表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

限定にしたらホクホクです

 さらに一週間が経ちました。

 一日の営業を終えた魔法工房に、一人の女性がやってきました。


 「はあーい。お久しぶり」

 「あ、エイミ。お帰りなのです」


 両手一杯のお土産を持って現れたのは、魔法工房の職人、エイミでした。

 エイミはドンの幼なじみで、ドンと同い年の二十七歳。小さい頃から絵を描くことが大好きで、美術学校で学んだ芸術家肌の職人です。魔法工房では主にデザインを担当しています。アウトドア大好きの行動派でもあり、休暇が始まると同時に、南の海へダイビングへ行っていました。


 「日焼けして真っ黒なのです」

 「いやー、この二カ月、泳ぎまくってたわ。うわ、何そのお金?」


 エイミは、スターが持っている札束に目を丸くしました。かなりの厚さで、紐で止めたら立つんじゃないか、ていうぐらいです。


 「ふっふっふ、これは今日の売り上げなのです」

 「なんと。どこかの貴族の注文でも取ったの?」

 「違うのです。時計が売れたのです」

 「時計?」


 スターは、これまでのいきさつをエイミに話しました。

 あの老紳士のために作った時計は、全部で七つ。老紳士を満足させることはできなかったのですが、時計としての出来はいいものです。せっかく作ったのにしまいこんでいてはもったいない、とスターが店先に飾っておいたのですが、それが噂になって、売って欲しいという問い合わせが殺到しました。

 もちろん、こんなチャンスをスターが見逃すはずがありません。


 「今日、オークションで売ったのです。予想の三倍の値段で売れたのです。原価はバッチリ回収できたし、儲けもバッチリ出たのです」

 「ほー。そりゃすごい」


 エイミは机の上のチラシを手に取りました。


 『後にも先にもこれっきり。七つ限定の魔法工房モデル! 早い者勝ち! オークションは本日正午から!』


 チラシには、そんな威勢のいい文字が踊っています。

 スターは、このチラシを関係各所へ配ると同時に、この町の主要な通りにある取引先にお願いして張り出しました。そして、今後、魔法工房がこんなふうに作ったものを売ることなんてないだろう、という話を、さりげなく取引先に伝えました。ここで買い逃したらもう二度と入らない、そう思わせるためです。


 「限定というと、とっても売れるのです。ホクホクなのです」

 「商売上手ねえ。で、うちの大将は?」

 「奥にこもってるのです」


 エイミが奥の工房へ行くと、山のような資料に埋もれてうなっているドンがいました。


 「はあい、マル。帰ったよお!」

 「マルじゃない、ドンだ」

 「もー、勘弁してよ、子供の頃からマル、て呼んでるだから」


 実は、ドンの本当の名前は、マルティネスといいます。魔法工房の二代目代表になったときに、先代からドンという名前も継ぎました。ですが姉弟のように育ったエイミは、ドンのことを今でもマルと呼んでいます。


 「お土産買ってきたぞ、感謝しろ」

 「おー……置いといて」


 ドンは何やら必死になって書いていました。エイミがのぞき込むと、時計の設計図のようでした。


 「それ、私だけの時計、てやつ?」

 「そうだよ……あ、これじゃだめか」


 ドンはイライラしたように電卓を叩き、設計図に消しゴムをかけました。床には消しゴムのカスがたくさん積もっていました。相当、悪戦苦闘しているようです。


 「大変そうね。できるの?」

 「魔法工房にできないものはない」


 ドンはきっぱりと言い切ると、ようやく顔を上げてエイミを見ました。


 「そうだろ?」

 「まあね」

 「ま、何とか突破口は開けそうだ。よろしく頼むぜ」

 「あら、私も?」

 「もちろん。こいつは『青旗の依頼』さ」

 「……マジ?」


 ドンの言葉に、エイミは驚きました。


 「悪いけどみんなに連絡しておいてくれないか。一カ月ほど、忙しくなるからな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ