045(放火魔)
ーーアールは船尾の五等船室Cブロックに向かう。近くの火器を装備してない輪島八式にインストールしてもらった。ブレードとセンサーは着いてる。パトカーと同じ白黒のツートーンカラーだ。胸と背中にポリスと書かれている。
アールがCブロックに入ると煙と消火剤が立ち込めていた。コールドスリープのカプセルが1000個ほど並んでおり、その1つが燃えた。船員の一人がアールに話し掛けてきた。30代のお姉さんだ。
「お巡りさん、火事です」
「火が出るところを見たか?」
「食堂から帰って来たら煙が出てました。多分、消火剤が撒かれた後だと思います」
「そうか。貴女、名前は? 日本人っぽくないけど」
「ウィスパー・タンクです。地球では英語教師でした」
「ウィスパーさん? 久しぶりだね」
「え、知り合いが操縦してるの?」
「俺だよ。AI船長のアール」
「ルクソール・オンラインで同じギルドだったアールさん?」
「そうそう。犯人を見なかった?」
「犯人て。まさか放火なの?」
「そうだよ」
「私は見てないです。ただ…………」
「ただ?」
「燃えたの私のカプセルなんです」
「一応、任意同行してもらう」
「私を疑ってるの?」
「半々。被疑者であり、保護の対象でもある」
アールの他に応援のAIポリスと3体とAIファイアーファイターが2体来た。ウィスパーはAIポリスに連れられて船内の交番に行った。アールはウィスパーが犯人とは思っていなかった。カプセルが使えなくなって一番困るのはウィスパー本人だ。すると、モコロからアールに通信が入った。
「稲葉アール、急げ」
「また火事か?」
「五等船室Cブロックから船尾の方に行くと物資貯蔵庫になっておる。そこで不審火じゃ」
「分かった」
「貯蔵庫には食糧が積まれておる。燃えると大変じゃ」
「自動消火剤は?」
「今、作動した。その先は袋小路じゃ。犯人を捕まえろ」
「任せろ」
アールは2体の消防機を連れて貯蔵庫に入る。ドアが壊されていた。電気が点いていない。アールの視界が暗視モードに切り替わる。中には物資が包装され、うず高く積まれている。水や野菜、魚、肉などだ。近くにフォークリフトもある。消火剤と煙で視界が悪い。アールはビームブレードを構える。
「逃げ場はないぞ!」
返事はない。アールは消防機1体を出入口に置き、もう1体と一緒に奥へ進む。アールがセンサーを使うと10メートル先に人影が見えた。怪しいのはコイツだけ。
「来るなー! 来たらまた火を着けるぞ!」
「追い詰められてトチったか。行け! ファイアーファイター!」
「はっ!」
アールに聞き覚えのある声だった。その正体は。
消防機が犯人の首根っこを掴んでアールの前に連れてきた。消防機は放火犯の道具を取り上げていた。その手にはオイルライターがある。そして、犯人の正体は杉山だった。
「どこまでも迷惑な奴だな、杉山」
「俺は犯人じゃない! 火なんて着けてない!」
「逮捕する。正直に白状しないならガンマスF1に着く前に宇宙空間へ放出してやろうか」
「う…………俺がやりました」
ーー杉山は逮捕されて、船内の拘置室に放り込まれた。オイルライターから杉山の指紋が検出され、やはり犯人は杉山だった。




