043(綱渡り)
アールはスマートモンキーに頼み、宇宙戦艦トマトのブリッジと繋いでもらう。スマートモンキーは〝上手くやってくだせえ〟と言った。アールはその真意を理解していた。
「こちら帝釈天アールタイプのAI船長、稲葉アール」
「こちら宇宙戦艦トマトの艦長、ジョージ。何か動きがあったか?」
「この大陸、イーストフィールドのボスに会うため、敵陣に潜入していた。戦闘を止め、友好に舵を切れば別の大陸、ウエストフィールドの土地を全てくれるそうだ。どうする?」
「宇宙人と住み分けろというのか。悪い話ではないな。宇宙人に人間の兵器では劣勢だ。ここらが妥協点か」
「そうなれば帝釈天アールタイプとしても助かる」
「助かる?」
「いや、何でもない。ここイーストフィールドから撤退してウエストフィールドに移動してくれ」
「コンプライアンスは守っているな?」
「勿論だ」
「分かった。日本人は真面目だ。信じよう。イーストフィールドから撤退してウエストフィールドに戦艦を移動させる。ご苦労、稲葉アール。実はかなり手こずっていたのだ」
「宇宙人の戦力が強力過ぎたか。では失礼する」
ジョージは全体に撤退命令を出す。カーマイン達や他の国のプレーヤーも大型ドローンに収納され、宇宙戦艦トマトのハッチに入る。輪島タイプを操縦していた各国のプレーヤーは意味が解らないままだ。そして遠隔操作は終わり、各国の宇宙船のコールドスリープカプセルで目覚める。
外に出ていた宇宙戦艦トマトの隊員の点呼に3時間を要し、各人員物資を収納してウエストフィールドに向かって飛び立つ。
次第に見えてきたウエストフィールドの大地。ジョージは無人探査機を四方に送り飛ばした。そして映像が送られてくる。
「街、人工物があるな」
ナビゲーターの女性隊員が解析をする。
「ずいぶん朽ちてますね」
「妙だな。気候も悪くないのに生き物が寄り付かないようだ」
「どうします?」
「取り敢えず、着陸出来そうな所を探してくれ」
「1時の方向、2マイル先に平地があります」
「そこでいい。着陸体勢に入れ」
「「「イエッサー!」」」
宇宙戦艦トマトが着陸すると、再びブリッジは沸き立つ。ジョージは違和感を覚えながらも偵察部隊を組織する。極東部隊は壊滅した。生き残りのエイブラハムを隊長にした北欧部隊が組織され、朽ちた街を大型ドローンで目指す。




