058(戦況を変える男)
戦況は劣勢だ。グレイのレーザー光線ライフルでも地底人には大したダメージを与えられない。次々と鉄柵を乗り越えてくる10体の地底人。カーマインは悟った。ここまでかと。その時だった。ズドン! ズドン! 上空から1機の見慣れないロボットが火器を発砲して地底人2体の頭を吹き飛ばした。力なく崩れ落ちる地底人の死体。ロボットはパラシュートを切り離して着地した。
「言われた通りスゲーな。流石〝輪島九式〟だぜ」
輪島九式と言った機体は青色のボディーにスレンダーな骨格で身長2メートル。輪島七式、八式と違い機動力が高い。それは腕や脚などに人工筋肉をエックス状に編み込まれている物を使われているからだ。それにより軽量でしなやかさも併せ持つ。武器は50ミリメートル大口径ライフルで弾丸は劣化ウラン弾を使用する。通称〝ターボガン〟だ。携行レールガンはコンデンサの容量により本来の火力が出せないから地底人にはダメージを与えにくい。レールガンは外部コンデンサに繋いで撃つ物だが、それだと輪島八式では携行出来ない。ターボガンは輪島七式のロケット砲やミサイルより強力だ。
ズドン! ズドン! 輪島九式はもう2体もヘッドショットした。それを見た地底人達は撤退した。
「ふ~、疲れるな。流石、九式だぜ。負荷が凄い」
カーマインが輪島九式の操縦者に話し掛ける。
「ありがとう。助かったよ」
「何言ってんだよ、仲間だろ? な、カーマイン」
「俺を知ってるのか。誰だ?」
「アールだよ」
「アール!」
ーーアールは帝釈天アールタイプの散策を終えて暇をしていた。モコロの提案で宇宙戦艦トマトの散策に出掛けた。輪島八式にインストールしたつもりだが、間違って上位モデルの輪島九式に入ってしまった。戦艦内で増産中だが、それでも稼働出来るのは数機しかない奥の手だ。ジョージは輪島九式の運用にネガティブだったが、地底人のボスの事もある。アールはドックの現場監督から許可をもらって大型ドローンで哨戒部隊が展開している所まで運ばせた。移動中、アールは輪島九式の仕様を学ぶ。AIのサーバーに大きな負荷が掛かる。戦闘になれば重力が弱くなったかのような身体の軽さを感じるが、戦闘が終わると、ドッと疲れを検知するという。アールが説明をじっくり聞いてると、丁度戦闘が始まり、アールは瞬時に戦況を理解し、大型ドローンからパラシュートで飛び降りて、地底人のボスを撃ち殺した。
グレイ達がアールを取り囲んで胴上げを始めた。
『『『ばんざーい! ばんざーい!』』』
「善きに計らえ」
アールはちょっと調子に乗ってる。ヒーローになれて心地好い。これが自我を持ったAIだ。
被害は輪島八式が10機戦闘不能。輪島七式が3機戦闘不能。グレイが5体死亡。バイオレットも戦闘不能になったからアンインストールされて、帝釈天アールタイプに戻った。グレイのリーダーは感謝する。
『グレイのリーダーを務めてる〝ジョン〟と言います。地底人から助けてくれてありがとうございました』
胴上げが終わると、アールは立ち上がった。
「いいって事よ。俺は宇宙人と友好的にしたい」
『本当にありがとうございました』
「カーマイン、地底人以外に懸念材料はあるか?」
「ないよ。それにしても凄いな。武器一丁で地底人のボスを退けてしまうとは」
「これが輪島九式だ。フッフッフ」




