063(戦勝報告)
ーー拠点制圧部隊がグレイの街に戻ると、ジョンがゲートを開ける。長老をはじめ街の住人が喜びと共に迎え入れてくれた。拠点防衛部隊に被害は出てない。街は無事だ。
『長老、勝ったよ。地底人を殲滅した』
『リーダー、よくやった。今日はパーチーじゃな』
『それよりミカエルが。多分、内臓をやられてる』
『いかんな。ワシの家まで連れてきなさい』
ジョンはミカエルを抱き抱えて長老の家に入る。ミカエルの治療が始まった。
アールはフラフラしてる。バイオレットが気遣う。
「アール君、大丈夫? フラついてるけど」
「さっきから熱中症みたいな感覚だ。九式ってAIでも使いこなせないのかな。戦闘後に疲れを検知するって聞いてたけど」
「休みなよ」
「うん。アンインストールして、ちょっと寝る」
バタッと輪島九式が倒れ込む。アールはアンインストールして帝釈天アールタイプの船長室に戻る。モコロが独りバーベキューをしていた。これも電子の世界の産物だ。
「お帰り~。バーベキューやっておるのじゃが、独りじゃつまらん。お前もどうじゃ?」
「眠いから寝る」
「睡魔に襲われるAIなんて珍しいのう。随分と酷使したのじゃろう」
アールは電子の世界の布団を出して寝付く。
「輪島九式の負荷は相当のものじゃな。通りでサーバーが熱を帯びてるはずじゃ。省電力モードにするからゆっくり休め、稲葉アール」
モコロは独りバーベキューを続けた。
ーーカーマインはジョージに戦勝報告をする。
「こちらカーマイン。勝ったぞ。地底人を殲滅した」
「ご苦労。多少の被害は大目に見よう。輪島九式のダメージはどれほどだ?」
「アールをデリートするつもりか? そうはさせんぞ」
「奴にはまだ働いてもらう。安心しろ」
「本当だな?」
「私は能力主義者だ。輪島九式の被害状況は?」
「左腕が破損してる。それとターボガンは地底人に破壊されて回収不可能」
「興味深いな。カーマイン、お前を輪島九式の訓練に推挙しよう」
「俺にもあの戦闘能力が…………。分かった。参加させてくれ」
「訓練は明日始める。宇宙戦艦トマトのドックにある機体にインストールしろ。では通信を終える」
カーマインはワクワクしてる。輪島九式の戦闘を目の当たりにしたからだ。その力が自分も手に入る。テンション高めで戦勝記念パーティーの輪に戻った。
楽しい宴も終わり、カーマイン達はグレイの街から撤収する。もうグレイ達を悩ます問題は解決した。輸送機、補給機が飛び立った。カーマインは大型ドローンに乗り込む前にジョンと握手をする。
『ありがとう、カーマイン、皆。アールにもよろしく伝えてくれ』
「ジョン達も勇気ある戦士だ」
『にゃ~ん』
「ミカエル。もう大丈夫なのか?」
『ミカエルはタフだ。安心してくれ。また会おう、カーマイン』
「ああ、またな」
異星人同士の友情が生まれた。




