089(ブレイダブリク)
アールは、フォーチュンの許可を得て再び船外に出る。予備機の輪島九式にインストールしてもらった。目的は1つ。巫女のリディアと接触するためだ。勿論、その事は誰にも言わずに。
アールは帝釈天アールタイプから北西の方向に2キロメートル行く。周りに誰も居ない事をセンサーで確認してリディアを呼び出す。リディアは電子の世界に入って来れるくらいだ。アールは大声で話せば反応があると踏んだ。
「聞こえてるか! リディア! 来てやったぞ!」
『待ってましたよ。稲葉アール』
リディアがワープしてアールの目の前に現れた。ファーストコンタクトした時と同じ部族の衣装だ。
『さあ、答えを聞かせてもらいましょうか』
「着くよ。リディア側に着く」
『本気なの?』
「そっちから誘っといて。人間と亜人、双方が妥協出来る事を模索しに来た」
『私と共に歩むと決めて、双方の妥協? 笑わせないで。ここガンマスF1は我々亜人の物』
「元はと言えば人間も亜人も地球人だろ。争わないのがベストだ」
『あなた。本当にAI?』
「非効率なAIかもしれない。だからリディア、戦争を止めよう」
『AIなら敵を抹殺すると判断しそうだけど、あなたは優しすぎる』
「そうだな」
『私の手を取りなさい。ワープして本国に連れていく』
アールはリディアと手を繋ぐ。すると、ワープした。一瞬だ。アールの視界が、パッと市街地を見下ろす高台に移った。街は未来型で300メートル級の高層ビルが幾つもそびえ立っている。その隙間を大型ドローンが飛んでいた。バスやタクシーだ。
「ここはどこだ?」
『ノースフィールドの中央に位置する亜人の首都〝ブレイダブリク〟よ。私はここで上院議員をやっているの』
「リディアより強い奴は居るのか?」
『私は四天王の1人に過ぎない。他の3人は私より戦闘に特化していて強力よ』
「やベーな。人間じゃ勝てない?」
『諦めなさい。私1人にここまで手を焼いてるようでは亜人の圧勝ね。四天王が本気を出せばの話だけど』
「四天王ってヤル気ないの?」
『四天王は好戦的な者も居るけど、国王が抑えているの。代わりにあなたが人間抹殺のリーダーになってもらう』
「気が乗らない。俺は和睦を望む」
『着いてきて。人間どもに殺された亜人の墓地に案内する』




