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ルクソール・オンライン  作者: ルク穴禁
第13章(回想2。300年前)
85/91

085(リュウの転落)

竹田監督がジュニアユースの皆を集める。俺も後を着いていく。


「皆に紹介する。稲葉リュウ君だ。まだ11歳だが飛び級でユースチームに入れる。皆もリュウ君に追い付けるよう努力するんだ。以上、解散」

「「「うっす!」」」


ーー俺は正式に松本ミヤビのユースに加入した。竹田監督は目を掛けてくれている。俺の足の速さには定評がある。期待には応えなくちゃな。まだ義務教育が終わってないから寮には入れなかった。俺はがむしゃらに練習に取り組んだ。楽しい。質の高いサッカーって楽しい。


ーー俺は16歳になった。各年代の日本代表に入り、破竹の勢いで優勝をかっ浚っていった。身長も180センチメートルまで伸びた。足の速さも格段アップして、50メートル走5.7秒だ。トップチームの練習に参加しても遜色ない。期待が重圧に感じる。それが気持ちいい。


ある日。トップチームの監督が年齢を機に引退する事となった。繰り上げで竹田監督がトップチームの監督となり、俺を起用してくれた。


俺はJ3でリーグ戦デビューすると、ルーキーイヤーにも関わらず、32得点の大活躍で松本ミヤビをJ2に押し上げた。俺はその年のUー23、つまりオリンピック代表に選出された。オリンピックでは15得点の大活躍で銀メダルを獲得した。金がいいですぅ~。


ーー俺はビッグクラブのオファーを断り、松本ミヤビ一本でプレーした。セカンドシーズンは35得点の更なる大活躍で松本ミヤビをJ1に押し上げた。残りの未タイトルはJリーグ優勝のみ。カップ戦や天皇杯は優勝してる。ジャイアントキリング連発!


俺は試合中に無意識に笑ってるそうだ。そこから〝スマイリングデビル〟と言われるようになった。デビルって酷くないか? まあ、アウェーのが得点数が多いから仕方ないか。


母さんはホーム戦の時は欠かさず応援に来てくれる。何より力になる。


ーー俺は意気揚々とJ1のピッチに立つ。スタジアムの歓声が心地好い。しかし、J1は甘くなかった。カップ戦や天皇杯と違い、クラブの自力がモノを言う。ジャイアントキリングを続けなくてはならない。何とか松本ミヤビは3位に入り、アジアチャンピオンズリーグには行ける事になった。それと同じくして、ワールドカップ日本代表にも選出されて、俺は名実共にサムライブルーとなった。A代表マッチで10試合18得点の大活躍をした。


ーー俺は24歳になった。海外のビッグクラブからのオファーも断り、松本ミヤビ一本でプレーしていた。竹田監督はユースの監督に戻っていた。代わりにアメリカ人の〝フランク〟監督が指揮を執る。現アメリカ大統領の弟だそうだ。


サッカーだけをやってた俺に彼女もできた。名前は街子(まちこ)。同い年で気立てが良く、可愛い子だ。結婚を前提に付き合ってるフィアンセ。


ーーそんな時だった。俺は試合中に大怪我をした。両膝の靭帯断裂。ジャンプしてヘディングシュートを決めた時に着地でブチッ! といった。松本ミヤビとの契約は終了した。


俺は燃え尽きた。松本市の病院で手術を受け、リハビリをテキトーにこなす。病院生活はつまらん。個室だし。竹田監督やフランク監督、元チームメートもお見舞いに来てくれたが、俺はヤル気出ない。


こんなヤル気のない怪我人を雇ってくれるクラブはない。ところがエジプトプレミアリーグのクラブからオファーが来た。俺は少し頑張ってみようと少し、ほんの少しヤル気を出した。


俺は看護師の目を盗んで、屋上でウイスキーをらっぱ飲みしてタバコを吸う。やめらんねえ、この背徳感。俺は手すりに腰掛けて下を見る。怖っ。すると、声を掛けられた。


「リュウ! こんな所に居た。リハビリをしなくていいの?」

「街子。見付かったか」

「病院は全面禁煙だよ。それにお酒まで。もうサッカーやらないの?」

「エジプトのクラブからオファーがある」

「…………そう」


ーードン! 街子はリュウの背中を押して突き飛ばした。


「うわーー!」


グシャ! リュウは地面に叩き付けられた。6階建ての病院だ。致命傷を負うのは確実。


「どれだけ尽くしたと思ってたの。何がエジプトよ。私、雑魚に興味ないの。保険金は貰うからね」


ーー稲葉リュウは〝自殺未遂〟と警察に判断された。リュウは死ななかった。しかし、数年経っても意識不明のまま。未来の医療に懸けようと、コールドスリープにされた。コールドスリープはアメリカの軍事技術だ。フランク監督の兄であるアメリカ大統領に頼み込んで実現出来た。これは極秘裏に行われ、稲葉リュウは死亡扱いとなった。


ーーそして、稲葉リュウはコールドスリープのまま、帝釈天アールタイプのブラックボックスに収納された。

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