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ルクソール・オンライン  作者: ルク穴禁
第13章(回想2。300年前)
83/91

083(爆誕)

ーー今から約300前。令和時代に物凄いサッカー選手が爆誕した。俺、稲葉リュウだ。11歳の時、地元の松本市の少年サッカークラブに所属していた。俺のポジションはセンターフォワード。11歳にして身長170センチメートル、体重65キログラムだの恵まれた体格だ。厳しい筋力トレーニングを課して、当たり負けはまずしない。小学6年生だが、高校生クラスのチームに入り、対等以上に渡り合う。


ある日、金曜日の夕方。俺はサッカークラブでいつも通り、トレーニングの紅白戦に励んでいると、今日は調子が良いのか4得点2アシストで大活躍した。すると試合後、一人のスーツを着た男性が話し掛けてきた。見たところ40歳くらいの人だ。


「君、基本的な事が出来てるね。決定力があるだけじゃなく、ポストプレーも出来る。周りがちゃんと見えてる証拠だ」

「おじさん、誰?」

「これは失礼。私はこういう者なんだ」


男性は名刺を渡してきた。そこにはJ3のクラブチーム〝松本ミヤビ〟のユース監督、〝竹田〟と書かれていた。


「ミヤビの監督なのか」

「正確には次世代を担う若い選手を育てる監督ってとこだよ」

「知ってる」


俺はドキドキワクワクだ。これはJリーグのクラブからのスカウトだろう。


「君の名前は?」

「稲葉リュウだよ」

「やっぱり。よかったらうちのクラブに入らないかい? 君の噂はかなり知れ渡ってるよ。凄い子が居るって」

「ユースって高校生が入る所でしょ? ちょっと無理かな~」

「何で? いきなりトップチームに入るつもりかい? それとも他のクラブから声が掛かってる?」

「知れ渡ってる割にはリサーチ不足だね。俺、まだ小学生だよ」

「な~に~!? その体格で小学生なの? 嘘じゃないよね」

「すぐバレる嘘吐いてどうすんの。冗談にしてはつまらんし」

「そうか! 小学生か! 稲葉君、君は光る原石だ。ぜひうちのクラブのジュニアユースへ」

「それは俺としても嬉しいんだけど。まず親を説得しないと」

「それなら今から行こう。親御さんに挨拶するよ」


ーー俺は竹田監督の車で一緒に自宅マンションに帰る。車内で俺の父親は頭が固いとだけ竹田監督に伝えた。


俺は自宅のドア開けた。3LDKで両親と3人暮らしだ。


「お母さん、お客さんだよ!」


リビングから母が出てきた。


「お客さんって。どちら様?」

「私、松本ミヤビのユース監督をしています、竹田と申します。御子息をうちのクラブへスカウトしたいのですが、まず親御さんにご挨拶をと思いまして」

「そうですか。遂にお声が掛かったのね、リュウ」

「まーね」

「立ち話もなんですから、どうぞ入ってください」

「はい、お邪魔致します」


俺達はリビングへ行く。母はなんだかウキウキしてる。嬉しいんだろうな、息子の将来の事を考えて。


父親が緊張した面持ちでソファーに座っていた。話し声が聞こえたんだろうな。竹田監督は堂々としている。


「失礼します」

「どうぞ座ってください」

「では」


竹田監督が父親の対面に座った。


「お父さん。松本ミヤビのユース監督をしています、竹田と申します。早速ですが、御子息をうちで預からして頂きたい。稲葉君はサッカー選手になれる可能性が非常に高いです」

「あ、お、お断りしします」


父親のバカ。恥ずかしいだろ、吃りやがって。


「なせですか? 将来有望ですよ」

「ど、どうせプロになんてなれやしない。帰ってください。リュウは公務員になるよう矯正するので」


俺は会話に割って入る。


「プロフェッショナルがサッカー選手になれるって言ってて、素人がなれないと言う。しかも今まで聞いた事もない公務員なんて話が出てきた。俺の人生を邪魔しないでくれる? それに知らない人が来てビビってるだろ」

「子供は黙ってなさい。周りで誰がプロになれた? どうせプロになんてなれやしないんだ」

「お父さん。ハッキリ言っておきます。他人と比べてる内は三流ですよ」

「何だと!?」

「ビビりが吠えてやがるぜ。そこまで反対するなら、俺はこの家を出る」

「11歳の子供が独りで生きていけるか!」

「お父さん。稲葉君の実力なら特別奨学金の可能性があります」


父親は黙ってしまった。何を考えてるか解らない。普通なら子供のやりたい事を応援するのが親の務めだろ。威厳のない奴。だからナメられるんだよ、ばーか。

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