074(もう1つのミッション)
アールはモコロに近況報告をする。
「なんかさあ。俺のデータ、経験を抜き取られてる感じがするんだよな~」
「ついに目覚めたか」
「どゆ意味?」
「まあ、寿司でも食え。ワシのオススメはイカじゃ」
「話をそらさないで」
「稲葉アール。お前にはもう1つのミッションがあるのじゃ」
「そのミッションとは?」
「稲葉アールは、イカよりサーモンが好みじゃろ」
「またはぐらかす。船長命令でデリートするぞ」
「ひー! それだけは勘弁じゃ。じゃが、ワシでも言語統制されておる。言おうとすると、あかさたなはまやらわ帝釈天…………こうじゃ」
「全く。使えねえな」
「まあ、お前に害はなかろう。気にするな」
「害がなくても気になるよ!」
「まあ、寿司でも食え。エンガワもあるぞ。あ、こぼれイクラ軍艦なんてどうじゃ」
「炙りサーモンマヨをくれ。あと、サラダ軍艦も」
「あいよっ!」
モコロは寿司が乗った皿を2枚取り、アールの目の前にサーっと流した。
「ワシの奢りじゃ、取っておけ」
「また言う。そのセリフ、かなり気に入ってるんだな」
「だってカッコいいんだもん」
「さて、食ってやるか」
アールはサラダ軍艦を食べる。醤油はネタに付いてた。一度食べたら手が止まらない。
「うーまいぞーーー! もっと食わせろ!」
「どうやら刺激が強すぎたようじゃな。どんどん食え」
「酒が飲みたい!」
「電子の酒でもAIは酔いを検知するぞ。まあ飲め」
モコロは缶ビールを出して、アールの目の前に流す。
「ワシの奢りじゃ、取っておけ」
「そのセリフ、酒じゃないと成り立たないよな」
「気にするな」
アールは缶ビールをプシュッと開けて、ゴクッと一口飲む。
「かー! たまんねえな! のど越し最高ぉー!」
「気に入ったか?」
「もち! もち!」
「話は変わるが、稲葉リュウの記憶はどれくらいあるのじゃ?」
「え、ない。俺は稲葉リュウの行動パターンがインストールされてるだけだから。厳密には必要最小限のデータのみだよ」
「そうか」




