・もう理解が追い付かないです
出会ったばかりの頃の話__
__不思議な少女に、今日は出会った。
ミディアムサイズの妖艶なピンク色の髪。そして、血よりも濃いが、それでも鮮やかで目立つ、真紅色の瞳の少女。
「いやさぁ、森の奥から出てきたんだよ・・・」
怪物が出る可能性もある、セフィロトの森。そんな恐ろしい森の奥から、その少女はたしかに俺の目の前に現れた。
「それに随分と平気そうな表情で・・・さ・・・」
怪物に襲われた形跡はない。
少女からの被害も、今のところ報告はされていないため、オレの家に上げている。少女は元気よく、ただ無邪気だ。
そのせいで、家の中がハチャメチャだ。
「これどーするの? 景虎」
「・・・まだ簡単に無害とは、一概に言えない。ただそこら辺に放置するのも、それはそれで、可哀想じゃな・・・」
「うむ、ディルク」
オレを呼ぶのは、この町の町長である景虎だ。東洋の国出身者の旅人だ。好奇心旺盛であり今では町長を務めている。
「お前さん、この小娘を引き取ってはくれぬか?」
マイペースだが、飄々としている。結構発言が黒い。
「景虎・・・なぁ、コイツ世話できるのアンタでしょ」
「それに、命を落とす可能性が大きいのは、アンタ達よりもオレの方なハズだ。それに、子どもの世話なんてできない」
「控え目に言うが、コイツの世話はオレの適役じゃない」
ふふ、そう微笑む景虎。きっと意図があるのだろうけど、バカなオレには、全くもってその意図がわからない。
「助けが必要な場合は、儂達に気軽に声をかけてくれぞ」
景虎は、家から去っていく。
無邪気に遊んでいた少女は、景虎との難しい話が終わったのを見てから、オレの足元に一目散に寄ってきた。
「おにーちゃん、あの人だーれ?」
なぜだか、オレに信頼を寄せているように見える。
「・・・景虎っていう名前の、この町のリーダーだ」
「東の国から来た旅人なんだ」
東の国で引っかかる少女。けれど、全て忘れたかのように、また少女は無邪気に笑い出し、また遊び始めた。
「これ、オレがもたないタイプだったな・・・」
特にベッドが気に入ったのか、ベッドの上に座り込み、そこら辺にあるモノで、リズム感のある音楽を出している。
一方オレは、朝食がてら料理を作ろうとしていた。
「食べれるモノ・・・甘いモノがいいか?」
冷蔵庫を一回り見てみても、甘いモノは無さそう。次は台所の下の棚。でも下の棚には、調理器具しかない。
その次は上の棚。見えたのは小麦粉など。そこでパッと思い付いた。卵が二個と牛乳が残っていた。作れる。
皿を用意してー・・・。
まず小麦粉を100g、砂糖20g、牛乳100cc、卵1個をボウルに入れて、泡立て器でかき混ぜる。
・・・その前に、フライパンを弱火で温める。
かき混ぜた物が気持ち滑らかになったら、油を温めたフライパンに薄くひいた後、タネをフライパンで焼く。
「おっ、焼けてきた」
焼けてきたタネを裏返す。いい色をしている。
「・・・おにーちゃん、それなーに?」
裏返した方も焼けた頃に、少女がやってきた。
「パンケーキだ。ちょっと待ってて・・・」
裏返してみる。こちら側もいい色をしている。用意した皿に、いい色のしているパンケーキを移しかえる。
「これにバターやメイプルシロップをかけて、食べるんだ」
少女にパンケーキの乗った皿を差し出す。少女は皿を受け取ると、すぐさま机の上に置く。そして、椅子に座る。
「ほら、これがバター。そしてこれがメイプルシロップ」
「どっちをかけて食べる?」
少女はバターとメイプルシロップの両方を取った。最初はバターを少量塗り、その後メイプルシロップをかけた。
「それじゃあ、フォークとナイフ」
差し出してみると、丁寧にパンケーキを切り始める。特に難しそうにはせず、四分の一に切ったのち、食べ始める。
そして、一口食べた所で目を輝かせた。
__その後、パンケーキを三枚程度作ったんだ。その三枚とも全部、美味しそうに食べてたさ