044(火災発生)
ーーその頃、帝釈天アールタイプでは船員の本格的なウォーミングアップが始まった。まずは食事を摂ること。コールドスリープのカプセルの中ではナノマシンが体内で栄養を作っていたが、使用期限の切れる頃だ。段階的に300万人が各所にある食堂へ案内され、経口ゼリーから始まり身体の消化器系を慣らす。3割の船員が吐き戻した。
宇宙船は約120光年を250年ほどかけて移動した。ガンマスF1に着くのは後1年くらいだ。長い年月を眠り続けた。船員には色々とやる事がある。
次に体力作りだ。軽めの有酸素運動から始まる。カーマインとバイオレットも指示通り身体を動かす。二人は横並びでウォーキングマシンに乗る。
「アール君、元気かな」
「AI船長だからどこかで見てるかもな」
「だといいけど」
「アイツはルクソール・オンラインの秘密を知ってるはずだ。何でプレーさせたり、いきなり止めさせたりするのか。解せない」
「何か事情があるんだよ」
アールはモコロと一緒に船員の様子を見ていて、カーマインとバイオレットの会話を聞いていた。アールはスピーカーから話し掛ける。
「よっ。バイオレット、カーマイン」
「アール君?」
「アール。やっぱり監視していたか。なぜゲームをやらせたり、急に止めさせたりするんだ?」
アールは二人に説明する。最初のルクソール・オンラインはコールドスリープから目覚めるためのウォーミングアップ。モンスター退治はガンマスF1の宇宙人を抹殺するために輪島タイプを遠隔操作して、イーストフィールドで戦ったリアルの戦場。
「……という訳だ。分かってくれたかな?」
「大体分かった。しかし、宇宙人の戦力は強かった。人間では勝てないだろ?」
「そのためにイーストフィールドのボスと話し合って、ウエストフィールドの土地を全て人間にくれると妥協してくれたんだ」
「それでいきなり輪島八式が操縦出来なくなったのか」
「バイオレットとカーマインは宇宙船の指示に従って身体を慣らしてね。今はそれがミッションだから。困った事があったらいつでも言ってくれ」
「アール君、ありがと。後1年でガンマスF1に着くのよね? それまでに頑張って体力付けるよ」
「じゃ、またな」
アールはモコロと一緒に船員の観察を続ける。ピピピ、ピピピ。
「大変じゃ、稲葉アール」
「何事だ?」
「船内で火事が起きた」
「まずいな。消火活動は?」
「自動で行ってくれる。しかしこれは不審火。放火じゃな」
「何? 犯人を捕まえないと」
「船尾の方じゃな。五等船室のCブロックじゃ」
「俺が行く」




