048(宇宙の旅へ)
ーー数ヵ月後、人類の叡智が結集した。宇宙船はほぼ完成している。後は人類選別のみ。18歳から50歳までの健康的な者の中から抽選となった。それから少しだが裏ルートで各分野の秀でた者を指名という形で乗船させる事になった。
輪島博士本人は76歳と高齢で持病もある。抽選の対象にならなかった。裏ルートでも弾かれてしまった。必要なのは労働者。頭脳はAIで十分ということで、輪島博士は乗船できなかった。しかし、諦めてない。輪島博士には奥の手があった。まだ論文にもまとめてないが〝切り札〟だ。アルバート・アインシュタインに夜露死苦。
カーマイン達が通う大学も乗船白紙となり、帝釈天アールタイプに乗船できるのは、日本に居住する健康な者から抽選になった。バイオレットは抽選に当たった。カーマインを心配するバイオレット。カーマインが腹を括った時に奇跡が起きる。裏ルートの候補となり、乗船が許可された。輪島博士のゴリ押しだ。
カーマインとバイオレット、他の乗船者を乗せた飛行機がルクソール国際空港に到着した。ここからバスで20分ほど行くと完成した宇宙船が9機並んでいる所だ。アメリカの先行隊はもう出発した。
ルクソールの気温は日中60℃まで上がっている。だから少しでも気温の低い冬の夜に移動する。熱波が続く砂漠地帯では気休め程度だ。
ーー各宇宙船は数ヵ月をかけて船員と物資を積み込み、いつでも飛び立てる状態となった。宇宙船の形はほぼ長い円柱だ。それを6個にまとめて大気圏離脱をするので、ガンマスF1に行けない作業員達の間では〝ガーリック〟と揶揄されていた。
カーマインとバイオレットのコールドスリープのカプセルは隣になった。三等船室だ。全船員はAIの指示通りにカプセルに入って眠りに着く。するとカプセルの装置で注射を打たれる。これはナノマシンだ。250年も眠り続けるのだから死なない程度の栄養素が必須だ。そしてカプセル内が冷却されてコールドスリープは完了。
宇宙船は無事に全機、大気圏離脱をした。そして火星の引力を使い、燃料を節約。それから光の半分のスピードまで加速してガンマスF1を目指す。船内の灯りが消えて、AI船長のアールも節電モードに入り、眠りに着く。長い船旅が始まった。




