030(イタリアとフランス)
ーーアールとモコロは先行隊の様子をモニターで観ていた。アールはモコロに色々質問する。
「宇宙人が居たら殺しちゃうのか? 出来るなら友好的にしたいけど」
「その裁量は宇宙戦艦トマトの艦長、ジョージに懸かっておる」
「そういや帝釈天アールタイプって無重力じゃないね。AIでも重力を感じる。いや、検知か」
「各宇宙船には重力発生装置が備わっておるのじゃ」
「日本の宇宙船なのに、ウォーミングアップのゲームはルクソール・オンライン。ルクソールってエジプトの観光地だよな」
「宇宙船の部品は世界各地で製造されたが、仕上げはエジプトで行われたのじゃ。だからじゃろう」
「宇宙空間で造らなかったのか?」
「そりゃそうじゃ。だってガンマスF1に着いたら大気圏に突入しないといけないしな。勿論、世界各国の宇宙船がエジプトで造られた」
「納得」
ピピン。他の宇宙船から連絡が入った。
「大変じゃ、稲葉アール」
「どうしたの?」
「フランスの宇宙船とイタリアの宇宙船が座礁したようじゃ。帝釈天アールタイプに救難信号が送られてきた。先を急いだようじゃな」
「仲悪いから~」
「フランスとイタリアの宇宙船、どちらを助ける?」
「両方」
「だろうな。しかし、遠回りは帝釈天アールタイプの燃料を食うぞ」
「やベーな、究極の選択か。宇宙空間で座礁したって事は隕石かな?」
「岩石群じゃろう。どうする?」
「俺のメモリーにはどちらも親日国とあるし、決められないよ」
「じゃが一番近いのはワシらじゃぞ。300万キロメートル後方にイギリスの宇宙船がおる」
「じゃあイギリスにも助けてもらおう。帝釈天アールタイプから近い国はどっちだ?」
「イタリアじゃ。帝釈天アールタイプから10万キロメートル離れておる。フランスは13万キロメートルじゃ」
「宇宙船のダメージは?」
「人的被害は出ておらんようじゃ。帝釈天アールタイプで牽引しなくてはいかん。急げ、稲葉アール」
「分かった」
アールは帝釈天アールタイプの軌道コースを変えてイタリアの宇宙船を目指す。ダメージは深刻なものだった。船首と船尾のブースターに岩石が衝突していた。フランスの宇宙船も似た所をやられている。イギリスの宇宙船も救難に向かうために軌道コースを変えた。
帝釈天アールタイプがイタリアの宇宙船、エンツォ・フェラーリに到着して周りに隕石がないことを確認し、前方から牽引ワイヤーを取り付けた。イタリアの宇宙船のAI艦長、エンツォからアールに通信が入る。
「こちらエンツォ・フェラーリ艦長のエンツォ。帝釈天アールタイプ、ありがとう。流石同盟国だ。助かる」
「このままガンマスF1まで引っ張って行く。フェラーリだからって飛ばしすぎだ」
「済まない。フランス人の宇宙船、エッフェルは大丈夫か」
「グレートブリテンが助けてくれるそうだ。心配するな。仲良くしろよ?」
「ああ」
帝釈天アールタイプはエンツォ・フェラーリを牽引して軌道コースに戻る。燃料を2パーセント消費してしまった。




