴンの方へと見やった。
ドラゴンはぐるる、と唸るだけでまだ何もしてこない。
おそらくは、獲物の品定めをしているのであろう。エルエーは思う。
ドラゴンにとって人間などという生き物はぜい弱な存在でしかない。ごくたまに凌駕するような化け物もいるが、そんなものは一握りだからびくびくと臆する必要もない。
だからエルエーもぜい弱な人間でしかないと、そう判断しているからこそエルエーはまだ殺されずにいる。脅威と判断されたのなら、もうとっくに戦闘は始まっているだろうから。
ふんと鼻を鳴らし、ようやくドラゴンが動く。
巨大な前足を上げて、エルエーを踏みつぶそうとしているのだ。
ここで傍観していたエルエーも動く。そんな細くて曲がった剣で敵が切れるのかと、散々馬鹿にされてこそきたが、今となっては彼のシンボルマークともなっているソレ――太刀をすらりと鞘から抜き放つ。
魔刃のエルエー……その呼び名の通り、彼は太刀一本でこれよりドラゴンの討伐を行う。
ドラゴンの前足が落とされた。
そこにエルエーの太刀が迎え撃つ。
普通に考えれば、この構図は圧倒的にエルエーが不利だ。かの伝説の英雄――シルメリアが持っていたとされるドラゴン殺しで名高いドラゴンキラーでもなければ、いかに名剣宝剣であったとしてもあっさりと折れてしまう。
つまりエルエーがやっていることは無謀でしかなく。自殺行為でしかないと一様に口をそろえて言うだろう。
しかし、エルエーの太刀筋に迷いはない。まっすぐと天へと昇っていく。
エルエーの太刀は大業物だ。
鞘や柄に黄金などで装飾されていることはもちろんのこと。特記すべきはその刀身にある。このたった一本を打ち出すために用いられたのは材質には世界でもっとも硬いと言われている魔亀の甲羅、その昔大虐殺を働いた末に処刑された暴虐の魔術女王の頭蓋骨、魂を売り渡し一騎当千の力を得た堕ちた黒騎士の血、後は……その他もろもろ――とにもかくにも聞くだけでもヤバい代物がふんだんに使われている。
故にエルエーの刃は魔剣として有名で、それでもドラゴンに劣らずとも勝ることもない。
では、どうしてエルエーは自信満々にドラゴンに立ち向かえているのか。
その答えこそが彼、死呟のエルエーというもう一つの呼び名の由縁にして力である。
「デュクシッ!!」
ドラゴンの前足をエルエーの魔刃が切り裂いた。
鮮血がわっと噴き出て、けたたましいドラゴンの苦痛の叫びが辺りに反響する。
これをエルエーは逃さない。体制が崩れたドラゴンへ一気に畳みかける。
「デュクシッ! デュクシッ! デュクシッ!」
デュクシ――エルエーが叫び太刀を振るえば、堅牢な城壁とすらも比喩されるドラゴンの鱗も、彼の刃の前には成す術がない。すっぱりと鱗ごと肉を斬られる度に、絶叫をあげる。
そして。
「デュクシッッッ!!」
一際大きなデュクシがエルエーの口から発せられた時。
ドラゴンの首が山の方へと向かってぽんと飛んだ。首を刎ねられて残った胴体が重い音と共に地に横たわる。その上に立ち、刀身にべったりと付着した血を払ったエルエーは高らかに太刀を掲げる。
誰がどう見ても、エルエーの完全勝利であった。