090(裏切りと裏切り)
ーーアールはリディアに連れられて高台から少し下った所に行くと、そこはだだっ広い墓地だった。花を手向ける亜人。墓の前で泣き叫ぶ亜人。人間との戦争で殉職した兵士の墓が並ぶ。
『殉職者の墓地よ。これを見てもまだ妥協などと言うの?』
「人間にも死人は出てる。どこかで憎しみの連鎖を断ち切らないといけない。命より大切なものはない」
『そう。1つだけ戦争を止めるかもしれない方法があるわ』
「本当か!? どんな手段だ?」
『人間は私だけを追ってるけど、裏で軍を操ってるのは四天王の1人〝バルホーリー〟という男なの』
「そいつを倒せば戦争は終わる?」
『甘く見ないで。あなたでは勝てないわ。私の圧力であなたを人間殲滅の急先鋒にしたかったけど、見込み違いね』
「口約束しかしてない。俺は戦いたくないんだ。それにしてもなぜ、俺に色々教えてくれる? スパイかもしれないんだぜ」
『自分でも解らない。あなたという人となりを少しでも知れたからかも。憎しみの連鎖を断ち切る。甘い戯れ言かと思ってたけど、もしかしたら』
「そのバルホーリーって奴は今どこに居る?」
『ウエストフィールドの戦闘最前線よ』
「ワープで連れていってくれ」
『それは無理。私が国に背く事になる』
「バルホーリーって奴はどんな姿をしている?」
『人間と同じタイプよ。大柄な男』
ガシャン。アールは輪島九式からアンインストールした。
『バカなAI』
リディアはテレパシーで部下を呼ぶ。そして、脱け殻となった輪島九式を部下に鹵獲させる。敵のメーンウェポンだと言って。
ーーアールは一旦、帝釈天アールタイプの船長室に戻ってきた。フォーチュンが待っていた。
「機体はどうした?」
「捨ててきた」
「なぜ? 巫女のリディアに絆されたか?」
「聞いてたか。ならバルホーリーを倒そう」
「眉唾物だな」
「現実路線だ。戦争を止めよう」
「リュウに報告してこい。本気ならな」
「分かった。行ってくる」
ーーアールは輪島タイプにインストールしてもらい、リュウが居る戦闘最前線に急いだ。




