065(ロシアンクオリティ)
ーー訓練開始から1時間。カーマインは何とか立ち上がり、コケる事なく、ゆっくりだが歩けるようになった。カーマインは筋が良い。しかし、カーマイン以上に慣れた男がいた。もう走ったり、バク宙が出来る。その男の名は〝ウラジーミル〟ロシア人だ。輪島九式のしなやかな人工筋肉を動かすコツを掴んでいる。
訓練は休憩に入った。カーマインがウラジーミルに話し掛ける。
「俺は帝釈天アールタイプの船員のカーマイン。アンタ、凄いな。もう会得してるよ」
「色の名前だな。俺はウラジーミル。ロシアの至宝だから会得も早い」
「スーパーモードもすぐに覚えるかもな」
「スーパーモードってなんだ?」
「俺はこの目で九式の戦闘を見てる。ロン大佐はまだ教えるつもりはないのだろうけど、人工筋肉を極限使用する技だよ」
「本当に輪島九式の戦闘を見たのか? 夢でも見てたんじゃないの」
「俺は地底人殲滅部隊のリーダーをやってた。地底人のラスボスは帝釈天アールタイプのAI船長、稲葉アールが九式を駆り、倒した」
「ほう、俺より出来ない奴が殲滅部隊のリーダーか。俺が輪島九式の操縦をマスターしたら、AI船長はデリートお払い箱だな」
「お前、さっきからウザいぞ!」
カーマインがウラジーミルに殴り掛かったが、簡単に避けられて足を引っ掛けられ転ぶ。珍しく熱くなるカーマイン。差を付けられて悔しかった。ウラジーミルはマウントを取られたような気がして喧嘩腰になった。
「その程度か、殲滅部隊のリーダーさんよ」
「この……!」
「そこまでだ、二人とも! 九式を操縦させんぞ!」
ロン大佐がケンカの仲裁に入る。
「人間同士で争ってどうする。敵は宇宙人だぞ。分かったな?」
「コイツが先に手を出してきた」
「ウラジーミル、お前は操縦の筋は良いが人間性に難ありだな。カーマイン、お前は挑発に乗るな。二人とも頭を冷やせ」
「チッ」
バタン! ウラジーミルの輪島九式が舌打ちと伴にぶっ倒れる。1時間の訓練で調子に乗って操縦し、疲れが出て強制アンインストールとなった。ロシアの宇宙船〝イワン・イワノフ〟へと戻る。ロン大佐はやれやれと言った感じだ。
「調子に乗りおって…………。ウラジーミルは脱落した! 残り4人で訓練を続ける! いいか! 慣れない間に精神を酷使すると気を失うぞ! 心して掛かれ」
「「「はい!」」」
1時間後。カーマインは徐々に慣れてきて、バク宙2回転が出来るようになった。他の参加者も走ったり、ハイジャンプしたり出来るようになった。
「よーし、お前ら。かなりモノに出来たな。今日の訓練はここまっ……」
ドカーン! 突然、宇宙戦艦トマトの右舷の1ヵ所が爆発した。ドックにも微量の外気が入る。ロン大佐は宇宙服を着てない。




