本当の愛
初めてなのでお手柔らかな評価をお願いします笑
俺(荒木裕太)には大学生の姉ちゃん(荒木香織)がいる。
姉「裕太はよ起きて!学校遅刻するよ!」
俺は欠伸をしながらゆっくりと起き上がる。
姉「もう!姉ちゃんに迷惑かけてばっかり!」
そう言われながら朝食の目玉焼きを頬張る。弟の俺が言うのもなんだが、姉ちゃんの料理は驚くほど美味しい。学校に出る時、
姉「大丈夫?忘れ物ない?」
俺「あ、数学忘れた」
姉「はあ?もう!ちゃんとしてよ〜」
姉「どこ置いたの?」
俺「机の上だと思うけど...」
姉「分かった!じゃあすぐ取りに行くね!」
家のこともしてくれているにも関わらず、俺の世話もしてくれる姉ちゃんに感謝はしているが、口に出して言うのは恥ずかしい。
俺は、地元の公立高校に通っていて、小学校から続けているバスケ部に入っている。公立高校とは言っても県下では有名なチームであった。近いうちに最後の大会が控えているため、帰りはいつも八時過ぎになる。
俺「ただいま」
姉「おかえり!今日は裕太の好きな唐揚げばい!」
俺「まじ?らっき〜」
姉「ちゃんと手洗いうがいせんばよ!」
俺「分かったー」
そして手を洗っていると、
姉「洗濯物どこ?」
俺「エナメルに入ってるよ」
姉「じゃあご飯食べ終わったら出しといてね」
俺「りょ」
俺は、家庭では風呂掃除担当のため、帰ってきてすぐ風呂掃除をすることだけは欠かしていない。今日もいつものようにさっさと済ませ、夜ご飯を食べ始めた。その後テレビを見ていると、
姉「洗濯物出したー?」
俺「あ、まだ出してない」
姉「もう!すぐ出さんと洗わんけん!」
俺「めんど」
姉「じゃあもう洗わんけんね」
俺「あー!ごめんなさい!」
姉「ほんとに反省してる?」
俺「はい。してます。」
そう言って2人とも笑う。俺たち姉弟は、近所でも仲が良いと評判らしいが、小さい頃から2人で協力しあってきたから自然とそうなった。やがて風呂が沸いて、
姉「風呂沸いたけど、姉ちゃん先入っていい?」
俺「いいよ、俺汗かいとるし」
姉「さんきゅー」
〜30分後〜
姉「あ〜、スッキリした」
姉「次入っていいよー」
そう言った姉ちゃんは、テレビをつけっぱなしで寝ている俺に気付く。
姉「ほら!もう9時半やけんはよ風呂に入ってきんしゃい!」
俺「あ、寝とった」
そして、ゆっくりと立ち上がって俺は風呂に向かう。風呂から上がると姉ちゃんがいつも通りアイスを渡してくれる。そしてまもなく10時が過ぎ、鍵を開ける音がする。
母「ただいま〜」
酔っ払いながらそう言って帰ってきた人は母さんである。母さんは3年前に父さんと離婚したが、有名企業の上役を務めていることもあって俺達も大分裕福な暮らしができている。でも性格は結構だらしないところがある。そのため、家事は全て姉ちゃんが任せられている。
母「あ〜お腹空いた〜」
姉「炒飯作っといたよ」
母「ありがと」
無表情で話す2人。姉ちゃんと母さんはほとんど会話をしない。俺は特段そんなことは無いのだが。そして、3人の中に沈黙が続く。俺はゲーム、姉ちゃんは携帯、母さんは食事と3人とも別々のことをしているのだから無理もない。そんな沈黙を破ったのは母さんだった。
母「裕太〜最近学校どう〜?」
俺「結構楽しかばい!今日もさ〜....」
こんな感じで母さんと会話している途中、姉ちゃんが
姉「裕太、ちょっと来て」
俺「ん?どしたん?」
姉「いいから」
そう言って俺は姉ちゃんと2階に向かう。この時母さんが舌打ちをしたのが俺の耳に届いた。2階にて、
姉「裕太、母さんのこと好き?」
俺「え?好きだよ?」
姉「そっか、」
俺「なんかあったん?」
姉「いや、なんでもなかよ!母さん優しかもんね!」
そう言って再び1階に戻る時の姉ちゃんの表情は明らかに今まで見たことのないものであった。その日は、いつも部活の疲れで11時には寝る俺も姉ちゃんのことが心配で遅くまでベッドで起きていると、1階から声が聞こえてくる。因みに俺の家は、寝室は全員2階にあり、部屋は別々である。と言っても母さんはほとんど1階のソファーで寝ることが多い。朝も早いのに。
姉「前から母さんは全部家のこと任せっきりで私の自由は何もないじゃん!」
母「は?誰のおかげで飯食えてると思ってるのよ!」
と言った感じの言い争いをしている。これは遅くまで起きるようになって初めて気づいたことであるが、ほとんど毎日このような喧嘩をしていた。そして、俺は前より姉ちゃんの手伝いを積極的にするようになった。部活を休んで手伝おうかとも思ったが、姉ちゃんに猛反対されたため、できる限りのことだけであるが。そして俺の最後の大会の日がやってきた。姉ちゃんは、これまで全ての大会でどんな予定があっても全試合見に来てくれていた。今大会も、1、2、3回戦と見に来てくれたが、準々決勝の時、ギャラリーに姿が見えなかった。そのことから、俺は試合に集中出来ず、ミスを連発した。何とか試合には勝ったが、監督にはこっぴどく叱られた。準決勝は一週間後である。その後のミーティングもやはり姉ちゃんは姿を見せず、いつも大会の後は、姉ちゃんの車で家まで送ってもらう俺も、気をつかって歩いて帰った。20分ほど歩き、家の前まで着くと、姉ちゃんが玄関前に立っていた。
俺「姉ちゃん!どうしたと?!」
姉「ごめんね、試合見に行けなくて」
俺「そんなことより、姉ちゃんなんかあったやろ?!」
ほとんど確信を持った感じで俺は姉ちゃんに聞いた。すると、姉ちゃんから、この家を出ていくことを告げられた。
姉「母さんと仲良くね...」
泣きながらそう言い、姉ちゃんはまとめられた荷物を持って去っていった。その時の姉ちゃんの表情は、あの時2階で母さんのことを聞かれた時の表情と同じだった。確かに姉ちゃんはバイトもしており、小さい頃から物欲がなかったこともあって、親戚からのお年玉その他の貯金は多くあり、しばらくは暮らしていけそうであった。とは言っても姉ちゃんがなぜ出ていかなければならないのか。今、何が起きているのかわからず、俺は姉ちゃんを呼び戻すこともなく呆然と立ち尽くすことしかできなかった。その夜はものすごく心配したが、試合の疲れもあり、途中でいつの間にか寝てしまった。次の日は、学校だった。そして朝が来て、時計を見ると8時半。学校に着かなければならない時間は8時15分であった。俺は慌てて飛び起き、
俺「姉ちゃん!なんで起こしてくれんかったと!」
そう言いながら1階に駆け下りると、シーンとしてるリビングを見て昨日の出来事を思い出す。
俺「そっか、」
俺はそう1人で呟き、急いで朝食を用意する。食えたものではなかったが、無理やり食べ、アイロンのかかっていないしわくちゃな制服に着替える。学校では叱られそうになったが、昨日が大会で、そして今まで一度も遅刻をしたことがないということもあって、注意程度で済んだ。その日は流石に部活も休みだったため、5時半には家に着いた。風呂掃除だけはいつもやっていたため、あまり苦労はしなかったが、夜飯はインスタントラーメンで済ますしかなく、洗濯機の回し方やアイロンのかけ方もよく分からなかった。アイロンをかけている途中で大の字に寝っ転がり、
俺「姉ちゃんがいないと何も出来ないな」
そう呟くと、母さんが帰ってきて、
母「飯は?」
俺「え、何も無いけど...」
母「は?使えんな」
そう言ってキレられた。そう、次は仕事のストレスによる怒りの矛先が俺に向けられていたのだ。そしてそれから毎日理不尽に怒られるようになった。俺はイライラするというより、「なんで俺?」という疑問の方が強かった。しかし、そうして日々を過ごしていくうちに、姉ちゃんの今までの苦労を母さんとのいざこざも含めて初めて気づくこととなる。そして、俺は姉ちゃんに試合を見に来てもらう決心をする。この決心がついた時、準決勝は翌日に迫っていた。とりあえずその日は明日に備えて早めに就寝した。次の日の朝、慣れたように目覚ましを止めて起きる。朝食も、姉ちゃんのものには程遠いが、前よりは結構マシになった。しかし、ここで俺は重大なことに気付く。姉ちゃんの住所がわからない。姉ちゃんの携帯番号も分からないため、どうしようか悩みに悩んだ。余裕を持って起きたため、まだ時間に少しは余裕があるが、もたもたしていると遅れることも十分に有り得る。その時、台所にある一枚のメモを見つける。そこには、母さんの筆跡で、
香織 住所ーーーーーーー
と書かれていた。母さんも姉ちゃんのことが心配だったのだ。そう思った瞬間
俺「母さん、サンキュ!」
と無意識に小声で呟いていた。俺はメモの通りの住所に向かった。今、姉ちゃんのところに行けば確実に間に合わない。しかし俺には迷いはなかった。試合開始までには間に合えばいいと、そう思って俺は全速力で走った。姉ちゃんの住むアパートに着き、部屋を探す。
俺「えーっと、213は...あった!」
恐る恐る呼び鈴を押す。
姉「どなたですか?」
一週間ぶりの姉ちゃんの声だ。
俺「姉ちゃん!聞こえる?裕太だよ!」
姉「えっ!...」
すぐにドアが開かれる。
姉「裕太!あんた試合はどうしたの?!今日でしょ?!」
俺「うん!そうだよ!でも最後の大会は絶対お姉ちゃんに見て欲しくて!」
そう言うと、涙目になりながらも姉ちゃんは笑顔を見せた。
姉「うん!じゃあ急いでいこう!送っていくけんね!」
俺「ありがと!」
そう言って姉ちゃんの車で試合会場に向かう。姉ちゃんの家は、予想以上に遠かったため、思ったより時間がかかってしまった。会場に着いた時には、1クォーターが終わりがけであり6点差で負けていた。
※バスケの試合はクォーターというもので4つに区切られている。
姉「ほら!いってきんしゃい!思いっきり楽しんでこんばよ!」
そして姉ちゃんは俺に向かってピースした。そして、チームメイトの元へ向かい、監督には誠意を持って謝った。監督は、姉ちゃんと目が合ったらしく、そこで姉ちゃんが頷いたのを見て、何かを察したようだった。
監「よっしゃ!2クォーター目からガンガン行くぞ!アップしとけよ!」
俺は元気よく返事をしてベンチ裏でアップを始めた。その試合は、3年間で一番楽しい試合だった。結果は4点差で惜敗してしまったが、今までで一番いい笑顔ができたような気がした。ギャラリーの姉ちゃんにガッツポーズを見せると、姉ちゃんは涙を拭いながら手を振っていた。試合の後、最後のミーティングが行われた。終わった後、姉ちゃんを見ると、今までの感謝の気持ちが溢れだしてきて、俺は姉ちゃんに、
俺「ありがとう」
とだけ言って姉ちゃんも俺も泣いた。その時、会場から出て行く1台の車を見つけた。それは母さんの車だった。今日は仕事だったにもかかわらず、試合を見に来てくれていたのだ。その時は姉ちゃんに何も言わなかったが。そして、姉ちゃんのアパートに戻ってから、
俺「姉ちゃん、もう1度三人で一緒に暮らそう」
姉「私は母さんに追い出されたし、今更平気な顔では帰れないわ」
俺「大丈夫ばい!母さんは姉ちゃんのこと心配しよるけん!」
姉「なんでそがんこと分かると?」
俺「実はね、なんで俺が姉ちゃんの住所分かったかっていったら、母さんが姉ちゃんの住所調べとってくれたからなんよ」
俺「でね、会場では言わなかったけど、母さん試合も見に来てくれてたよ!」
俺がそう笑顔でいうと、姉ちゃんは力強く立ち上がり、
姉「帰ろうか!裕太!」
と言われ、俺も大きく頷いて家に向かった。家に着くと、鍵が開いていたが、家の中は真っ暗だった。今日は母さんは仕事を休んだから家にいるはずだ。おかしいなと思っていると、リビングから声が聞こえる。リビングに向かい、電気をつけると、母さんが机に顔を伏せて泣いていた。そこへ姉ちゃんが、
姉「母さん頑張って働いてくれとるし、私たちのことも心配してくれとったんにきつく言ってごめんね」
母「母さんこそごめんね。娘のアンタにまで迷惑かけて母親失格ね...」
そう泣きながら母さんが言ったので
俺・姉「そんなことない!」
とほとんど同時に俺たちは言った。
俺「母さん試合見に来てくれとったの知っとったし、住所のメモもあんなところに置いとったらバレバレばい!」
と、少し得意げに俺は言った。そしたら母さんもやっと笑顔になって目を赤くしたまま「ありがとう」と言った。
それから母さんは仕事を辞めて、家族との時間を何より大切にしてくれるようになった。今は、それほど大きくない会社で働いており、他の収入といえば、姉ちゃんのバイト代くらいしかなかったため、引越しをして、前より家も大きくなくなった。だけど今ほど充実しているのは3人とも初めてであった。そこには、3人が食卓を囲んで幸せそうに笑っている光景が当たり前のように広がっていた。
それから数年経ち、俺は大学を卒業して一般企業に就職することになった。姉ちゃんも介護士という夢を叶えて結婚もしており、1年前子供もでき、家を離れた今も充実した日々を送っている。俺も就職とともに家を離れることになった。母さんも1人になってしまうわけだ。そして別れの日、母さんと名残惜しそうに何時間も会話して、最後は泣きそうになったが、あの日以来、家族のモットーは、いつでも笑顔で明るくであったため、2人とも笑顔で別れを告げた。家を出た後は、引越し先より先に姉ちゃんの家に向かった。姉ちゃんの家に着いた時、あの試合の日のことが思い出され、懐かしく思った。あの時とはほとんど状況は違うが、あの時のような感情で呼び鈴を押した。姉ちゃんが玄関のドアを開ける。
姉「お!裕太久しぶり!どうしたと?」
俺「実はさ、今日から俺も一人暮らしなんだよ!」
姉「うそ!裕太が...?」
俺「うん!まあ、心配しないでよ!これでも家事は少しはできるからさ!」
姉「そっか、裕太が一人暮らしか〜、時間経つのも早かね〜」
姉「上がっていく?裕太の好きなお菓子あるよ?」
俺「いや、今日は報告だけやけんよかよ!か引っ越したばっかって忙しくてさ〜」
姉「そうね、でも困った時はすぐ頼りにせんばよ!」
俺「うん!ありがと!」
そう言って別れた。あの時のように携帯電話を持っていないはずはなかったが、この報告だけは直接したかったというのは恥ずかしくて言えなかった。
俺「よっしゃ!今日から新しい旅立ちだ!」
そうして見上げた空は青く晴れ渡っていた。
〜完〜
前書きのとおり、初めて描いた小説となりますので(小説と言えるような代物ではありませんが...笑)文章の下手さ、ミス等々目立つと思いますが、最後まで読んでくださった方がいるならそれだけで光栄です。ありがとうございました!