001(ログイン)
スマホの仕様で若干読みづらいかもしれません。
VRゲームとSNSを組み合わせたお話です。変幻自在なデスゲームにようこそ。
稲葉アールはニートだ。毎日、酒を飲みながらSNSゲームに入り浸る。暇すぎるから、ルクソール・オンラインという新作VRSNSゲームをインストールしてログインしてみた。前評判でクソゲーと名高いが、怖いもの見たさで課金購入する。
アールは、チュートリアルをテキトーにスキップした。取り敢えず、ログアウト方法は確認して。自分の意思で10秒間、両目を閉じるだけだ。そして、プレー開始だ。覚書に〝後戻りは出来ません〟と煽るような文言が出た。
近未来の廃墟が建ち並ぶディストピアなエリアに、アールは降り立つ。上部が崩れたビルディングから配管むき出しになっている。
ルクソール・オンラインはVRのソーシャルゲームだ。他のユーザーと交流して世界にプレー状況を発信しながら、様々なVRゲームが遊べる。バイタルを登録して基本的なステータス、アバターが決まる。さらに、課金すれば能力を上げる事もできる。ガシャもあり、武器やお助け道具等のツールが手に入る。ゲームによっては互換性のない物もある。1回3000円。11連ガシャなら3万円。初回11連なら2万円だ。アールは課金もガシャもしない。
〝一度でもダイになったら、プレーヤー自身のリアルの肉体も死にます〟
「は? それっぽい煽り文句だな」
アールの視界にページが開かれ、ダイになったら、死ぬと書かれていた。一旦、ログアウトしてみる…………してみる…………してみる…………。
「ログアウト出来ねえ! チュートリアルでログアウト方法を確認してる。何で?」
アールは、更に目を閉じる。VRゲームに閉じ込められてるから意味はない。アールは誰かに本当のログアウト方法を教えてもらうべく、エリアを移動する。ちょうど、エリアとエリアを繋ぐ通路に1人のプレーヤーが居た。
「おい、あんた。ログアウトするやり方知らない?」
「判らない。閉じ込められた。どうしよう、どうしよう」
「何をオロオロしてるんだよ。1つでもゲームをクリアしたら、ログアウト出来るかもしれないな。根拠はないが」
「死んだら終わりだよ」
「死なないゲームをすればいい。取り敢えず、人を探そう」
「それなら、32番フィールドへ行くといい」
フィールドは全部で1万。1つのフィールドに100個のエリアがあり、自由に行き来できる。アールが居るのは8番フィールドだ。
「32番フィールドに集まっているんだな? 行こう、あんた。ハンネは〝ライガー〟か」
アールが初めて会ったプレーヤー、ライガーはオープンスコアにした。これでステータスやプロフィールが見れる。
アールは歩き出すが、ライガーはその場から動こうとしない。
「おい、何をやってる? 急ごうぜ」
「僕はいい。君だけでも…………無事に出れるといいね」
アールはマップを見ながら1人でフィールドを変えるワープホールに行く。エリアの中央だ。何人か、プレーヤーとすれ違うが、皆固まっている。
アールは32番フィールドへワープする。視界が緑色の光に包まれて、階を移動した。そこは、プレーヤーでごった返していた。数十万人、数百万人は居る。クソゲーの割には盛っている。
1人のプレーヤーがアールに声をかけてきた。相当、課金してるのだろう。きらびやかで、チャイナドレスみたいなのを着た女性のアバターだ。アールは初期設定の地味な戦闘スーツ……財力が違う。
「君も閉じ込められた? 脱出方法は判るかな?」
「いや、判らない。それを調べるために32番フィールドへ来た」
女の子のハンネは〝バイオレット〟だ。アールはオープンスコアにする。
「君のハンネは、アールね。他のゲームの戦績が凄い」
「まあ、暇人だからね」
「おーい、バイオレット。フィールドをくまなく調査しに行くぞ」
他のプレーヤーは別の方法で脱出を試みるようだ。
「どうせ、ログアウト出来ないなら、テキトーに遊ぶよ。ね、アール君」
「ゲームをクリアしたら、ログアウト出来るかもな」
「なるほど。でも、死んだらマジでヤバいかもよ?」
「死なないゲームをすればいい。サッカーなんてどうかな」
32番フィールドに集まっていたプレーヤーは次第に散り散りに去って行った。