056(牛飼い)
ーーその頃、ジョージは調査部隊に指示を出して地底人の遺体を宇宙戦艦トマトに運び込ませた。解剖の結果、地底人と人間の臓器はほぼ一致していて遺伝子も99.6パーセント一致した。チンパンジーより人間に近い生物だ。それとウエストフィールドの大気は地球と99.99パーセント一致した。人間が呼吸しても大丈夫だが、念のため隊員には宇宙服を着て活動するように通達した。
宇宙戦艦トマトから北の方に展開している哨戒部隊が警戒に当たっていると、牛によく似た動物が群れをなして川の水を飲みに来た。その様子を二人の輪島八式が見に行く。
「モゥ~」
「牛か?」
「牛だな。和牛並みに美味いかもな」
哨戒部隊が雑談をしていると、牛飼いとみられる二足歩行の高等生物に遭遇した。見た目は大きな頭に大きな目、全身灰色で身長は150センチメートルほど。まんまグレイだ。哨戒部隊の二人がマシンガンの銃口を向けると両手を挙げた。抵抗する様子はない。
『撃たないでくれ』
「翻訳機能が使えるな。他に仲間は?」
『ここから北東の街で暮らしてる。アンタら噂の宇宙人だろ? 我々はアンタらに危害を加えない』
「そう言われて地底人に仲間を殺された」
『我々はあんな低知能な連中とは違う。我々は地底人と敵対関係にあった』
「根拠は?」
『どう証明すればいい? 俺はただの牛飼いだ』
「取り敢えず、街まで案内してもらおうか」
『分かった。但し…………』
「なんだ?」
『牛が水分補給するまで待ってくれ』
「いいだろう」
二人の隊員は本隊に連絡をして、応援部隊を寄越してもらった。輪島七式、八式の部隊で、リーダーはカーマイン。バイオレットがリーダー補佐となる。
「モゥ~」
牛達は十分に水を飲み、牛飼いの指示に従って街に向かって歩き出す。その後をカーマイン達が着いていく。
街が見えてきた。隊員はロボットにインストールされてるとはいえ、身構える。街は未来型ではなくコンクリートを主とした建物が並んでる。街全体を高さ50メートルの鉄柵でぐるりと囲んでいた。
牛飼いは街の中にある牧場へ牛を誘導して仕事を終えた。カーマインは牛飼いから教えてもらう。
「一番偉い人に会わせてくれ」
『ここに』
「え?」
『俺がこの街のリーダーだよ』
「冗談だろ? ただの牛飼いじゃないのか」
『その通り』
宇宙人のリーダーの元へグレイが集まって来た。1体の長老が話し掛ける。
『リーダー、そのロボットの兵隊は何じゃ?』
『客人だ。もてなしてやってくれ』




